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49話「メイドになりました」

もうすぐ車の免許が取れそうです。

 決闘トーナメントまであと3日となった。


 そのせいもあってか、現在、マーガル王国はお祭り状態であった。他国から来た人が多くなり、人混みが凄いことになっていた。


 きっと、今頃、どこの宿屋や飲食店とかは少なからず繁盛しているに違いない。


 そんな中、ハヤトはとある店に来ていた。


 「ど、どうですか??師匠……」


 「お〜、いいと思うぞ」


 ハヤトの目の前に現れたのはふりふりのメイド服を着ているコリンだった。普段、動きやすい服しか着てこないのか、なんだか動きがぎくしゃくしていた。


 「やはり、拙者の目に疑いはなかったでござるな!!お似合いですぞ、コリン殿」


 Sランク5位の冒険者、ゆーみんが鼻息を荒くして拍手しながら姿を現した。なぜ、コリンがメイド姿になっているのかと言うと、すべてこの男が原因だった。


 「本当に助かったでござる。決闘トーナメントの影響なのかここ数日、なかなか忙しい日々が続きましてな。何人かのメイドスタッフが倒れてしまって、人手不足だったのでござるよ。本当に感謝してるでござる」


 そう、昨日ゆーみんはハヤトに連絡を送り、なんとかコリンを1日だけゆーみんが経営しているメイド喫茶『天使』でメイドとして働かせてくれないかとお願いした。当然、ハヤトはそれを拒否したが、ゆーみんはしつこくお願いをし続け、結局Sランクアイテムをコリンに譲るという条件で引き受けた。


 「でも、私、接客業とかやったことないですよ??」


 「大丈夫でござるよ。パルルン、エヴァたん。ポポンちゃん。」


 ゆーみんがそう言って手をパンパンと叩くと、3人のメイドが控え室からトコトコと姿を現した。ハヤトは3人のうち、エヴァと呼ばれた子には見覚えがあった。以前、S会議でゆーみんが見せてくれた元奴隷のメイドの子だった。


 「はい、主人。何でしょう??」


 エヴァじゃない方の女の子がおしとやかにゆーみんに言葉を掛ける。すると、ゆーみんは3人にコリンの方に視界を移させる。


 「今日、ヘルプで入ってくれる子でござる。最低限の事を3人で教えて欲しいでござる。」


 「分かりました。あなた、名前は??」


 「コリンです」


 「ん。じゃあ、コリみゃんね。もうすぐ開店だからちゃちゃっとやるよ」


 「コリみゃん??」


 コリンは頭の上に??マークを付けて首を傾げる。


 「この店ではあだ名を付けることになってるの。私の場合、パルルだからパルルン。この子はエヴァだからエヴァたん。この子はポポだからポポンちゃん。そんな感じでみんなにあだ名を付けてるの」


 パルルは楽しそうに説明をする。その後、パルルはコリンの腕を引っ張り、控え室の方へと強制的に連行した。あとにエヴァとポポも続いた。


 ポツンとゆーみんとハヤトか残された。


 「どうでござるか、ハヤト殿。あの3人が我が当店の人気のメイドの子達でござる」


 「正直言って、凄いと思う。元奴隷の子には見えなかった」


 ハヤトは出されたお茶を飲みながら言葉を出す。そして、1つ気になったことをゆーみんに聞く。


 「けど、あのポポっていう子はまだ奴隷という呪縛から抜け出せれてない感じか??」


 この言葉で、ゆーみんは少し残念そうな表情になる。そして、メガネをクイッと無駄にかっこよく掛け直す。


 「ハヤト殿の言う通りでござる。ポポンちゃんだけはまだ警戒心がとれてないのでござる。よく分かったでござるね??」


 ゆーみんが少し驚いた表情になる。先程、メイド3人を呼んだ時に、パルルとエヴァの2人は化粧や服装が良い感じだったが、ポポの場合、化粧も雑でありメイド服も初めて着るコリンとそんな差はないぐらいだらしなく着ており、なんと言っても目が死んでいた。


 「あんなん、誰でも分かるだろ。」


 「そうでござるか。早く心を打ち明けれるよう頑張ってるつもりでござるがな。雇い主である拙者にも反抗してくる始末なのでごさる。」


 ゆーみんは「やれやれ」と言いながらお茶を入れ、フーフー冷ましながらお茶を啜る。


 あと、開店まで5分前というところで聞いたことのないコリンの叫び声が控え室から聞こえてきたが、ハヤトは黙って茶菓子の方に手を伸ばした。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「お帰りなさいませ、ご主人様♡」


 コリンが可愛さ満載の笑顔で、来店したお客さんに言葉を投げかけ、席へと案外していた。


 「あの短時間ですっかり様になってるじゃねーか」


 ハヤトはメイドとして働くコリンの姿を見て感心していた。コリンは努力家なのは出会った時から知っていたが、こんな短時間でメイドとしての動きをマスターできるとは思ってもいなかった。


 パルルもコリンに対して「メイドの素質が十分ある!!」と凄く上機嫌に褒めていた。


 「ところでさ、何であんたらがいんの??」


 「アンタの弟子ちゃんと一緒。ヘルプやで」


 「ちょっと、あんまりジロジロ見ないでよ」


 開店する直前、働くメイドがゆーみんの前に全員集合した時、そのうちの2名がハヤトが知っている面子だった。


 Sランク3位の冒険者、アキラとSランク7位の冒険者、ジーナだった。2人ともメイド服を着ていた。


 「お二人にはいつも感謝しているでござる。」


 ゆーみんが頭をペコペコとしながらアキラとジーナに感謝の気持ちを述べる。どうやら、過去に何回かお願いしてメイドとしてヘルプに入ったことがあるらしい。すると、ジーナは微笑みながら


 「別にええよ、ええよ。(うち)らも楽しんでやってるし。なぁ、アキラはん」


 「え!?あ、はい。大丈夫ですよ、ゆーみんさん」


 「アキラさん、棒読み過ぎるぞ」


 ハヤトがそう言うと、ジーナとゆーみんは「あはは」と笑い、アキラは恥ずかしそうに顔を赤くした。


 「さてさて、次のお客さん来るそうだし行こか。」


 「はい!!」


 『にゃにゃにゃにゃーん』という少しイラッとする音が鳴り響きながら、入口の扉が開き、ガリガリのお客さんが入ってきた。


 「お帰りなさいませ、ご主人様ぁ♡」


 「お、お帰りなさいませ、ご主人様。」


 流石に慣れているのか、可愛らしく微笑みながらジーナは対応しているのに対し、まだ恥ずかしさの方が勝ってしまっているのか、アキラはぎこちなく対応していた。


 「ドュフ、今日はジーたんがいる。ドュフドュフ」


 「ご主人様、運いいなぁ。ジーたんも嬉しいわぁ」


 ガリガリのお客さんが気持ち悪く笑をこぼしているのに、ジーナは顔ひとつ変えずに会話を続けていた


 「アッキー。この『天使の微笑みステーキ』貰える??」


 「か、かしこまりましたぁ。」


 別のお客さんの注文を聞いたアキラは厨房の方に入り、すぐに片手にステーキを持って戻ってきた


 「はい、こちや『天使の微笑みステーキ』ですよ」


 「いつものやってよ」


 「いつもの??」


 アキラはぽかんとなる。


 「何言ってんの??他のメイドはこのステーキを提供したあとに『美味しくなぁれ、にゃんにゃん』って魔法の言葉を言ってくれるのでござるよ」


 「は!?」


 アキラは顔を青くしギョッとする。流石に言いたくないんだろうな、とハヤトは思いながら他のメイドの子にドリンクを注文した


 「できないの??」


 「ッッーーーーーーー!!…………美味しくなぁれ、にゃんにゃんにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


 ヤケクソになって頭の何かが弾け飛んだのか、アキラは全力で魔法の言葉を叫んだ。そのせいで周りがシーンとなってお客さんも目を丸くしていた。



 「あーあ、アキラさん。やっちまったな」



 ハヤトはジュースを飲みながら、ボソッと呟いた。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「お疲れ様でござる!!」


 アキラさんのヤケクソ事件以降は特に何も起きることがなく、順調に閉店時間を迎えた。


 その瞬間、ゆーみんの目の前にメイドの子達がビシィィィィィと綺麗に1列に並び始めた。それを分かったかのようにゆーみんは懐から封筒を何枚か取り出し、順番にメイドの子達に渡していく。ゆーみんが言うには、日払いで雇っているらしい。


 「ゆーみんはん。いつものよろしゅうなぁ」


 「もちろんでござる。はい、どうぞ」


 キランとメガネを輝かせながらゆーみんは紙袋を1つジーナに渡す。受け取ったジーナは中身をガサガサと漁り、「確かに」と一言だけ呟いた。


 「ジーナさんは何を貰ったんだ??」


 「ん?アキラはんも気になんの??これや」


 ジーナは紙袋から1冊の本を取り出し、ハヤトに差し出す。ハヤトはその本を受け取り、中身をパラパラをめくると




 2人の女性が裸で火照りながら重なっている絵が書かれていた。






 バタン!!とハヤトは無言で閉じ、ジーナに即、返した。


 「あぁん!!もっと見ればええのに」


 「うるせぇ。俺は百合なんか興味はない」


 「今は人妻×新人冒険者がマイブームなんよ」


 「知るか!!」


 ハヤトがツッコミを、入れるとジーナはやれやれと言いながら本を紙袋に入れ、そのままアイテムボックスに閉まった


 「アキラ殿はいつものこれでござるな」


 「ありがとう。いつも助かってるわ」


 アキラはゆーみんから最上級回復アイテムをボックスで貰っていた。


 「コリン殿はこれを」


 「指輪??」


 「正確にはリングでござるな」


 最後に、ゆーみんはコリンに1つのリングを差し出した。そのリングには狼のような顔の刻印がされていた。


 「Sランクアイテム、『銀狼』でござる。このリングを付けている間だけ全ステータスが1段階上がる良いアイテムでござるよ」


 「全ステータスも!?凄い……。いいんですか??こんな貴重なアイテム貰って………」


 「いいでござるよ。お礼でござる」


 「ありがとうございます!!」


 コリンは頭をペコッと下げ、リングを中指に入れた。ハヤト的になかなか似合っていると思った


 「コリみゃん!!今からみんなでご飯行かない??」


 「え??」


 パルルがエヴァと嫌そうな表情をしているポポを連れてコリンにご飯のお誘いをする。どうやらパルルとエヴァはコリンともっと仲良くなりたいそうだった。


 コリンは困惑した表情でハヤトの方を見る。


 「行ってこいよ。大会前にパァァと思っ切り遊んでこい」


 「はい!!」


 ハヤトの言葉で決心したのか、コリンは3人の方に駆け寄り、そのまま楽しそうにきゃっきゃしながら店から出ていった。ポポも嫌そうな顔をしていた割には楽しそうにしていた。



 「本当に幸せそうだな」



 「ええ。」


 ハヤトが小さい声で呟くと、聞こえていたのかアキラが反応してくれた。


 「よし!!ここからは大人たちだけでパァァァとやろうや!!」


 ジーナのこの言葉によって、ハヤト達は「おぉー!!」となり、そのままギルドの方に行って飲み会が始まった。

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