異能の代償
目が覚めた時は見知らぬ天井があった。大輝たちと戦闘していたはずの俺はなぜか保健室のベットの上で寝ていたようだ。っていうか、なんかこれ既視感があるな……。
「痛って……、なんでこんなに体中が……、てかなんも思い出せねぇ……」
起き上がろうとしたが体中に激痛が走ったせいで、うまく起き上がることもできなかった。
覚醒した異能を使った後の記憶がまるで思い出せない。何があったっていうんだ。それともこれが大輝の言っていた代償ってやつなのか……? ま、まぁ、激痛位なら我慢すれば大会でも使えるだろ。そのあとが苦しくなるってだけだしな。
「……すぅ、…………ぅ、すぅ………」
ん? 隣から寝息が聞こえるな。誰か寝てんのか? あんまり動くと起こしてしまうかもな、ってか俺自身も痛みで動けないんだけどな。
でもなぜだろうな。保健室で寝てるときに隣がいたら無性に気になるってもんが人間の性だろ? いたずらするわけじゃないけど、こっそり見るくらいならバレないだろ……。
そう考えた俺はこっそりとカーテンの隙間から隣のベットで安らかに眠る主を確認しようと顔を出した。
が、そこには可憐な美少女がいるわけでもなく、いたのは普通の男子生徒だった。ってかなんかひどい怪我してるな……。なんかこれは悪いことをしてしまったな。
「って、大輝じゃねぇか」
顔を確認して誰かが分かってしまった。さっきまで訓練場で俺と闘っていた奴がなんでここにいるんだ。まさか組み合わせで不満を感じていた和葉さんが俺と大輝に記憶がなくなるほどの攻撃をしたっていうのか? それで大輝は保健室送りになって、俺も記憶をなくしているのか?
ま、まさか、な……。そんなことがある……。
「わけぇ!!?」
「あら、起きたのね翔くん。もう二度と起きないんじゃないかと……」
開いていたカーテンを閉じようとしたところに急に声をかけられて思わず大声をあげてしまった。
大輝が眠っているベットの傍に置かれているパイプ椅子には和葉さんが腰かけていた。俺の顔を見てなぜかほっと安心したようなため息をついた。
いや、二度と起きないってそんなにやばい攻撃をしたっていうのか? こ、怖すぎる……。やっぱ和葉さんを怒らせてはいけないな……。
「……ん、ふぁあ。……お、翔太起きてたのか」
ちょうどいいタイミングで大輝が起き上がった。大輝も攻撃を受けて記憶を失っているのであれば、やはりこいつにも和葉さんの恐ろしさを教えるべきか……?
でも目の前に本人がいるのはちょっとな……。俺が腕を組んで考えていた時だった。
「ねぇ聞いて翔くん。大切な話があるの」
いつになく真剣な表情をした和葉さんが俺に話しかけてきた。これから俺と大会に参加しろとでも言うのか? やっぱり脅迫されてしまうのか? でも俺には如月と組むっていう約束が……。
「実は……」
「いや、俺がいうよ副会長」
和葉さんが何かを言いかけたところで、大輝はそれを手で遮った。あれ、和葉さんが暴走した感じじゃないのか? 大輝が話すということはまた別の案件なのか?
「よく聞けよ翔太。覚醒した『具現化』の代償の話だ。それは────」
俺はさっきまでくだらない内容を考えていたことを後悔した。
そして大輝から模擬戦で起きた事の顛末をすべて聞き終えた俺はしばらく言葉が出てこなかった。




