正しい決断
「あんた真面目にやってるの?」
「……ま、マジです」
十分間という縛りで決闘を行っていた俺たちだったが、三回目が終わった時点で誰かさんがギブアップを宣言したために休憩をはさむことになった。あ、誰かさんとはもちろん俺のことです。
「まあ、一人だけ異能を使わずにあんだけ動いてたら疲れるわな」
上からのぞき込んできた大輝が俺のことをフォローしてくれる。
「しかもこいつの異能は使っている間も体力消耗するから不利なんだよなぁ。ほんと使えない異能だよな。如月、お前本戦で苦労すると思うぞ?」
「そうねえ。アタシも闘う前から嫌になってきたわ……」
あげた後に落とすのは二人の仲では鉄板なのだろうか。つーかこの『具現化』を選んだの大輝自身なんだぞ!忘れてるなら前章読み返してこいや!お前がしょうもない理由で選んだこと俺はぜってえ忘れねえからな。
てか、今はそんなことはどうでもいいか。この異能にケチをつけても問題が解決するわけじゃないしな。
「翔くんは頑張ってたと思うけどなあ。まさか私の『斬撃』が避けられるとは思ってなかったもの」
「それは確かに私も驚いたわ……」
それは俺の異能の力ではないんだよなあ。
子供の時からずっと和葉と稽古したから自然と刀の道筋からどこに斬撃が飛んでくるか予測ができただけなんだよな。まあぶっちゃけ相当難しいらしいんだが、俺には素養があったのか、一か月和葉が振っている剣と対峙していたことで自然と身についてしまった。
剣筋が読めればあとは簡単な話だ。ようはそこに飛んでくる斬撃に当たらないように、かわすだけ。そういうわけでいろんなところに飛び跳ねていた俺はものの三十分足らずで体力を使い果たしたわけだ。俺、体力なさすぎだろ。ちょっと自分でも笑ってしまったわ。
「これは体力作りから始めないといけないのか……」
大輝が頭を抱えて呟いた。
「せっかく生成した剣ももったいなかったわよねぇ。全然牽制にもなってなかったし。駄目駄目ね」
珍しく和葉さんも毒舌である。え、そんなに駄目だったのか?自分では割と使えてたと思ってたんだが。そりゃ和葉さんは剣道やってたから、初心者の俺なんて屁でもないだろうけどさ……。
「そうね、アタシと前に闘ったときはうまく異能も使いこなせていたのに、今回はまともに使っていないものね」
「だからそれは何度も言ったが、オルガに半分持ってかれたって説明したろ?半分しか異能が残ってないんだから、効力も半分なのは当然だろ?」
「それが甘えって言ってるのよ!」
えぇ……。なんか怒られてしまったんですけど。え、俺が悪いの?半分しかないんだから仕方ないよね?って言っただけなんだけど……。
理不尽な言葉に俺が心の中で文句を言っていると、和葉さんが俺の頭をなでながら諭すように言った。
「最初から異能が半分だってあきらめた状態で闘っても意味がないって如月さんは言ってるのよ。わかる?俺は負けても仕方ない条件で闘っているんだなんて思ってない?だって異能が半分しかないんだから。武術があっても異能者たちに勝てるはずがないんだ。なんて考えてない?」
「……う」
思っていたことをまるまる和葉さんに言い当てられて委縮してしまう。
「それがだめよって言っているの。別に半分しか異能が使えないことを責めているわけではないの。だってそれが今の現状で、事実でしょ?それはもう変わらないの。だったら何を変えればいいのか。翔くんの気持ちよ。態度、やる気、志よ。俺は不利でも勝てるんだ!って今まで考えてこなかったの?武術を封印されたときにはそうは思わなかったの?」
まさに正論だった。
まったく反論することができない。
確かに心の中ですでにあきらめたように思う。異能が半分の状態で当てるはずがないと。そもそも異能を取り返すためにこの決闘祭の望んだはずだったのに、前提が間違っているなんて思ってしまっていた。
そうだ。武術を封印されたときにも同じことを考えていた。
自分の特技が無くなって、もう俺は終わりだなんて思ってしまっていたが、それでも慣れない異能でどうにかしてやろうと意気込んでいたはずじゃないか!あの時は絶対にあきらめていなかったはずだ。
似たような条件下でどうして今はあきらめているのだろうか。
おかしいじゃないか。間違っているじゃないか。
なんで俺があきらめなければならないんだ。
こんな理不尽をぶちのめすために闘うって決めたんじゃなかったのかよ!
そんな言葉を過去の自分に言いたい気持ちになった。
和葉さんの言葉を、気持ちを全身に受けて立ち上がる。
そしてみんなの目を見つめ返す。ゆっくりと、確かに、強く。
「お前、その目……」
目が合った大輝が驚いた声を上げた。
「……え?」
言われて初めて、自分の目になにか今までに感じたことのない感覚が宿っていることに気づいたのだった。
最近投稿できてなくてすいません。週末にまとめたいと思います。




