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50話「決闘トーナメント前日」

眠い

 決闘トーナメントが明日となった今日、アキラは手に花束を持って霊園へとやって来ていた。


 そして、『ジャン』と刻まれている墓の前に止まり、ジャーと丁寧に水をかけた後、花束を置いてしゃがりこんだ


 「いよいよ、明日だよ。ジャン。」


 アキラは優しく微笑みたがら話しかけるが、当然、返事はない。それでもアキラは楽しそうに言葉を続けた。


 「いろんな国の冒険者が来て闘うんだよ。本当に凄いよね。」


 「………………」


 「この前ね、他国の冒険者に会ったの。Bランクモンスターを一撃で倒したんだよ。こんな人たちと闘うかもしれないってなると少し怖いけど私、頑張るね」


 「……………」


 「ジャンも一緒に出たかったよね」


 アキラは笑顔ながらも少し耐えられなくなり顔を伏せた。もし、ジャンも一緒に出れていたらどれだけ良かったのだろうか。ただ、楽しくジャンと話したいだけなのに、毎回心が痛む。どうしてもあの時の光景を嫌でも思い出してまう。


 「あーあ、私、ちっとも変わってないね。時間が経てばなんとかなると思ってたのにな」


 アキラはいつの間にか流れていた涙を拭き取り、「よいしょ」と言って立ち上がった。


 「ジャン!!天国で私のこと応援してよね!!絶対、優勝するから!!」


 そう言って、アキラはグーを作って墓に突き出す。すると、『もちろんです!!』と墓から聞こえたような感じがした。


 そして、アキラは「またね」と一言呟いてからジャンの墓を後にした。








 アキラの姿が見えなくなってから数時間後、2人の男女が霊園に訪れた。




 そのうちの1人は闇ギルドの一員であるガルだった。


 「人の気配はないかい??ゆんゆん」


 ゆんゆんと呼ばれた女性は闇ギルドの1人であり、外見は幼い女の子にしか見えない。ゆんゆんは白髪の長髪に白衣を着ていた。


 「うんー!!大丈夫だよー!!」


 「そっか、それじゃあ人が来ないうちにとっとと始めようか」


 「おー。」


 そう言って、2人はアイテムボックスから1つの小瓶を取り出し、一つ一つの墓にぶっかけ始めた。もちろん、ジャンの墓にも………


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「いよいよ明日ですね」


 「そうだな」


 ギルドの近くにある広場でいつも通りハヤトはコリンに稽古をつけていた。明日は大事な大会なので今日はできるだけ控えめな稽古をしていた。


 「新武器には慣れたか??」


 「はい!!もうバッチリです」


 コリンは笑顔でピースを作る。コリンの背中には、その新武器らしきモノが背負われていた。


 コリンはハヤトに近づき、笑顔で話しかけた。


 「師匠!!明日は一緒に頑張りましょうね!!」


 「あぁ。」


 「もし、闘うことになったら手加減なしでよろしくお願いしますよ!!」


 「もちろんだ」


 「あぁもう、こうしてられない!!師匠、私、今から走って………」


 「コリン。」


 ハヤトは今まさに走ろうとしていたコリンに声をかける。コリンは頭の上に「?」を浮かべてハヤトの方を振り向く。


 「何ですか??」




 「お前、正直、ビビってるだろ」





 「ッッーーーーー!?」


 コリンはビクッと身体を震わせた。どうやら、図星のようだった。


 「どうして分かったんですか??」


 「数日前から無意識なのかお前の動きが微かに鈍ってるからだよ。身体も震えてるし。」


 「え………………」


 ハヤトの言葉でコリンは目を丸くする。コリン自身ではそんな違和感は無かった。むしろ、絶好調だと言っていいぐらい良い動きが出来てると思っていた。


 「なんか、あるんだろ。俺に言ってみ」


 この言葉でコリンは勇気が出たのか、弱々しい声ながらも自分自身の本音を語りだした


 「私、明日は本当に楽しみにしてるんです。冒険者じゃないのに、師匠のおかげでいろんな国の冒険者と競えれるなんて本当に夢みたいな話です。きっと、バルバークさんの他にいろんな国のギルド長もご覧になると思います。」


 次第にコリンの目には涙が流れた。それでもハヤトは顔一つ変えないでコリンの言葉を聞いていた。


 「大会が近づく度に私、怖くなるんです。この大会で今までの努力を十分に発揮することが出来るのかとか、呆気ない結果を残してしまって師匠たちを残念な気持ちにさせてしまうのではないかと日々思ってしまうんです。」


 コリンの心の底からの本音は止まらなかった。普段、明るくハヤト達に接している分、自分の中で相当なプレッシャーが溜まっていたらしい。


 コリンはハヤトに出会う前までは周りの批判を受け続けても折れずに1人で夢を叶える為に努力し続けていた。ハヤトに出会ってからはさらに努力を続け、Sランク冒険者でも絶賛するほどの実力を、身につけた。


 しかし、いざ身につけた実力を大勢の偉い人たちの前で披露するとなるとまだ10歳であるコリンにとっては厳しい環境だった。しかも、この大会の成果によってコリンの将来が決まるのに等しいものだった。


 もし、結果を残せれなかったらコリンがSランク冒険者に上がる確率は恐らくゼロに近づくであろう。それほど、Sランク冒険者になるのは難しいことだった。


 「…………………師匠、私、どうしたらいいですか??」


 最後に本当はハヤトに言いたくなかったであろう言葉を投げかけた。




 すると、ハヤトは突如、何も言わずライトソードα‬を握り始め、コリンに目掛けて振り下ろした。




 「ーーーーーー!?」


 コリンは少しだけパニックになるが、即座に冷静になりハヤトの攻撃を身体を捻らせ躱し、バックステップからのバク転でハヤトから距離を取るなどして見事な回避をした。



 「急に何をーーーーー」



 「Sランク4位に昇格できたかもしれない冒険者の一撃をよく躱したな」



 「え?」



 「コリン、黙って自分の身体を見てみ」



 ハヤトの言葉の意味が分からないままコリンは自分の両腕や両足の方に目を移す。両手や両足はマメだらけで、しかも青あざもいくつか目立っていた。とは言っても普段から目にしているので特にコリンは何も思わなかった


 「お前がめちゃくちゃ頑張った証拠だな」


 「師匠は何が言いたいんですか!!私にはさっぱりです」


 コリンは大声を上げる。それに対しハヤトは少し残念そうにため息を吐きながら髪の毛を掻く。


 「わかんねぇのかよ。しゃーねぇな。じゃあ、猿でも分かるように言ってやるよ」


 ハヤトはコリンの方に近づき、頭を撫でたあと、グイッとコリンを自分の胸の方にやり一言コリンに呟いた。





 「コリン、お前はやれる。きっとやれる。なんだってお前は努力家な強い女の子で俺の可愛い1番弟子なんだからな!!」




 「ーーーーーーーーー!!」




 この言葉で全てが救われた感じになったコリンは何も言わずただ、ハヤトの胸の中に顔を埋めて泣いた。


 きっと、泣き終わったコリンは先程までとは大いに変わっているはずだ。



 明日の決闘トーナメントは参加する冒険者や観客する人達全員が恐らく目に焼き付け、知ることとなるだろう。




 幼き努力の天才少女、コリンという戦士の存在を!!

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