063⚫️ベルスの困惑
バルハイン……やっと見つけた。
何をしていたのだ?
土と汗にまみれているではないか。
木の苗を植えていた?
なぜ?森を蘇らせる、だと?
いや、訳が分からん。
森など、放っておけば勝手に茂るものではないのか?
ここは森だったところをヒトが切り開いた場所?
もう一度、元に戻す、だと?
せっかく開拓したものをか?
フクロウなどがネズミを捕食するから?
ネズミはわたしも好まんが、それがどうだというのだ?
あの病の流行は、森を失ったことが原因だと!
……そう、なのか……。
里山とは、本来、人々の暮らしと森の境界に広がる、生きた環境のことだ。ヒトの暮らしが営まれる集落や農地と、手つかずの広大な原生林との中間に位置する地域である。単なる自然ではなく適度な手入れによって維持されてきた、生活に身近な生態系を指す。
里山の重要性は、人と自然が共生する豊かな環境を育む点にある。定期的な草刈りや間伐により林内に光が差し込み、多様な動植物の命を支える。また、適切に管理された土地は水分を蓄えるため、水害や土砂崩れを防ぐ防災の機能も果たす。さらに、日本の伝統的な景観を保ち、自然と触れ合う教育の場としても欠かせない。
しかし、現代はエネルギー革命や過疎化により、手入れ不足による荒廃が深刻化している。森が荒れれば生態系が崩れ、野生動物の人里への出没も増える。里山を守ることは、単に風景を残すだけでなく、地球の生物多様性と私たちの安全な暮らしを守ることに他ならない。未来へ繋ぐべき、貴重な財産である。
ベルスは一晩、バルハインたちのテントに泊まった。
翌日、ベルスは黙って苗を手に取り、植樹の列に加わった。
それは彼にもできることであり、
彼ができる精一杯のことでもあった。




