最悪のシナリオ
落ち着きを取り戻したのか、五十嵐は押しを組み直して問いかけた。
「提案ってのはなんだ?詳しく話せ」
それに答えるようにG1は口を開く。
「僕ら『幽霊の心臓』と君たち『断罪派』で手を組もうという………」
「ああん!?手を組むだぁ?ざけてんのかおい!」
G1が言い終わらないうちに五十嵐は噛み付いた。それを見てG1は慌てた様子で取り繕う。
「待って!最後まで聞いてよ。目的はさっき話した六魔にあるんだ」
「あ………?」
「頭領、少し落ち着いてください」
六魔、という単語を聞いてか、側に居た葉隠の言葉を聞いてか、素直に五十嵐はG1の言葉を待った。
「えっと……。次の双方決闘祭で六魔を全部崩すつもりなんだ」
「待て。なぜ太陽祭じゃねえ?」
「太陽祭だと六魔が入れ替わってしまう可能性がある。僕が消したいのは今の六魔なんだ」
「………」
五十嵐は口に手を当てて考え始めた。
「なにより序列一位が帰ってくるからね」
「………!?」
五十嵐はその言葉に強く反応した。そして、
「おい、その情報はどこから仕入れた?」
「G3からだよ。G3には六魔に潜入して貰っているからね」
G1はそう言って横目でG3の方を見た。
「ふん……お前のためじゃない。俺がやりたいようにやっただけだ」
G3はさも不機嫌そうに言った。
この流れなら五十嵐がG3にキレそうなものだったが、五十嵐は
「おい!聞いたかヒキ!序列一位を潰せるならやりがいがあんぞ!」
そう言って、さっきからずっと自分の隣に座っていた男に話しかけた。しかしこの状況においてその男は寝ていたらしい。
「………んぁ、そう、ですね……」
とだけ口を開くと、再び同じ姿勢へと戻った。やがて寝息が聞こえてくる。
「それじゃあこの提案は乗ってくれるのかな?」
「ああ、任せろよ。ウチはそういうもんの専門だ。ただ」
五十嵐はそこで言葉を切った。そしてゆっくりと手袋を外していく。つけていた髑髏の指輪は当然床に落ちてカランと音を立てた。
「裏切ったらどうなるかわかってんだろうなあぁ!?」
五十嵐はその手袋を外した方の手を机にたたきつけた。
すると途端に机は触れたところから徐々に風化していき、次第に崩れおちてそれは残骸と化した。
「おお、怖い」
G1はまるでおどけるかのように肩をすくめた。
それじゃあ、と言って立ち上がる。振り返って、
「約束は守るよ僕はね。G2、五十嵐くんを『座標』に指定しておいてくれ」
「………はい」
「おい、俺たちぁ防衛隊から逃げるてるからここにいるとは限らねぇぞ」
「その心配は要らないよ。僕らはこれでいつでも君のところに来れる」
「………あ?」
そう言い残すと、彼ら『幽霊の心臓』はその場から忽然と消えた。




