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待ちに待った決闘祭


  双方決闘祭が開催された。多くの異能者たちで賑わう中で花火が打ち上げられた。五、六発ほどの小さな花火だったので、おそらく異能で生み出したものだろう。


 続いて聞こえてきたのは、学園全体に響き渡るほどの大きな声だった。


「今から双方決闘祭を開催しまーすっ!!」


 声を拡張させる能力でも使っているのだろう。その異能者のすぐそばには、実行委員の腕章を巻いている生徒たちがあちらこちらへ忙しそうに走りまわっている。誘導係ということだろうか。


 なにせこの決闘祭においては一般人の入場を許可しているからな。基本的には異能者以外の立ち入りを禁じているのだが、どこかの親バカが子供に会わせろとかなんとかで騒ぎを起こしたらしく、結果としてこの学園祭の時だけは一般公開にしているらしい。


 まあだから、俺の親父も来るってわけだ……。


 本当なんで来るんだよ。俺の生活ぶりを確認するとか、何の関係があるんだよ。大会で優勝したら破門を取り消すっていうのはわかるけどな。


 明日香がスパイしているのはもうわかってるから、そこの対策は大丈夫だろう。あとは親父がいつ俺と対面するかが問題になってくるな……。


 そういえば、肝心の決闘のトーナメントはどうなってんだ?どっかに掲示でもしてるのか?


 とりあえず競技場へ行けばわかるだろうと思い、その方へ足を進める。


 それにしても普段見ない情報科のやつらがいっぱいいてうまく歩くことができない。どうやら情報科の生徒たちはこの学園祭では普通に観客として楽しむつもりらしい。通り過ぎていったカップルがそんなことを話しているのが聞こえた。


 くそ、俺たちは見世物かよ。なんだか嫌な気分だ。誰かを楽しませるために大会に参加したわけじゃないってのに。


 そんなことを思った時、俺のデバイスが振動した。誰かからのメールだろうか。


 開いてみると、二件のメールが届いていた。一つは大輝からのもの。もう一つは差出人不明だった。


「なんだこの文章……?」


―――最強の異能を有する者、罪を背負う者には裁きを与えんとする。今こそ位階は崩壊の一途を辿る。―――


 不明なのは差出人だけではなく、内容もだった。最強の異能って、『具現化オーバーキル』のことを指すのか?罪を背負う者ってなんなんだ?全体的にわかりそうでわからない文章だ。


 「で、大輝の方は……」


―――六魔のほうで会議があるからすぐ来てくれ。『幽霊の心臓(ゴースト・ハート)』の件で進展があったらしい。場所は前に集まった会議室だ。―――


 お、どうやら裏の方でも動き出しているようだな。せっかくだし、このメールもなにか関係あるかもしれないから伝えに行くか。


 デバイスを閉じた俺は速足で会議室へと向かうのだった。


            * *


「げっ」


「なによ、げっ、て。それよりあたしとの決闘忘れてないわよね?」


 会議室に向かう途中でばったり人に出会ってしまった。会話から察するに例のあの人である。え、誰かって?あの人だよ……、えーと、師走さんだっけか。


「………」


「な、なんだよ……」


 なぜか師走さんはじっと俺の顔を見つめてくる。どこか睨み付けるかのような感じで、怒っている表情にも思える。いや、なんか怒らせるようなことしたかよ……。


「あんた、私の名前忘れたりしてないわよね?今頭の中で、こいつ誰だっけなとか考えてないわよね?」


 コ、コイツ、俺の心を読む異能でも習得したのか。ドンピシャで怖すぎる。


「あ、当たり前だろ。覚えてるよ、えっと」


「今、えっとって言ったぁ!」


 やばい、これは信頼関係に関わることだぞ……。書類上では大輝と組むことにはなっているが、やっぱり如月と組まなければならないだろうし……。試合が始まる前から相方の名前もわからないなんて、あきれられるどころの話じゃないぞ……。


「そ、い、……つ、き、如月!如月だぁ!!」


 これぞ、名推理!完全なる探偵の勝利だぜ!


「なにそのポーズ……」


 足をクロスさせて左手を腰に当て、右手で顔を隠している俺を見て、げっそりした表情をする如月。


 いや、そこまで嫌悪感を感じるほどかよ。なんかちょっと申し訳なってくるな。


「じゃあ、もちろん私の下の名前も覚えているわよね?」


 な、なにぃ!?下の名前だと……!


 まさかこんなところで女子を下の名前で呼ぶイベントが発生するなんて……。いや、そうじゃなくて。肝心の如月の名前を覚えていないのがまずいだろ。


 これはさすがに当てずっぽうで正解するわけないだろう。ヒ、ヒントとかもらえないかな?


「あのー如月さん?僕らまだ知り合って間もないんだし、そんな深い関係は少し早いんじゃな――」


「『凍結ミューデル』発動。氷魔一刀を構築……」


 おいおいおい、こいつ能力発動してんぞ!言わなきゃ殺されるじゃんかよ!?


「いやいや、待て待て待ってください沙綾(さあや)さんお願いだから早まらないで!」


 必死で命乞いした俺の誠意が届いたのか、振り下ろそうとしていた氷の刀を分解させてぼーっとした表情で俺の方を見つめている。あれ、能力も解いたのか……?


「あ、あんた本当に覚えてたの……?」


「え、何が?」


「だからあたしの…………な、なんでもない!」


 今度はなぜか顔を赤らめてそっぽを向いてしまう。


 なんだよ、情緒不安定なのか。大丈夫か?試合前だってのにこんな調子だとダメなんじゃないか……?


「なあ、如月。早く会議室に行こうぜ」


「……ふん」


 ええー、また今度は機嫌が悪くなるのかよ。いったい何がトリガーで……。


 そこまで考えた俺ははたと思いついたことを実践してみた。


「沙綾、早く会議室行こうぜ。六魔のみんなもいるんじゃないか?」


「……うん!」


 おぉう、まじか。今度は満面の笑みで返されたんだが。


 もしかして本当に()()()()()()()ことで、如月の機嫌がよくなっているのか?思い上がりのような気もするが、ここまで二重人格みたいな反応をされるとそう思わずにはいられない。


 これからの決闘のことも考えると、下の名前で呼んでいくスタイルの方がいいのだろうか。


 新しい関係に変わっていくことに悩みながら、俺は重たい会議室の扉を開けたのだった。






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