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第二回戦 準備


 なんとか試合が始まるまでに如月の機嫌を直すことが出来たのだが、代わりに俺の精神的疲労が溜まってしまった。


 大輝と如月は最後までどっちが俺と試合に出るか口論していたようだが、如月の「あたしも六魔として、翔太くんの暴走を止める事が出来るわよ!」という頼もしい言葉に納得した大輝が引き下がったのだった。


 確かに実力でいえば、二人の差はそこまで変わらないのだから、万が一俺の『具現化(オーバーキル)』が暴走したときに如月にだって止められるだろう。


 というか、二人ともその万が一を考えすぎじゃないか?


 俺の異能が必ず暴走すると決まったわけじゃなかろうに。いや、まぁ、一度その経験があっただけに強く否定できないのも事実なんだけどね。


 今のところは、俺の目が赤く光出すといった異能が覚醒する前兆もなく、普通の状態で闘えると判断している。


「ねえ、しょ、翔太くん。あんまり心配しなくてもいいのよ。あたしが」


「心拍数が上がると覚醒しやすくなるかも、って大輝が言ってたやつか? そこまで緊張しちゃいねぇから大丈夫だって」


 もうすぐ試合が始まりそうなタイミングで如月が声をかけてきた。俺を気遣ってくれるのはありがたいのだが、どう見ても如月の方が不安そうな表情をしていた。


 如月の緊張をほぐしてやるために、少しばかり嘘をついてしまった。


 如月は俺のいつもと変わらない返事に安心したのか、小さく頷くと先に歩き出した。


 俺もその勢いに任せて立ち上がろうとしたが、どうしても左足の震えが止まらず、立ち上がることが出来なかった。


 さっきのは如月だけに嘘をついた気でいたが、無意識に自分すらも騙していたのかもしれない。


 自分を鼓舞しなければ、ここから立ち上がれなかった。


 今度は右手の震えが止まらない。闘うための拳に力を入れると、余計に力んでしまい、腕までその震えが伝わってしまう。


 しっかりしろ、なんのためにここまで訓練してきたんだ。初戦から緊張していたんじゃ、最後まで勝ち上がれないぞ。


 そう自分に言い聞かせる。


 ゆっくりと深呼吸を繰り返して、徐々に緊張を自分の体に馴染ませていく。


 これは父の教えだ。黒崎流の呼気の使い方を思い出す。


 『緊張しない人間なんていないんだ。ならばその緊張すらも自分のものにしろ』とよく試合前に父が口にしていた光景が頭に浮かんだ。


「はっ……、こんなときに親父のことかよ。笑っちまうな」


 だが、最高にありがたい。破門にされた苛立ちを感じていても、体の隅々まで染み付いた教えは消えることはない。


 呼吸が整い終わったときには、既に体の震えは消えていた。


 これなら立ち上がれる! 俺は闘える!


 気合いを入れ直すために、両手で顔を叩いた。


「よし、いくか」


 俺はギャラリーの歓声が響き渡るステージへと一歩ずつ踏みしめるように歩いていった。





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