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決闘祭前日


 俺の能力が暴走してから一週間が過ぎた。その間は大会へ向けて大輝とのコンビネーションを深めるために、生徒会のコネを使っていろんなタイプのやつらと模擬戦をすることができた。


 『摩擦フリクション』、『音波スカルウィープ』、『濃霧ザ・ミスト』、『鉄鋼エンストール』。本当にいろんな異能と闘った。特に単純な能力を持つ奴らは自分の能力を正確に把握しているだけあって使い方に一癖も二癖もあった。


 能力は強いが、行程が複雑である俺の『具現化オーバーキル』は使いこなすのが本当に難しい。一つの強力な武器を生成することに集中していると、その間にどんどん攻撃を受けてしまう。問題は俺の耐久力にも思えるが、やはり実戦でやってみると、その場その場でどれだけ瞬時に反応できるかという対応力が求められることが分かった。


 本当に大輝の顔が広くてよかったかもしれない。


 大会前にこんだけ模擬戦をやっていなければ、本番まですっと自分の能力『具現化オーバーキル』のことだけを考えていたかもしれない。


 敵を知り己を知れば百戦危うからず、とはまさにこのことだな。


 そうして模擬戦を繰り返す日々が過ぎていった。


 それにしても大輝の怪我はいつのまにか治っていた。あいつは回復力に優れているなんて笑ってごまかしていたが、裏で和葉さんに聞いたところ、どうやら治癒系の能力者に治療をしてもらっていたらしい。


 そりゃそうだよな。全治一か月とか聞いていたのに、たった二日で全回復なんておかしいだろ。


 まぁあいつも決闘祭に参加したかったのか、休んではいられないんだろう。


 連戦から休憩していた俺と大輝はゆったりと休んでいたのだが、先ほど仁がやってきて急な会議があるとかでどこかへ行ってしまった。


 一人残された俺はこうして他の奴らの戦闘を観察しているってわけだ。


 俺が手に持っていたペットボトルの飲料に口をつけようとした時だった。ズボンに入っている携帯機器がブーっと音を立てて震え出す。これで十三回目だ。


 相手は見なくてもわかる。迷惑メールの送り主なんてわざわざ口にすることも必要ない。というか言いたくない……。いやまあ無視していたらそれはそれで後が怖いんだけどな。


 俺はため息をつきながらデバイスのメールフォルダを開いた。


 画面はどっかの生徒会副会長の名前で埋め尽くされている。どのメールも似たような文面だった。


 どうやら生徒会の仕事でバタバタしている和葉さんは俺を巻き込ませたいらしい。近日に迫った決闘祭の会場設営の準備とかで人手が足りないとかなんとか。そんなもん、俺じゃなくて親衛隊のやつらにでも頼めばいいのに。まったくめんどくさいという理由で断るのも面倒だな……。


 一つ一つ開いていくのも億劫になってまとめて消去してしまおうかと思ったが、その迷惑メールの中で一つだけ気になったメールがあった。タイトルは『申請書』という簡潔な言葉。


 ん、これって……。


 急いで開いてみると俺が思った通りの内容だった。前に大輝が急遽俺とのチームを変更したいということで、和葉さんが生徒会に申請していた奴のことだ。


「おお、通ったのか!よかったじゃん。……ってなんだ?添付ファイルが……」


 メールに付随されていたのは一枚の写真だった。それもみてはいけない類の写真だった。


 そこに映っていたのは、恐怖で顔が引きつった役員が書類にハンコを押す姿と、ブイサインで満面の笑みを浮かべた和葉さんだった。


 いや、これは……。どうみてもやっただろ、これ。とうとうあの人やらかしちゃったよ。というか隅に置いてある日本刀らしきものに赤い何かがついているように見えるのは気のせいだろうか……。いやもう怖すぎるよ……。


 背中に冷や汗をかいた俺は、とりあえず写真の話題には触れずにありがとうとだけ返信を送ったのだった。


              * *


 休憩を終えた俺は再び闘技場へ戻ることにした。そこで待っていたのはあまり出会いたくない奴だった。そう、もともと決闘祭において俺とチームを組んでいた奴、師走さんである。いや、違った如月さんだってけか。


「ちょっとアンタ、雨坂から聞いたわよ!私とのチームをやめるなんてどういうことよ!?」


 前のめりになって俺に突っ込んでくる。というか俺を見つけるなりすぐに飛んできたということは、もしかしたら闘技場でずっと探していたのか?


「いや、その件に関しては悪いと思ってるけどよ、大輝がどうしてもっていうから……ってか、お前にも了承を得たってあいつ言ってたぞ?」


「さっき聞いたのよ!和葉さんにも申請書通してもらったとかなんとか!全部事後報告じゃないのよ!?」


 大輝(あいつ)、全然言ってること違うじゃないか。如月を説得できたというから俺も賛同したのに、これではただ俺が如月との約束を破っただけになってしまう。


 「いい?大会はちゃんと私と出るのよ。そうじゃなかったら絶対に報復するからね!」


 六魔の会議に行って雨坂を問い詰めてくるわ、そう言って如月は速足で立ち去って行った。


 いや、まじかよ……。報復するって言った時の顔がやばすぎた。あれはガチな奴だぞ……。


 「どうすんだよ……」


 明日は待ちに待った決闘祭だってのに、こんな前日に精神的に追い詰められるのはたまったもんじゃない。



 

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