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業を鳴らす  作者: 希乃咲 空
序章—2025年某日—
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此岸に咲く彼岸花一輪-2

 ——ピンポーン。


 朝、玄関のインターホンで目が覚めた。

 ……誰だよ、こんな時間に。宅配便頼んだ覚えはねえし。


 ——ピンポーン。


 ……うるせえな。こっちはさっきまで寝てたんだよ。

 ……クソ眠いし、居留守使うか。


 ——ピポピポピポピポ。


 ……うるせえ!ぶっ殺すぞ!!

 わーったよ、出りゃあ良いんだろ!?出りゃあ!……ったく、しゃーねーな。


 スマホで時間を見ると、まだ10時だった。俺はいつも、この時間は寝ている。世間様にとってはとっくに“起きてる時間”だろうが、俺は違う。


 渋々布団から出て、寝巻のまま玄関のドアを開ける。もちろん、髪は寝癖でボサボサだ。

 俺は寝起きはいつも機嫌が悪い。しかも、昨日はライブがあったから、余計に疲れてる。


 *


「げっ、大家さん!」

ドアを開けると、いつものだっせえ小豆色のエプロンが真っ先に目についた。俺より背丈は低いクセに、図太いガラガラ声で喋る婆さんだ。

「“げっ”とは失礼だねえ」

大家さんが言った。


「立花さん、家賃」

「うっ……」


 ——“家賃”。俺の嫌いな言葉TOP5に入る言葉だ。……朝っぱらから痛いとこ突きやがって。


「今月分だけじゃなくて先月分も滞納してるからね」

「すいません、ちょっと今は用意してなくて……」

「言い訳は良いから」


 ……やっぱり、この人だけには逆らえねえ。


「とりあえず、今月中。何とかして頂戴」

「……はい」


 ……反論できねえ。

 良い歳して子供みたいで、情けない。


「それと立花さん、最近夜中うるさいってクレーム来てるよ。今週だけで3件」

「……えっ」

大家さんのじっとした視線が刺さった。


 確かに俺は夜、ギターの練習をするが……それだろうか。それとも配信か?

 ……いずれにせよ、音は抑えてたつもりだったが、それでもダメだったのかよ。


「バンドマンだか何だか知らないけど、他の人に迷惑かけないでよ。ウチはボロアパートなんだからね」

「はい……すみません」

「じゃあ、また来るからね。それまでに家賃、用意しとくんだよ」

「はい」

俺が返事をすると、大家さんは帰っていった。


 俺は部屋に戻り、二度寝しようと思った。が、完全に目が覚めてしまった。

 ……ったく、朝からめんどくせーんだよ。


 ……めんどくせー人だけど。それでも、こんな俺を住まわせてくれるんだよな。何故か。


 傍から見りゃ、俺はピアスだらけで、髪は紫の“やべー奴”。部屋は荒れてるし、三十路過ぎても嫁どころか彼女すら居たことが無い。……30までナントカを貫いたら魔法使いになれるって言うけど、だったら俺はとっくに魔法使いだっつーの。

 その上俺は“絶対に付き合ってはいけない3B”のバンドマンで、稼ぎは超少ない。おまけに昼夜逆転までしてる。そしてネットでは……いや、今はやめておくか。


 俺はベランダに出て、煙草に火を点けた。こんな時間に吸うのは、久し振りだ。


「全く、何でこんな限界生活してんだか」

煙草を咥えたまま、空に語り掛けた。


 俺がこんな生活をしてる理由——それは全部、俺の“自業自得”だって、俺自身が痛いほど知ってるクセに。


「——ふうっ」

煙を吐き出すと、ふと昔の記憶が蘇った。


 ——“自業自得”。


 俺の人生は、この言葉から逃げられなかった。


 ……思えば、俺の“(カルマ)”は——17年前から始まっていたんだ。

次回より、1章に突入します!

高校生の時のお話です。

”カルマ”と名乗る前の彼を、是非ご覧ください!


※次回は2月11日に掲載する予定です。

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― 新着の感想 ―
見事なまでのワナビ生活。 でもカルマの過去も気になります。 面白かったので、ブクマさせていただきました。
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