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業を鳴らす  作者: 希乃咲 空
1章―2008年〜―
4/22

黎明の音-1

2008年――

立花 奏介、16歳。

「カルマ」と名乗る前のお話。

 ——ドンッ!!


「オォイ、立花ァァ!!!」


 ——!?


 俺が机でウトウトしていたら、いきなり机を叩かれて、低い怒号が飛んできた。

 びっくりして顔を上げると、日本史の麻生(あそう)が俺を見下ろしていた。


「立花。寝るなら休み時間に寝ろ」

麻生は鋭い口調で言った。周りを見ると、クラスの女子が俺を見てクスクス笑っている。


「……すみません」

寝起きだったせいで、ワンテンポ遅れた。


「じゃあ立花。今、何の話してたか、言えるか」


 そう言われて、俺は黒板を見た。

 板書は汚い字がびっしりで、知らない年号と人名が並んでいる。


 ……無理だな、これ。


「……分かりません」

俺が正直に答えると、麻生は呆れた様子で溜息をついた。

「だったら寝るな。……良いか、寝たら絶対許さないからな」

それだけ言って、麻生は授業に戻った。


「資料集27ページだ。ここ、試験に出すからな」

麻生の声に釣られて、俺は27ページを開いた。そこには、仏像の写真がずらりと並んでいた。

「やっぱな、仏像だよ。仏像」


 ……そういえばこのオヤジ、仏像ヲタクなんだっけ。


 日本史が苦手な俺には、まるで頭に入ってこない。

 ページを捲っても、やはり写真の仏像は全部同じに見えた。立ってるか、座ってるか。色がどうとか。俺にはその程度の差しか分からない。

 ……仏像なんか、みんな同じだろ。


「良いかァ、半跏思惟像っていうのはな——」

麻生は生き生きと説明している。周りの連中は必死で資料集にマーカーを引いていた。


 俺も必死で資料を追うが、理解はほぼゼロだ。訳の分かんねえ漢字の羅列なんか、覚えられるかっつーの。


 隣の奴は、やけに速くペンを走らせている。

 前の奴は、ページを行ったり来たりしている。

 斜め前の奴は、麻生にバレないようにこっそり欠伸をしていた。


 ……みんな、分かってんのか?

 それとも、分かったフリしてんのか?


 ——ホントは分かってないってバレるのにビビッて、必死で誤魔化してるだけじゃねえのか?


 ……ま、日本史赤点常習犯の俺が言う事じゃねえけどよ。


 ふと、顔を上げると、また麻生と目が合った。

 別に睨まれてる訳じゃない。ただ、教室全体を見回してるだけだった。


 ……なのに、何故か居心地が悪かった。


 俺は視線を逸らして、前髪を指で軽く引っ張った。

 暗い紫。校則的には問題ないし、染めてる奴なんか他にもいっぱい居る。


 それでも、“染めてる”ってだけで教師から目を付けられやすいように感じてしまうのは何故だろう。


 別に、俺は問題児じゃない。大人しい方だし、授業を妨害する気なんか、さらさら無い。

 なのに、どこか浮いてる。どこか馴染めてない感じがする。


 ……高校っつーのは、もっと楽なとこだと思ってたんだけどな。

 ……ま、しゃーねーか。今に始まったことじゃねえし。


 授業が終わるまで、まだ時間はある。

 俺はノートの端に落書きをしながら、早く放課後になんねえかな、とだけ考えていた。

■立花 奏介

【年齢】16歳(高校2年生)

【誕生日】2/15

【好き】ギター、チータラ

【嫌い】生クリーム

【得意】現代文、音楽

【苦手】日本史、古典

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三十路の限界バンドマン・奏介の姿が、痛いほどリアルで胸に刺さります! 「俺、こんなとこで何やってんだよ」と自嘲しつつも、どうしてもギターを手放せない彼の不器用な生き様……なんだか放っておけなくて、すご…
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