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59話「決闘トーナメント第1予選⑦」

お久しぶりです。第1予選 完結です。

 本当はすぐに行動不能にするつもりだった。


 (カスミ)の指示で、このジャングルにいる冒険者を殺さない程度で襲っていた。冒険者は自分の姿を見るだけで、恐怖に怯え逃げようとする。しかし、自分は誇り高きSSランクモンスター。速さに特化した能力(スキル)を持ってない限りはすぐに追いつける。


 あの兄弟の冒険者も同じだった。80人ぐらい戦闘不可能にした後、すぐに出くわした彼らも自分の姿を見て恐怖に達しすぐに逃げ出した。



 すぐに追いかけた。そして、動けなくなるまで痛ぶってやろうと思った瞬間、



 途中で1人の幼い女と出くわした。



 しかし、たかが女。しかも子供。戦闘能力なんてたかが知れてる。どうせ、自分の姿を見れば怯えて逃げ出すに決まっている。



 だから、気にせずに兄弟の方を襲おうとしたら予想外のことが起きた。



 その女子供は俺の首筋に剣を刺してきた事だ。



 しかし、武器のランクが低いせいかそこまでダメージは入らなかった。そして、首を何回か振っただけですぐに剣は折れ、女子供を吹っ飛ばした。だが、追いかけていた兄弟がその女子供を助け一緒に走り出した。




 許せなかった。誇り高きSSランクモンスターがたかが女子供に多少でもダメージを負わせられたのだ。怒りの感情がみるみる込み上がってくるのかが分かる。



 あの女子供を優先的に狙おう。最悪、殺してしまっても構わない。



 しかし、更に追い討ちをかけるかのように女子供は攻撃を仕掛ける。



 あと、もう少しというところで女子供は粉状にしたものを投げたあと、スカーレッドキクの種も投げてくる。そんな弱い威力のアイテムを投げて何ができると安易な考えをしていたが、それが間違いだった。



 ポンと種が弾け、微かに出た火花が先ほど投げた粉状に反応し激しい火炎が襲ってきた。驚きすぎて、足を止めてしまい、火を消すために身体中を振り回す。



 1度は良しとして2度目までSSランクモンスターが女子供にダメージを負わされた。



 ーーーーープチンと自分の中で何かが切れたのが分かる。



 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す………………




 ーーーー絶対に殺す!!



 火を完全に消した頃には姿が見えなくなってしまっていた。しかし、まだ3人の匂いがはっきり残っている。これに辿れば、いずれまた会うことになるだろう。



 こうして、SSランクモンスター『デストロイヤーレックス』またの名を破壊龍は咆哮をあげながら、足を動かした。



 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「よし、こんだけあれば足りるか??」


 ウィルソンは汗を腕で拭いながら集めたとあるアイテムを眺めていた。しかし、コリンは首を横に振りはっきりと言葉を出す。


 「まだです。まだこれじゃあ足りません」


 「だが、このままだと時間が足りなくないか??」


 「大丈夫です。ここは『アレ』があるおかげで予想以上にあの作戦を実行しやすい環境になってます。焦らずに行きましょう。」


 「すごく冷静だな。本当に10歳か??」


 「??」



 ウィルソンは苦笑いしながらコリンに話しかける。実際、ウィルソンは不安でいっぱいだった。Cランクの冒険者がSSランクモンスターに立ち向かおうとしているのだ。しかも、自分より年下の女の子の作戦によって…………。少しだけ情けない気持ちとなる。



 「嬢ちゃんはすげぇよな。」



 「え?」



 ウィルソンの言葉にコリンが戸惑いの表情をして見つめる。ウィルソンは「いや」と言いながら前髪に触れる。



 「俺達さ。ギルドに登録してからずっと2人でやってきたけどぶっちゃけ、冒険者としての素質がないんだよな。属性スキルもお互い地味だし。けど、それに対して嬢ちゃんは属性スキルを使わずにSSランクモンスターに立ち向かってるんだからな。その度胸が羨ましいよ」




 ウィルソンは「ごめんな、なんか皮肉な感じで言っちゃって」と最後に付け加える。



 「そんなことないです」



 「え?」



 コリンはウィルソンの手を優しく触れながら可愛らしく微笑む。



 「ウィルソンさんもザリバさんも私からしたら十分に強いですよ。逆になんでCランクなんだろうって不思議に思うぐらいです。」



 「そうか??あまりそうは思わないんだけど」



 「ウィルソンさんの属性スキル『糸』はどんな場面でも役に立つ上、使いすぎると糸の耐久が低くなる難点がたった5分でリセットするなんて十分魅力的な能力ですよ。ザリバさんの属性スキル『クリエイト』もアクシデントが起きてしまった時なんかに非常に頼りになる能力です。全然、地味なんかじゃありません」



 「そんなこと…………」



 「ない」とあとに続け言おうとしたウィルソンはコリンの真剣な眼差しを見て言葉が詰まる。



 コリンは心の底から本家を言っているのだとウィルソンは感じ取った。



 だからこそ、ウィルソンは本来、「ない」と言うつもりであったが言葉を変えて呟いた。



 「…………あるのかな」



 「はい。考えた作戦も実行するには2人の力があってこその作戦です。自信持ってください。」



 「……………ありがとう。なんか、行ける気がしてきたわ」



 コリンの言葉にウィルソンは照れくさそうに笑う。もう、彼はコリンの言葉によって吹っ切れたか、不安の要素は無くなっていた。



 「おーい!こんだけあればいいかなぁ??」



 ジャングルの奥の方まで探しに行っていたザリバがニコニコとしながら、両手いっぱいにとあるアイテムを抱えて帰ってきた。それを見たコリンは満足そうな表情となり、


 「充分です。ザリバさん、ありがとうございます。」


 「良かったぁ!!じゃあ、これで……」


 ザリバの言葉で、コリンは真剣な表情と変わり1回頷いた。





 「はい!!ウィルソンさん、ザリバさん、作戦実行です!!」





 「「おう!(うん!)」」



 こうして、3人はSSランクモンスターを倒すため行動に移った。



 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 ーーー近い。


 あれから火を消したあとすぐに匂いを辿って3人を追っていた。途中、何人かの冒険者と出くわしたが逃げ出したやつはそのまま放置、攻撃をしかけたヤツらは半殺しにしてやった。


 恐らく、あの女子供が考えることだ。安易な立ち回りをしてしまうとまた足元を救われるかもしれない。


 だからこそ、今回ばかりは常に意識して行動をするつもりだった。



 あの3人の匂いが自分のいる位置からすぐ先の方から強く漂っていた。



 恐らくあそこにいるのであろう。



 すぐに駆けだして襲いたいところではあるが、妙にひっかかる。先程までは、予想外な策略を繰り出したあの女子供が何も意図なしであそこに立っているはずがない。



 きっと、何かを仕組んでいる




 なので、それを阻止してやる




 そう決意した破壊龍はその場で100%の力を込めて足踏みをし始める。すると、まるで、大地震が起きているかのような衝撃が周りを襲う。


 木々は倒れ、土砂崩れも起き、近くにあった湖は水しぶきを激しく上げ、動物たちも驚いては逃げたりしていた。



 あっという間に破壊龍の周りは悲惨な状況と化した。これだけ環境を破壊しておけば策略も不可能のはず。



 破壊龍はもう考えるのやめ、ただ匂いのする方へ咆哮を上げながら突入した。




 しかし、匂いの先にあったのは…………



 3人の匂いがたっぷり染み付いた上着だけであった。



 しかも、なんだか身体がおかしい。ここに来てからなんだか身体の感触が全く感じられない。


 ………まさか



 そう思って後ろの方に振り向くと、『赤い』液体がついた細い数百本の糸が太陽の光で輝いていた。



 糸についている赤い液体………あれは間違いなく



 自分の血だ



 それを自覚する頃には身体がバラバラに崩れていることに気付く。そして、だんだんと意識が朦朧となってくる。



 カスミが従えているSSランクモンスター『デストロイヤーレックス』またの名を破壊龍はバラバラの肉塊となって最期を迎えた。



 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 デストロイヤーレックスが肉塊と化してすぐに近くあった湖からコリン、ウィルソン、ザリバの3人が上がってきた。


 「どうやら、上手くいったみたいだな」


 陸に上がったウィルソンが確認すると安心したかのような表情を出して座り込む。


 「足踏みをされた時は焦ったよ」


 「はい。あれは私も驚きました。しかし、ウィルソンさんのお陰でなんとかバレずに済みました。ありがとうございます」


 「気にすんな。」


 「あー!兄ちゃん、照れてる」


 「うっせ。」



 そんなやり取りをしたあと、3人は笑い合う。



 一体、何が起きたのか順に説明しておこうと思う。



 まず、デストロイヤーレックスを肉塊とさせた糸。これは当然、ウィルソンによる属性スキルなのだが、ただの糸ではない。




 西の方角にしか生息しない珍しい植物、『ウェストタンポポ』と合成している糸である。



 この植物の特徴は花びらが鋼鉄なのように硬いということで剣や盾、防具などの材料として非常に重宝されている植物。しかもこれはレアアイテムではなく雑草レベル並みに西の方に行けば生えているので簡単に手に入れる植物。



 なので、コリンは西の方に行けば必ず生えていると確信していた。



 それをザリバの属性スキル『クリエイト』で糸とウェストタンポポを材料として完成したのがデストロイヤーレックスの体を引き裂いた鋼鉄糸である。



 これをそこら中に張り、3人は匂いがたっぷり染み付いた上着を鋼鉄糸が張り巡らせている中心部に設置し、偶然見つけた湖の中に入って本人から漂わせる匂いをシャットダウンさせた。それゆえ、デストロイヤーレックスからしたら上着から漂う匂いが本人だと誤解させる。



 途中、デストロイヤーレックスが罠を警戒し大地震並みの威力のある足踏みをした際には、湖が激しく揺れる中、ウィルソンが属性スキル『糸』を発動させ、ぶっ飛ばされないように固定させた為、バレることは無かった。



 あとは、安心したデストロイヤーレックスが突入した際、細すぎて肉眼では見えない鋼鉄糸が自分の身体を引き裂いていると気づかずに潜り抜けたというのが、今回、コリンが考えた作戦だった。



 「まさか、俺たちがSSランクモンスターを倒すなんて夢みたいだな」


 「うん!!なんか、これから先も行けるような気がしてきたよ!!」

 


 ウィルソンとザリバは連続で「うぇいうぇいうぇーーい!!」と言いながら、ハイタッチをして勝利を喜んでいた。



 しかし、2人はその優越感に浸っているせいで大事なことを忘れていた。そして、それを計っていたかのように1人の少女は2人のそばに何事もないように近づき、そして



 ーーーパリン


 ーーーパリン



 「「え?」」



 「悪く思わないで下さいね。悪魔で、これはバトルロワイヤルですから」



 まるで小悪魔かのような微笑みでコリンは優越感で油断していた2人の赤バッチを簡単に破壊した。



 「「あぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁあ!!」」



 流石は血の繋がった兄弟。リアクションや頭を抱えて悔しがる仕草もシンクロし、そのまま消滅した。


 『ウィルソン様、ザリバ様、脱落。』


 この文字が浮かび上がったあと、コリンの赤バッチからテッテレーン♪と楽しそうなBGMが鳴り響いた。


 『コリン様、第1予選1位通過です。おめでとうございます。』


 と更に赤バッチから告げられたあと、シュンとコリンの姿がジャングルの中から消えた。





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