51話「決闘トーナメント 開幕」
パカパカパカーンと朝から盛大に花火が打ち上げられる音が鳴り響いていた。あと、かなり大勢の人達の賑やかな声や足音が周りから聞こえてくる。
そう、今日は他国の冒険者が待ちに待った決闘トーナメント当日だった。
なので、決闘トーナメントが行われる『グリーンフィールド』にて多くの参加者である冒険者や観客が訪れていた。
「いやぁ!!色んな強そうな子がいるねぇ!!母ちゃん、とても楽しみだよ」
「それ、さっきから何回も聞いてるよ。あ、あそこに出店がある。母ちゃん、ケニック、行こうよ」
「アルが行くなら行くよ」
1人だけ他の冒険者とは何かが違うオーラを放つムキムキの女性に2人のイケメン男子が楽しそうに出店の方に向かっていた。リンガルギルドのSランク冒険者、アルバートにケニックに母ちゃんだ。3人で仲良く出店で注文していた。
「観客するご主人様はこちらの方へどうぞー」
多くの人数がいる中、メイド服を着ている可愛らしい女の子が看板を持って観戦する人達を誘導していた。そう、Sランクの冒険者、ゆーみんが経営するメイド喫茶『天使』で働いているメイドたちだ。メンバーの中には楽しそうに誘導しているパルルやエヴァや、表情が相変わらず不機嫌で誘導も適当にやっているポポの姿があった。誘導している際にさりげなくメイド喫茶の宣伝カードを渡していた。ゆーみんが明らかに考えてそうな宣伝方法だ。
「こ、ここに強い冒険者がい、いるんだ」
「何、ビビってんだよ!!それでもお前、チ○コついてんのか??」
「ちょ、アズ!!なんてこと言うだよ!!」
周りの強そうな冒険者たちを見て、ビクビクと身体を震わせている黒髪の男性に対し、その男性の背中をバシバシと豪快に叩く水色のショートヘアの女性がいた。
「い、痛いよ!!」
「ダイルよぉー、お前、もっと自信持てよ。それでも私の男かよ」
「き、君の男になったつもりはないよ!!勝手なこと言わないでくれ!!」
「あ、そうなんだ…………」
アズと呼ばれた女性は、ダイルと呼んだ男性にそう言われると、先程までの威勢が嘘のように大人しくなった。それを見たダイルは「はぁー」とため息を吐き、彼女の機嫌を治そうとした。
そして、大勢の冒険者がいる中、1人だけ相変わらず無表情である冒険者が出店で買ったであろう焼きイカを持って立っていた。永遠のFランク冒険者、ハヤトである。
あと、ハヤトの近くにいるのは大勢の冒険者達の姿を見て感動しているハヤトの弟子である、コリンの姿もあった。コリンも片手に焼きイカを持っていた。
「あ!!いたいた!!おーい、ハヤトくん!!コリンちゃん!!てか、なんで焼きイカ持ってんの!?」
ハヤトとコリンの姿を見つけた赤髪の女性が手を振りながら近づいてきた。Sランク3位の冒険者、アキラだった。アキラの姿を目にした瞬間、コリンはとても嬉しそうにしたのに対して、ハヤトは残念そうに溜息を吐いた。
「何よ??」
「あんた、もしかしてランさん以外に友達おらんだろ」
「は!?いるわよ!!失礼な!!」
アキラは顔を赤くしてハヤトに怒る。確かに、アキラはやたらとハヤト達と絡むことが多いが決して友達がいないわけではない。ちなに、ランは今日の朝あたりに連絡が来ており、もしかしたら行けれるかもということだった。ランは一応、妊婦さんなので無理はして欲しくないが、出来るだけアキラはランに会いたかった。
「はいはいはーい!!決闘トーナメントの参加者は受付の方に並んで来てください」
『グリーンフィールド』の入口から、受付人らしき人物が数人現れ、ハヤトたち冒険者たちに呼びかける。
ゾロゾロと冒険者たちは受付の人に誘導され、受付の方へと赴く。ハヤト達も周りの冒険者に続けて赴こうとした。
「きゃあ!!」
「あん??気をつけろ」
コリンはグイッと強引に割入ってきた大型体型の男性にぶつかり、尻餅をついた。その男性はコリンを睨みつけ、舌打ちをしながら進行をしようとした瞬間、
「おいコラ、おっさん。自分からぶつかっといて謝りひとつもないんか??」
ハヤトがその男性の肩に手を置き、無表情ながらも少しだけ殺気を放っていた。しかし、その男性は逆にハヤトを睨みつけ
「そのガキが俺の目の前にいたのが悪い。ただ、それだけだ」
そう言って、男性は受付の方へと進んだ。
「あの野郎、いつか性癖をあばいて周知に晒してやる。」
「やり方が残酷すぎだからやめなさい!!コリンちゃん、大丈夫??」
「はい」
なんとか、アキラはハヤトの怒りを抑え、コリンに手を差し伸べて立たせてあげる。コリンは尻を手で叩き、埃や土を落とす。
「じゃあ、私達も行こっか」
アキラの言葉で、ハヤトとコリンは頷き、受付の方へと進んだ。
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「皆の者、集まったな??ワシはマーガル王国のギルド長、バルバークという者じゃ。遠い中、我が国に足を運んでくれた事、心から感謝する」
かなり大勢の冒険者が『グリーンフィールド』で並び立っている目の前にマーガル王国のギルド長、バルバークが宙に浮いている土らしき物に立って、冒険者を眺めていた。
「今回、マーガルギルドの他に、リンガルギルド、アーガンギルト、そしてハルハルギルトの冒険者が参加してくれた。こんな色んな国から来てくれるとはワシも驚きじゃ。じゃから、なんと参加者は合計で2000人じゃ!!」
2000人という単語で冒険者達がざわめく。4つの国の冒険者が集まっているので、当然のことだろう。
「今からルールの方を説明していく。イオリ、頼んだ」
「はい」
バルバークの背後から、イオリがひょっこりとイケメンスマイルをしながら現れる。すると、並んでいる女性の冒険者、または観客席にいる女性がキャーキャーと歓喜の叫び声が鳴り響いた。
「少しだけうるさいですね。『沈黙』」
パチン!!とイオリは指を鳴らすと先ほどの女性の歓喜の叫び声が嘘のように静まった。しかし、女性の姿を見ると口がパクパクと動き続けている。
「少しの間だけ、周りからの雑音を聞こえなくする魔法を掛けました。」
イオリが、イケメンスマイルでそう答える。せっかくのイオリのファンの歓喜を雑音と例える辺りが恐ろしい男だと見ている冒険者は思った。
「それじゃあ、今から、マーガルギルトSランク冒険者、イオリが決闘トーナメントのルールについて説明させていただきます。」
イオリが片手に何枚かの紙を手にとったのと同時に背後からスクリーンのようなものが現れ、映像が映し出される。その映像には『決闘トーナメントについて』という画面が映し出されていた。
「まず、今大会は当然のことですが、予選と本戦に分けられています。予選で勝ち取った者のみが本戦に出られるという形ですね。そして、本戦で見事勝ち取った1人の冒険者が豪華アイテムや決闘トーナメントのチャンピオンという称号を得られます。」
イオリの言葉に合わせて、スクリーンの映像が絵や文字などを使用して分かりやすく映し出す。そして、イオリの「勝ち取った者のみ」という単語に対し、冒険者たちは一気にやる気のオーラを放出させた。
「そして、皆さんお待ちかね、予選についてですね。予選は全部で2ステージあります。この2ステージを勝ち進むと本戦に出場する権利を得れます。1ステージ目の予選についての詳細は後ほど行われる時に、担当の者が説明するのでお待ち下さい。僕からの決闘トーナメントについては以上です。ご清聴ありがとうございました」
イオリは優雅に頭を下げ、それと同時にパチン!!と再び指パッチンをすると、一気に周りの叫び声がまたしても会場中に響き渡る。そして、いつの間にかイオリの姿が見えなくなっていた。
再び、バルバークが前に立ち、大声をあげる
「では、最後に選手宣誓を。代表者は前へ」
バルバークの言葉のすぐあとに1人の男性がみんながいるグリーンフィールドの会場からぴょんと浮いている土の所まで飛び、バルバークの隣へと並んだ
「代表者は我が国のSランク1位の冒険者、グランじゃ。では、グラン。よろしく頼むぞい」
「任せろ。俺の股間が犠牲になってでもその偉業、成し遂げでやるぜ」
「いや、別に股間は犠牲にしなくても良いのじゃが…………」
今回は『祝』と刺繍されているふんどしのみを身につけ、あとは己の肌を晒している露出狂、グランが堂々と大勢の前に立っていた。当然の如く、イオリの時とは反対でブーイングの嵐が会場中を鳴り響く。
しかし、それでも怖気ないグランはすぅと息を吸い、そして
「宣誓ぇ!!」
手をビシッときっちり上げて、隣の国まで聞こえてくるんじゃないかと思わせるほどの大きな声を出す。しかし、そのおかげか、ブーイングがぴたっと止まった
「俺達、冒険者は己のこれまでを信じ、例えどんな災難にぶつかろうとも、諦めずに乗り越えれるよう、正々堂々と闘い抜くことを今、ここに誓います!!マーガルギルドSランク1位、グラン!!」
この選手宣誓によってたった今、決闘トーナメントが始まったのだ、ということを参加する2000人の冒険者全員が改めて感じた。
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