051⚫️白昼夢
うぅん。人類の歴史は、飢餓・病・戦争の繰り返しかあ。
彼はリビングで端末を見ながら呟いた。
既に歩いての移動は困難になりつつある。
日常生活をほぼ自宅内で過ごす。
だが外出しないわけにも行かない。
食糧などの調達は、彼にかかっているのだ。
ようやく中古の車椅子を手に入れた。
やや遠方の店舗へは、古く無骨な軽自動車で出かける。
広い店内では、何とか車から積み下ろした、その車椅子が頼りだ。
もし、こんな状態で徴兵される世界線であれば、ほぼ間違いなく前線一日目で命はないだろう。そんなことはありえないが。
だが、ありえないと思っていた物資の供給は次第にやせ細っている。
不倒翁が転ぶかもしれない。
頭の上を砲弾が飛び交う。
空中から無人機が爆弾を落とす。
「よおし!優秀な特車課高齢者銀輪隊の戦友諸君!突撃するぞ!」
「ぐ、軍曹殿!銀輪隊とは自転車部隊のことではなかったのでありますかあ?!」
「じ、自分たちは皆、車椅子での招集・参戦でありますぅ!」
「これで戦場を行くのは無理でぇす!」
軍曹はニヤリと笑って言った。
「無理なものか!気力と根性を見せんか!為せば成る!成らぬは人の為さぬなり!総員、手榴弾を持って突撃!」
爆発跡のクレーターで立ち往生する’銀輪部隊’。
銃弾の雨!伏せることもできず、次々と座ったまま動かなくなる。
いや、動いている者たちがいる!
あっ、電動車椅子か!レバーを倒したまま絶命したのかあ!
白昼夢から覚めた。
自分の低脂肪乳と妻が飲む成分無調整牛乳を抱えたカゴに入れる。
ああ、恐かった。
それが彼の夢想で終わりますように。
セルフレジに向かう彼の動悸は止まらなかった。




