濡れた道ってなんかいいよな
「まあ。こんな感じ。分かってくれた?美鈴ちゃん」
「なるほどです。」
パチパチとご丁寧に拍手をくれる。
なんて優しいんだ……。
それに引き換え……、
「お前はいつまで寝てるんだよ!」
「……グはっ!」
さっきまで完全に無視していたが、話が終わった以上はもう関係ない。
人がせっかく話してやっているのに、寝てるなんていくら寛容な俺でも見逃せないぞ?
俺の華麗なるキックは大輝の顔に綺麗に入る。
これはプロサッカー目指せますかね?
無理ですね。
俺の話が終わると、保健室は再び静寂に包まれる。
時計の秒針がせわしなく動き続ける音だけがこの場を支配していた。
これがまた心地よいんだよなぁ。
というかもう六時か……。どうりで外の夕焼けの光が目に入って眩しいと思ったぜ。
「そろそろ帰りませんか?」
「だね」
二つ返事で返す。
幸い、決闘の前に帰る準備は済ませてあったし、鞄も保健室に置いてあった。
まるで俺が保健室にくることを予期していたかのように。
誰が持ってきてくれたのか。俺にそれを教えてくれる者はいなかった。
まあ、優しいやつがいたと考えておくか……。
「あ。寮の門限あと三十分じゃん」
と、目覚めた大輝が背伸びしながら言った。
俺たち学園生は基本的に学園から出ることを禁止されているから、寮での生活を義務づけられている。変わりといってはなんだが、学園内にはありとあらゆる娯楽施設が存在している。
映画館、ボウリング、カラオケ、ゲームセンターなどなど。
まあ今君が想像してくれたものはなんでもあると思ってくれ。
「走るか」
「おう」
またもや二つ返事。
俺たちにそれ以上の会話は必要ない。
ただ目を合わせるだけで、意志が伝わるような気がして……。いや、言い過ぎかもな。
……やっぱりコイツいいやつなんだよなぁ。
「気をつけてくださいね」
そう言いながら、心配そうに手を振ってくれる美鈴ちゃん。
女子寮は近いからいいよなぁ。
なんては口にしないけど。
「ああ、大丈夫!」
親指を立ててグッドの形を示してみる。
ふと、窓の外を見やる。
いつの間にか雨は止んでいたらしい。
俺たちは濡れた帰路を走って帰っていった。




