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まだ8時過ぎだというのに、店は開いていた。
当然のように俺と明日香を出迎えてくれる店員などいなかった。それどころか、俺たち以外の客さえいないように見える。
逆に数人いたのがびっくりだわ。なんなの君たち。暇なの?
明日香に連れられるまま、目的らしいショップへとたどり着いた。
近くにベンチがあったので、明日香の用事が終わるまで座って待っていようかと思い、そっちへ向かおうとすると、
「どこに行くんですか、お兄様。早く入りますよ」
「いやいやいや。このお店どう見ても女性専用じゃないですか。明日香さん。僕は男なんですけど?」
「知っていますが?」
なおさらわけ分からん。
俺が女性専用の水着ショップへ入らなきゃならないんだ?……はっ!?まさか……。
「いやー!!試着させられるのは、いやー!!」
男としてのプライドという奴が、俺の内で騒ぎ出す。
これだけは完全にダメだろ。何がダメって言えないけど、なんかダメなの!分かって!
「何言ってるんですか?試着するのは私ですよ?お兄様は水着を着た私の感想を言ってくれればいいんです」
……ほっ。なーんだ、よかった。てっきり俺が着せられるのかと……。
ってか今、感想言うっていったか?俺が?そっちもダメじゃねぇか!?
「お兄様がどうしても着たいというのなら、いくつか見繕ってあげますが?」
「いえ。けっこうです。お家に帰らせてもらいます」
くるりとUターンして、先程上がってきたエレベーターを目指す。
だが、明日香の追いかけてくる気配はせず、代わりに聞こえてきた声は、
「お帰りになるのでしたら、和葉姉様とのデートを親衛隊の方々にお知らせしますね♡」
「……は?」
え?なんで明日香がそれを知ってるんだ?いや、それよりも……!!
「やめてやめてーー!!明日香と一緒に入るから、それだけはやめて!?」
すぐさま明日香の足下にリターン。
なんで、足下かって?土下座するために決まってるだろ?ははっ。……割と泣きそう。
「こ、この悪魔め……」
「あら、小悪魔みたいに可愛いだなんて、嬉しいです♡」
クソ……。完全に退路が潰されてしまった……。
こうして俺は、明日香の一人水着試着大会に3時間ほど参加させられましたとさ。




