52話「決闘トーナメント第1予選⓪」
グランの選手宣誓が終わった後、ハヤト達冒険者達はスタッフに誘導され『グリーンフィールド』の中にある控え室で待機していた。そして、ハヤト、アキラ、コリンの3人で何気ない世間話をしていると扉が開き、何人かのスタッフさんが大きい箱を持って入って来た。
「名前を呼ばれた方はこのバッチを取りに来てください。受け取ったものは胸部分につけるように。」
名前を呼ばれた冒険者たちは次々とバッチを受け取り、胸の部分につけた。バッチは『赤』『青』『黄』『緑』の4種類よ色に分けられていた。
「アキラさん、何色だった??」
「私は緑色ね」
「俺、赤色。……………勝ったわ」
「いや、何によ!?」
ふふんとハヤトはドヤ顔で赤色のバッチを胸の部分につける。アキラもツッコミをした後はハヤト同様、緑色のバッチを胸の部分に付けた。
「以上、これで全員配り終えましたね。このバッチは予選グループを意味していますので自分の色を呼ばれた冒険者たちは指示に従ってくださいね〜」
「あ、あの!!」
「はい、なんでしょう??」
コリンが申し訳なさそうに手を上げ、スタッフの人に呼びかける。
「私、名前呼ばれてないんですけど」
そう、なぜかコリンだけ名前を呼ばれず、バッチを受け取っていなかった。これを聞いて、スタッフの人はポンと手を叩き、なにか言い忘れていたかのような態度を取りながら頭を下げる。
「申し訳ございません。貴方がコリン様ですね。バルバークギルト長の伝言で予選の時だけはそのバッチはハヤト様と共有して頂くような形となっております。」
「え?共有??」
「はい。予選は第1、第2とあります。ハヤト様とコリン様はどっちか片方の予選に参加して頂きます。もし、予選を勝ち抜いた暁にはコリン様専用のバッチを配布したいと思います。」
「も、もし私が第1予選に参加して、脱落したら…………」
「そりゃあ、もちろんハヤト様と共に脱ら」
「もういい。それ以上話すな」
スタッフの言葉を遮り、ハヤトはスタッフを部屋からほぼ無理やりと退室させた。そして、コリンを連れて人目があまりつかない片隅の方へ移動させる。アキラも2人を心配して後を追う。
部屋の片隅でコリンは下に俯き、もじもじとさせる。
「師匠……あの」
「コリン。」
「………はい」
「お前、第1予選の方に出ろ。これ、決定事項な。はい決まり!!あとはよろしくぅ!!」
「え?」
ハヤトは無表情でコリンの焦りの瞳を見ながら、コリンにとって衝撃の一言を放った。コリンは目を丸くする。
「む、無理です。」
「ちょ、ハヤトく……」
「てぇぇぇぇい!!」
「にゃぁあん!?」
ハヤトは勢いよくコリンの両頬をつねり、縦横無尽に動かす。そして、最後に無理やりと口を笑顔の形にさせる。
「なにふるんでひゅか!!」
「なに世界が終わるみたいな顔してんだよ。可愛い顔が台無しだぜ??もっも笑え、楽しめ、盛り上がれ」
「ひゃい??」
「コリン、前に言ったよな??努力はいつかは報われる時がくるって」
コリンは両頬を未だにつねられながら、コクリと頷く。忘れるはずがない。なぜなら、コリンが挫折しそうになった夢を再び追いかけるきっかけを作ってくれた言葉だった。
「今日、俺がここで断言してやる。それは、今日だ、コリン!!」
ババン!!という効果音があってもいいぐらいハヤトは珍しく迫力のある声でコリンに言った。コリンはだんだんと胸が熱くなった。
「はーい、お待たせしましたぁ。赤グループの方はこちらの方に集まって下さい!!」
このタイミングで控え室の扉が開き、スタッフの方が入室する。そして、赤グループの冒険者に声をかける。すると、赤バッチを身につけている冒険者がゾロゾロと部屋から出て行った。
「コリン、受け取れよ。俺の命、お前に預けるぜ。」
ハヤトは1度付けたバッチを外し、コリンの方に差し出す。コリンは恐る恐る受け取ろうとするが、取る1歩手前で手が止まる。
「も、もし負けてしまったら…………」
「その時はその時だ。もし、負けてお前がまた挫折しそうになったら俺が全力で支えてやる。だから安心しろ」
ハヤトは優しく微笑み、コリンの頭を撫でながら言葉を呟く。すると、コリンは一旦、ハヤトに背を向ける。そして、何回か素早く顔をゴシゴシと腕で擦ったあと、再びハヤトの方に顔を向ける。
「師匠、1つだけお願いいですか??」
「言ってみろ」
「私の背中を押してくれませんか??みっともないと分かってますが、前に歩き出す勇気を私にください」
この時のコリンの顔にはもう迷いは無かった。これからの自分にとって立ちはだかる試練に全身全霊で立ち向かおうとする戦士の表情をしていた。
「みっともない??は?笑わせんな。今のお前は最っ高にかっこいいぜ!!」
ハヤトはニカッと笑いながらそう言って、コリンに赤バッチを渡し、くるりと半回転させてポンッと背中を優しく押してあげる。
「師匠…………行ってきます!!」
「おう!!行ってこい!!」
コリンは素早く赤バッチを胸の部分に取り付け、そのまま部屋から退室して行った。
「やるじゃん。」
今まで口を出さなかったアキラが残されたハヤトの方に近づき、肩に手を置いた。しかし、よく見るとハヤトはダラダラと汗を垂らしながら
「負けたらどうしよう………」
「いや、しっかりしなさいよ!!」
異性を貼っていただけであったハヤトに対し、アキラのツッコミが部屋中に響き渡った。




