こんな日常はいかが?俺はごめんだね
扉を開けるとそこには銀髪の少女がいた。
いや何言ってんだコイツ、と思うかもしれないがこれは事実だ。逆に夢ならどんなによかったか。
少女が髪をふわっと揺らすと、俺の目の前の風景は辺り一面銀色に包まれる。
川端康成大先生の真似事をして風景描写を入れてみたが、あんまり意味なかったな。
まあつまり。
そこにいたのは俺の妹で。
実家にいるはずの妹で。
本来なら来られるはずのない俺の部屋に、妹がやって来たわけで。
そんでもってなぜかうちの学園の制服を着ているわけで。
今の俺にはどんなに頭をひねってみても、妹がここにいる理由と手段がさっぱり分からなかった。
「はい、お兄様。おはようございます。とりあえず中に入れて貰えませんか?」
「ん、ああ」
そんな俺に妹こと黒崎明日香はハキハキした声をかけてくる。
明日香は玄関で立ち尽くしている俺を避け、キョロキョロと見回しながらリビングへ。
そしてそのまま黒いニーソックスに包まれた足を伸ばしたままでソファに座って一言。
「久しぶりの兄妹の再会なのに、愛の抱擁はしてくれないのですか?」
「するわけないだろ!!?」
初見から爆弾発言が飛んでくる。
いやそんな『さあ!』みたいに腕広げてもしないよ?
キラキラした視線送ってもその要求は呑まないよ?
「昔はしてくれたのに……」
「昔は、な。」
思春期過ぎたらアウトだ。
別に意識するわけじゃないが、ほらまあいろいろとあるだろ?
警察とか条例とか。
「それは」
ん?
「私を一人の女として見ているから、ですか?ヤるならもっと真剣に、と?」
「違ぇよおおおおおおおおおお!!!」
話がだいぶそれてくね明日香ちゃん。
あと、発音が少しおかしかったのはお兄ちゃん気にしない。
はあ。
朝からツッコミまくって無駄に疲れた……。
「ところで」
「なんだよ」
え、まだなんかあんの?もうさすがに……
「妹モノのエロゲーはどこにあるんです?先程から捜しているのですが……」
「あ、あるか!んなもんっ!!つーか俺はまだ未成年だから!」
「あら、成人したらご購入なさるんですね?」
「買うわけないだろ!なんで実の妹がいる奴がそんなゲーム買わなくちゃいけないんだよ!」
「………買ってくださってもいいのに」
「ん、何?聞こえないんだけど」
「何でもありません――――――」
嬉々として話していた明日香だったが、今度はぷくりと頬を膨らませて俺をじっと見てくる。
なんだよ、怒ったのか?
今の会話のどこに怒る要素が……?
この時俺は明日香の突然の来訪によって、これから後に起こる最悪な出来事を想像することなんて出来なかったのは無理もなかった。




