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54話「決闘トーナメント第1予選②」

 「ジャングルの中でバトルロワイヤルかぁ。アキラさんはどう思う??」


 第1予選をコリンに向かわせ、別グループであるアキラと一緒にいるハヤトがモニターに映っている赤グループの冒険者たちを見て彼女に問いかける。ちなみに、どうやってモニターで冒険者達を映しているのかはとある責任者の『属性スキル』によるものらしい。


 「私はなかなか面白いと思う。木々を切り倒して派手に進むのも良しだし、逆に木々を利用して存在を薄め奇襲を仕掛けるのも良しだし、色々と戦術が必須となるステージね。」


 顎に手を抑え、それなりの自分の意見を主張するアキラ。それを聞いて、ハヤトも共感したのか、何回か頷いた。





 「アキラちゃん、それだけじゃないよぉ!!」





 「え??あ、母ちゃんさんとケニックくん」


 背後から聞き覚えのある声が聞こえてきたので振り向くと、パッツパツのタンクトップの胸の部分に緑バッチを付けた母ちゃんと青バッチを付けたケニックがいた。そして、2人はアキラとハヤトに近づく。ハヤトは母ちゃんの姿を見て化け物を見ているかのような表情をしていた。


 「あんたがハヤトちゃんだねぇ!!リンガル王国でもよく耳にするよ」


 「そりゃどーも。てか、どなた様??」


 「母ちゃんだ!!」

 

 「は??」


 ちょっとした時間が過ぎる。


 「母ちゃんだ!!」


 「え?」


 ちょっとした時間が過ぎる。


 「母ちゃんだ!!」


 「……………」


 ちょっとした時間が過ぎる。


 「母ちゃ…………」


 「分かったわ!!何度も言うな!!」


 耐えきれなかったハヤトは大声でツッコミを入れる。そのあと、ハヤトはアキラの側まで近づきコソッと彼女に呟く。


 「ねぇ、この人一体なんなの??」


 「母ちゃんさんよ。リンガル王国のSランク冒険者。ちなみに、この方もSランク冒険者のケニックくん」


 「………」


 ケニックはペコッと無口で無愛想に頭を下げる。


 「ところで、母ちゃんさん。それだけじゃないっていうのはどういうことなんですか??」


 先程の母ちゃんの発言が気になったのか、アキラは母ちゃんに言葉をかける。すると、母ちゃんはモニターに指を指し答える。



 「それは、モニターを見れば分かるよぉ!!」



 母ちゃんの言葉によって、ハヤトとアキラの2人はモニターの方に視線をやる。すると、モニターに映っていたのは意外なものだった。



 「……………なるほどね」



 モニターを見たハヤトは無表情で、納得したようなトーンで呟く。


 「ハヤトくん…………」


 アキラは心配そうにハヤトに声をかける。恐らく、モニターに映っていたのは少なくともコリンにとって不利なものだったのだろう。しかし、ハヤトは何も言わずに立ち上がり、部屋から出ようとした。


 「何か、飲み物買ってくるわ。アキラさんと母ちゃんとケニックは何がいい??」


 「息子に奢ってもらえるなんて、私も歳をとっちゃったねぇ!!私は『バナナプロテイン』をよろしく頼むよぉ!!」


 「『マグマストロベリーミルク』で…………」


 「え?じゃあ、私は『レモネードスカッシュ』でお願い…………じゃなくて!!コリンちゃんのこと心配しないの??」


 アキラの言葉でハヤトは部屋に出る直前にピタッと止まる。


 しかし、ハヤトは無表情でアキラに対して衝撃な発言をした。












 「心配するもなにも、1位で通過するのに何の心配をするんだ??」








 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 赤グループの冒険者がジャングルに入って10分が経過した。コリンはライトソードを使い草木を切り落としながら慎重に進んでいた。


 (下手に動くと敵に見つかるかもしれない。序盤は出来るだけ戦闘を避けて状況を見てから動こう)


 コリンは冷静になって戦術を練っていた。ここは、ジャングルの中。いつでも敵と遭遇してもおかしくはない状況だ。少しでも判断を誤るとすぐに敵に殺られてしまうかもしれない。


 だからこそ、コリンは落ち着いて行動していた。



 しかし、その時だった。



 「え??」



 突然、木と木の間から高速で何かがコリンに向かってきた。コリンは即座にそれに反応し、思いっ切り地面を蹴ってジャンプし、向かってくる何かを回避した。


 (一体、何が…………!?)



 「もーらった♡」



 「!!??」


 恐らく2mぐらいの空中にいるコリンの更に真上から一人の男性が舌を気持ち悪く出しながらコリンの赤バッチに目掛けて拳を突き出そうとしていた。


 コリンは咄嗟にくるりと体を回転させ、その男性の攻撃を躱し、そのまま地面に着地して距離をとった。


 「おいおいおい、ガレウス。普通に躱されてるじゃねぇかぁ!!ちゃんとやってくれよぉ」


 「悪ぃ悪ぃ。次はちゃんと狙うよ」


 空中から攻撃してきた男性の他にもう2人、弓を持った男性と大剣を持った男性が現れた。


 「チームプレイですか…………。」


 3人の姿を見て、コリンは汗を流しながらバツの悪そうに答える。


 そう、先程、母ちゃんが言っていたのは正しくこれのことだった。これは、バトルロワイヤル。別に1人じゃなくても、仲の良い人同士手を組んで、敵を狙うのも立派な戦術。決して卑怯ではない。


 そして、コリンを狙った男3人、ガレウス、クアージュ、パラスは元々パーティを組んでいた冒険者たちだった。なので、お互い赤バッチを3つ破壊するまで協力し合うという形で共闘していた。


 「という訳で、お嬢ちゃんよぉ。お前はもう詰みなのよ。だから、素直に俺に倒されてくんね??」


 「おい、パルス。敵が行動不能になるまでボコボコにして最後に誰が赤バッチを壊すかはジャンケンで決めるって話だっただろ」


 「うるせぇんだよ、クアージュ。早いもん勝ちだ」


 「おいおいおい、パルス。それは良くないぞ。ちゃんと決まりは守れや」


 3人のやり取りを見ていたコリンは冷静にこれからどうするか考えていた。明らかに今の状況は自分が不利だということは理解していた。


 そして、この1対3という絶望的な状況の中でコリンが決心して行動を開始した。


「あっ!!」


 コリンの行動を見て、パルスは驚愕の言葉をする。なぜなら……………















 コリンは3人に背を向け逃げ出したからである。












 別にこれも卑怯な手ではない。一旦、距離を離れ、状況を立て直す。これも戦術の1つであり、コリンはそれを狙っていた。


 あっという間にコリンは独自の速さを活かし、3人から距離をとった。



 「容易く逃げれると思うなよ!!属性スキル発動!!」


 

 クアージュは舌打ちをしながら、背中に背負ってある籠から矢を手にし、弓を構えコリンに向けて発射した。



 恐らくもうコリンは3人とは約500メートル程は離れているであろう。しかし、クアージュが射った矢は綺麗にコリンに向かっていた。



 リンガルギルド、Bランク3位の冒険者、クアージュの属性スキルは『ロックオン』。1度見た獲物を最高5キロの範囲までならどんな遠距離攻撃でもドンピシャに狙う事ができる能力。最初にコリンに仕掛けたのもクアージュによるものだった。




 コリンは走りながら、ライトソードを手に取り、スパッと矢を切り落とした。


 しかし、そのやり取りのコンマ秒をとある男は見逃さない。


 「属性スキル発動♡」


 「ぐっ!?」


 いつの間にかコリンの目の前に現れたガレウスはコリンの顔面に目掛けて蹴りを入れる。コリンは腕を構え何とか顔面に蹴りが入ることは免れたが、体格差もありそのままコリンは吹っ飛んだ。




 リンガルギルドAランク16位の冒険者、ガレウスの属性スキルは『瞬間移動』。10キロまでの範囲ならば、一瞬で特定した場所まで移動することができる能力。1度使用すると、5分間は使用することが出来ないし、ガレウスの体力的に1度に4回まで使用することが出来る。



 吹っ飛ばされたコリンは腕を押さえながらもすぐに立ち上がり、再び距離を取ろうとした。


 「1度ならまだしも2度はねぇよ。」


 「ーーッッ!?」


 そんな声が聞こえた瞬間、逃げ出そうとしたコリンは思うように身体に痺れが入り、動かすことが出来なかった。まるで身体中に電流が流れているかのような感触だった。


 「どうだ??思った様に身体を動かすことが出来ないだろ」


 木の茂みから少しだけ泥まみれになっていパルスが手に目薬を持って現れた。



 リンガルギルドCランク1位の冒険者、パルスの属性スキルは『ヘビにらみ』。視界に入った獲物を一時的に痺れさせ、行動不能にさせる能力。1度使う度に目の負担が半端ないので目薬が常に必要。敵を拘束させるにはもってこい。



 「ようやく、大人しくなったな。」



 パルスが目薬を指しながら動けないコリンに近づく。後に、ガレウスとクアージュも合流した。


 「さてさて、こいつの赤バッチは誰がやる??」


 「俺の属性スキルで身動き封じたんだ。俺に取らせろ!!」


 「分かった、分かった。今回ばかりはお前に譲ってやるよ。な、いいだろ??クアージュ」


 「む………。ガレウスがそう言うなら…………」


 「よっしゃ!!」


 そう言って、パルスはニヤニヤしながら身動きできないコリンの方に近づき、武器である大剣の方に向ける。


 「その歳でよく頑張った方だよ。だけど、あと少しだけ届かなかったな。あばよ」


 そう言って、パルスはコリンの赤バッチに目掛けて大剣を振り下ろした。













 「あと少しだけ届かなかったなら、あともう少しだけ前に進めばいいのでは??」











 「ぐはっ!?」

 

 


 コリンはパルスの顔に目掛けて泥をぶちまける。泥がまともに顔にかかってしまい、数歩後退してしまったパルスに対し、コリンは素早く立ち上がって、パルスの赤バッチに目掛けて蹴りを入れる。



 ーーーパリン



 と音が響きながらパルスの赤バッチが砕けた。そしてパルスは「なっ!?」と驚きの言葉を口にした瞬間、シュンと姿が消えてしまった。


 『パルス様、脱落。脱落してしまったら人は強制退場。』


 テッテレーンというBGMが鳴り響きながら、パルスが消えた場所にそのような文字が浮かび上がり、少し経ったら消えた。



 ガレウスとクアージュはコリンに対し、不気味な違和感を抱きながら戦闘態勢に入った。ガレウスは拳を、クアージュは弓を構える。



 「あと4人…………!!」



 そんな2人を見てコリンはニッと笑いライトソードを構えてボソッと呟いた。


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