呟きから吐露へ
「終わった、か……」
篠垣を倒した大輝は一人呟いた。
そして、その呟きと共に、かつて恋人であった少女の存在を思い出して側に駆け寄った。
「だ、大丈夫か? 美霊?」
「…………ぐすん。ぅん……」
だが少女の涙は依然止まらない。
「も、もしかして、俺の攻撃が電導したのか?すまんっ!」
大輝はらしくもなく狼狽する。
「………ん、……ふふっ」
「………あれ? 美霊?」
「ごめんね、大輝くんが動揺しすぎてたから……」
「なら、なんで泣いてるんだ……?」
「それは、その……なんか、嬉しくて。ほっとした感じかな?」
そう、少女は――――――恵那美霊は嬉しくて泣いていた。かつての恋人に救ってもらったことに安堵したのだ。自分は裏切ってしまったにもかかわらず、なおも助けようとする彼の優しさに涙したのだ。
「あの、美霊。少し聞きたいことがあってさ。どうして……」
ちょうどその時だった。
「こっちの方だ! 怪我人がいたら、治療部隊を呼べ!」
複数の足音とともに、成人男性らしき野太い声が聞こえてきた。
「今のは、防衛隊の人たちか? ………ったく、遅ぇっての」
「………ッ!! 私、もう行かなきゃ!」
「え、あ、おい! 待てよ! まだなにも……」
聞いてない、と大輝が言い終わる前に、美霊は自分の異能『座標』を発動させた。
次第に体が透け始める。
「私は今、『幽霊の心臓』だから、見つかったら、拘束されちゃうの……。ごめんね大輝くん、せっかく助けてもらったのに。でもまた必ず会えるから!」
「美霊ぁ!! 俺はまだ……!!」
大輝は手を伸ばして美霊に触れようとするが、指一つ足らず、結果触れたのは彼女の幻影だけだった。
「クソッ………!!」
どうしようもない思いを自らの拳をもって床にたたきつけた。
その拳からは血がにじむ。つー、と赤い筋が通った。
先程の足音が近づいてきて、大輝の目の前で止まった。
「少年、大丈夫かい? 怪我はないか?」
「少年を一人保護しました!」
「今回の犯人と思われる少女の特徴と一致しています。この少女を確保しましょう!」
次々に防衛隊の隊員たちは言った。中にはトランシーバーでどこか別の場所にいる人間と会話している者もいた。
「ああ、大丈夫っすよ。問題ないです」
そう言いながら、大輝は右手を背中に隠す。
「他の場所も早急にまわれ!」
「了解です。『治癒』系の異能者を数人まわしてください」
などといいながら、防衛隊員は倒れていた篠垣を拘束すると、どこかへ連れて行った。
やがて一人残された大輝はひとりごとのように呟いた。
「また会える、か………」
彼の脳裏には想い人の姿が浮かんだ。
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