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第二回戦 控室


 一回戦が終わったが、まだまだこれからといった雰囲気が感じられる会場を抜けて俺たちは選手控室に向かっていた。


 司会の合図で次々と二戦目、三戦目が行われていく。


 勝ち上がってくる能力者たちの異能を紹介していたので、それを聞きたかったのだが、あんまりのんびりしている時間はなかった。


 トーナメント表で次の試合を確認したところ、次の次が俺たちの出番だったのだ。俺と出る気満々の如月はともかく、大輝も俺が覚醒した異能を使うことにまだ納得していないのか、一緒についてこようとする。


 俺の異能が暴走したときのことを考えて補助に入る際に一番近くにいた方がいいという大輝の言い分もわかるのだが、約束をかたくなに守ろうとする如月も一歩も譲るつもりはないようだった。


「だから! あたしはし、翔太くんと組むって約束したの。雨坂が組みたいのはただ暴走を止めたいってだけでしょ」


「ただ、止めたい? お前も暴走した異能を見といてそんなに軽々しく考えてんのか? 万が一の場合に備えるのが六魔の正義だろうがよ」


 こうして抗争は平行線のままぶつかり合い、控室へと持ち込んでしまった。


 場所が変わったことで白熱していた議論が一度中断されてしまい、大輝がふと我に返ったような表情を見せた。


 そして唐突に大輝から思いがけない一撃が送り込まれる。


「てか、さっき如月は翔太の事を名前で呼んでたよな?お前らそんな親密な間柄だったっけか?」


 その一言は如月にとって予想外だったのか、急に顔を赤くして慌てた様子で両手を前に突き出して否定を繰り返している。


「違っ! 全然そんな親しいとかじゃないわよ!? ただパートナーとしてってだけで……」


 人差し指どうしをくっつけあって、恥ずかしさと嬉しさを混ぜ合わせた表情を見せた。


 なんだかやけに乙女みたいな反応して違和感しかないんだが。というか、そんな反応を返す理由がわからん。


 何を考えているんだぁという視線を如月に送り続けていると、俺の視線に気づいたのか、顔をこちらに向けそのまま数秒フリーズした。『凍結ミューデル』だけに固まるってな。


 なんて冗談を言わないと、俺もその場を乗り切れないくらいに狼狽してしまった。目が合っただけだというのに、今までにないくらいに如月のことを意識してしまった。


 こいつ案外かわいいんだな、と思うくらいには俺の脳もフリーズしていたのだろうか。一瞬見て可憐さを感じたまま思考が停止するなんて、今までそんなことはなかったのにな。


 そんな俺たちの普段とは違う反応を見て、大輝もさすがに不審に思ったのか、


「まさか……、お前ら付き合ってたりしない、よな?」


「ばっ、バッカじゃねぇの!? お、そ、そんな勝手な妄想されると迷惑だぞ?」


 今度は俺へと疑惑の目が向けられる。


 今までまともな女子との経験がなかったために、慌てて否定を繰り返すというみっともない痴態をさらしてしまった。こんな言い訳が大輝に通用するとは……。


「だよな。よかったぜ、まさかお前らが隠れて付き合ってるとかはないよな」


 なんかあっさり信用されてしまった……。両腕を組んでうんうんと納得したように頷いている逆にコイツ大丈夫か?とこっちが心配になるくらい秒で返答されたんだが。


 まあ大輝はスルーしておくとして、問題はもっと変な反応をしている如月だ。


 俺の台詞セリフを聞いて、真一文字に結ばれた口のまま俺の方をハイライトの消えた瞳で見ているのだ。いや、怖すぎだろ。今の会話のどこにそんな表情をするきっかけがあったっていうんだよ。


「あ、あの、如月さん? だいじょう……ぶっ!?」


 反応を窺おうと少し声をかけてみる。


「……ッ! すん」


 え、こわい!今物凄い勢いで睨まれたんだけど!


「く・ろ・さ・き・さんは私とは仲良くないと言いたいんですね、はー、そうですか、はー」


 なぜか俺の名前の呼び方がおかしかった。具体的に言うならば、イントネーションとアクセントの位置が普通ではなかった。まるでわざと一字一字区切って呼んでいるかのような……。


 そして俺はここでようやく気付いた。如月が何を求めていたのかを。


 だが、俺は鈍感主人公のように聞こえないふりをしたり、 逆に気付いてラブコメ路線を走っていったりする勇気もない。まあ?如月の方から告白してくるなら、それはもう付き合ったりする可能性もあるわけですけどね!

 

 モテない男子はいつだって女子からの告白を待っているわけですよ。自分からする勇気がないからね!


 そんなんだからモテないんだよ、と逆に思った方はお帰りくださいね!


 そんな中途半端にクズな考えを巡らして、俺は如月に話しかけた。


「まあなんだ、その、俺からは如月と仲良くしたいと思ってるぞ……。いや、思ってます。いえ、ほんとですよ?だから機嫌直してくださいよ、沙綾さーん……」


 ただひたすら謝ることしかできないんですよね……。


 ただ怒られた理由が名前の呼び方であるとわかったことは、心の中に秘めておこう。






如月ちゃんのヒロイン化が止まらない……。

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