仏の顔もサンドバッグ
「えっと、彼はだな………」
リーダーは困ったようにポリポリと頬を掻く。
「和葉様の御名前から外れたんだよ!」
なんでお前はキレてるんだ。
「つまり、忍野殿は四番手にして、親衛隊のおまけみたいなものでござる」
おまえら辛辣だな……もっと仲良くしてやれよ。
「いえ、いいんです。僕の名前が悪いんです」
お前はお前で自虐癖でもあんのかっ!?
というか誰がだれだかわからなくなってきたので、あだ名をつけて整理しよう。ということで、
リーダー格のがたいのいい男→リーダー
二番手の小太りキレ男→ブタ丸
長身で黒縁メガネの男→メガネくん
体育座りで陰にいる男→忍野くん
あかん……。押野くんだけあだ名になってなかった。まあいっか。
「んん!……話を戻そう黒崎翔太。君がどうしてここにいるか、だったな」
「君の罪は和葉様に近づいたことだよ!」
それはもう聞いたって。
「近づいたどころかおデートされていたでござるぅぅ!我らは挨拶のお声すら聞かせてもらえないのにござるのにぃぃ~!!」
うん。もうメガネくんはなに言ってるかわからないな。
というか和葉さんが挨拶すらしないって事は、こいつら相当嫌われてるだろ……。和葉さんは一般生徒にはめっちゃ優しいんだぞ?
「たぶん僕のことも見えてないんです……。自分陰ですから」
そう言ってブツブツと一人沈んだように喋り続ける押野くん。
このままいくと三人+一人の無限ループに入りそうな気がする。もう永遠に抜け出せないやつだわこれ。
俺がそうなことを思っていたときだった。
「黒崎翔太!君の罪は和葉様とデートしたことにあるんだ!いいか?それも連れに別の女性がいるにも関わらずだ!こんな狼藉許されると思うなよ!我らはデートしたことないのに!!」
「許さないからな絶対にっ!!」
「いったいどう償ってくれようでありますか!」
リーダーのセリフを聞いていると、まるで自分が二股をかけたように思えたが、最後のは明らかな私怨だった。
ブタ丸もメガネくんも両方とも逆恨みだった。
というかこいつら親衛隊を名乗るくせに、和葉さんとデートはしたいの?それってどうなの?
はぁ。
まったく面倒くさいことになった。
普段なら絶対に関わりたくないような奴らに目をつけられてしまった。
今更ながらにして、縄抜けの武術を使えば脱出することに気づいたが、その後三人……いや、四人と闘うことを考えると是非とも避けたい方法であった。
リーダー以外なら余裕で倒せそうなのだが、なにせそれぞれの能力がわからない。能力さえわかれば対処できるんだがな……。
俺がどうやってこの状況を打開するかを考えていると、
「翔くんっ!ここにいるのぉ!?」
ガキンッ―――――――。
硬い金属製の扉が文字通り切り開かれ、誰かが倉庫の中に入ってきた。
差し込んでくる強い光に目を閉じてしまい、倉庫への侵入者の姿を確認することができない。
だが、声だけでその正体を悟った。
「うわっ!和葉様っ!?」
「なんでバレたんだ!!」
「ああああやばいでござるぅぅ!!」
三者三様の悲鳴が響くなかで、ゆったりと近づいてきた和葉は、
「私の翔くんにぃ、なあにしてるのかなぁ~?」
顔は仏のような静かな笑みが浮かんでいるのに、まさに目だけが笑ってなかった。




