48話「他国の冒険者」
決闘トーナメントまであと14日となる今日、Sランク3位の冒険者、アキラはジャングルでとあるモンスターと対決していた。
「らぁ!!」
アキラは愛武器であるユニコーンランスを思っ切り突き刺すと、そのモンスターは衝撃を吸収しアキラに目掛けて跳ね返した。
「くっ!!」
アキラは側転をして、跳ね返された衝撃を躱すと、後方に生えていた木々がその衝撃によって5メートルほど削られ跡形もなくなった。
ユニコーンランスの攻撃力をも跳ね返すことモンスターはAランクモンスター『バウンドスライム』。見た目はEランクモンスターである『ビックスライム』というただ大きいだけのスライムと似ているが、このモンスターの特徴は弾力性の高い身体を持っていること。倒す条件はただ一つ、バウンドスライムの身体に耐えられないほどの強いダメージを与えること。
しかし、アキラの攻撃をバウンドスライムに弾かれた今、アキラはバウンドスライムを倒す手段がほぼ無くなってしまった
そんな状況の中、アキラの目は死んではいなかった。ユニコーンランスをガシッと掴み、再びバウンドスライムの方へと走り出した。
「修行にはもってこいのモンスターね!!」
アキラは隙を見てバウンドスライムに目掛けて、ユニコーンランスを突き刺し、衝撃波をバウンドスライムに喰らわせる。
しかし、これもバウンドスライムに耐えられ、跳ね返される。
「きた!!うおぉぉぉぉぉぉ!!」
アキラは目をギランとさせて、まるで狙ったかのように跳ね返ってきた衝撃波をユニコーンランスでフルスイングし、跳ね返した。
「ピギャアァォォォァァ!!」
アキラが跳ね返したやつを再びバウンドスライムは受け止めようとするが、2回跳ね返しただけあって威力も増しているのか耐えきれず断末魔をあげながらパァン!!と音を立て、死んだ。
「うぅぅ!!」
アキラはユニコーンランスを手から離し、握っていた右手を抑える。流石に、弾いたやつを弾き返した時に右手に大分負担を掛けてしまったようだった。
「こりゃあ、しばらくは安静かな」
右手に回復アイテムである薬草を滲みこませた包帯でグルグル巻きにしながらアキラは呟く。
「面白い倒し方だったねぇ。まさか、弾かれた攻撃を再び弾き返すなんて」
「ーーーーーーーー!!!」
急に背後の方から声を掛けられ、アキラは咄嗟に距離を取りつつ振り向く。
そこに居たのは見た事のない3人の男女だった。
「いやぁ!!スゴい闘いだったねぇ!!母ちゃん、見ててビックリしたよぉ!!」
3人のうちの1人の女性が、アキラに近づき肩をパンパンと叩く。この女性、3人よりも身長が高い上にマッスル体型であるのでアキラは少し恐怖を覚えた。
「おい、母ちゃん。怖がってるからそこら辺で………」
「それはごめんねぇ!!母ちゃん、若い子が頑張ってる所を見てると応援したくなってねぇ!!いやぁ、歳かなぁ!!アハハ!!」
真ん中の青髪の青年が、母ちゃんと呼ばれる女性に声をかけ一旦、アキラから離れさせた。
「急にごめんね。俺の名前はアルバート。リンガルギルドのSランク3位の冒険者だ。こちらの女性はSランク2位の母ちゃん。んで、さっきから一言も喋らないイヌミミの無口くんはSランク5位のケニック。」
アルバートは青髪で有名な会社が作っているSランクの防具を身に付けていた。あと、イケメン。顔だけだったらイオリと同じくらいだろうか。
「母ちゃんだ!!私を本当の母ちゃんだと思って接してくれよ!!」
母ちゃんは少し年配の方で40代くらいだろうか。それなのに、長身でマッスル体型。しかも、服装がタンクトップ1枚で大きい胸が強調しているかのようにたゆんたゆん揺れていた。でも、見ていてなんだか安心する。
「………………」
ケニックと呼ばれた無口の男性はアルバートと同じくらいの背で顔も負けていなかった。そして、イヌミミが頭からぴょこんと生えていた。恐らく、シュンと同じ獣人族の血を引いているに違いない。
「てか、リンガルギルドってリンガル王国から来た冒険者ってことだよね??なんで、マーガル王国に??」
「もちろん、これのためだよ」
「あっ…………」
アルバートは懐から1枚の封筒を取り出す。その封筒は『決闘トーナメント』についてのやつだった。恐らく、決闘トーナメントに参加する冒険者なのだろうとアキラは予測した。
「いやぁ、マーガルギルドのギルド長はなかなか面白そうなことを考える。うちのギルド長も見習って欲しいよ」
「こら、アルくん!!そんなこと言ったら母ちゃん怒るよ!!」
「はいはい。ところで今更だけど、君は??」
「あ、紹介遅れました。私、マーガルギルドのSランク3位の冒険者、アキラって言います」
アキラはペコッと頭を下げる。すると、アルバートは目を丸くし、
「へえー、君もSランク冒険者だったのか。よろしくね」
「よ、よろしくお願いします」
アルバートがアキラに手を差し出したので、アキラも手を差し出し、お互い握手をした。
「………アル。モンスターだ。」
急に目付きが変わったケニックがボソッと言葉を出した。
すると、空中からスゴい勢いでモンスターが飛び出してきた。飛び出してきたモンスターはBランクモンスター『マッハコンドル』。MAXで時速300キロ近くまで出しながら飛び回り、攻撃を仕掛けてくる鳥型モンスターだ。
マッハコンドルの不意打ちを4人は何とか躱す。もし、ケニックが教えてくれていなかったら確実に1人は犠牲になっていた。
アキラはユニコーンランスを手に取るが、まだ右手が完治出来ておらず掴むことが出来なかった。
「くっ!!」
アキラが怪我をしているということを理解したのかマッハコンドルはアキラを標的とし、またしても加速してアキラに向かって直行する。瞬きした瞬間に、既にマッハコンドルはアキラのすぐ目の前にいた。
アキラは反応することができず、マッハコンドルの鋭い爪が自分の顔に迫ってくることをただ見つめることしか出来なかった。
(終わっーーーーーーー)
「あたしの大事な娘に何してんの??」
あと、数ミリでマッハコンドルの爪がアキラの頬に達するところで殺気を漂わせ、血管をくっきりと浮かべた母ちゃんがマッハコンドルの足の根元をガシッと掴み、動きを止めさせた。
そして、そのままぶんぶんと回したあと「ふんっ!!」と掛け声とともに思っ切り地面に叩きつけ、マッハコンドルの顔面を潰した。マッハコンドルはピクピクと痙攣をしたあと、動かなくなった。
「Bランクモンスターを一撃で倒すなんて…………」
「アキラちゃん、右手大丈夫かい??」
「あ、はい。助けてくれてありがとうございます。てか、さっき娘って………」
「私はみんなの母ちゃんだからね。つまり、私より年下はみんな、私の可愛い子供だ。よく覚えておきな」
「意味わかんないですけど!?」
尻餅ついていたアキラは母ちゃんに起き上がらせてもらったあと、そのまま世間話をしながらジャングルを抜けた。
「アキラさんも決闘トーナメントに出るんだよね??」
3人が泊まるという宿の所まで案内することになったアキラに対してアルバートは言葉を出す。
「まぁ。一応」
「じゃあ、対決する時が来たら楽しみだね。」
この何気ない一言でアキラはズシンと何かに押し潰されそうなプレッシャーに襲われた。
そう、今、目の前にいる3人は近いうちに若しかしたら闘うこととなる敵であるということをアキラは認識した。
それでもアキラはあの絶望な状況の中でもそれを楽しんでいるあのFランク冒険者の青年のように微笑み、
「そうですね。その時はよろしくお願いしますよ」
と宣戦布告の意味も込めた言葉を投げ返した。当然、気持ちが伝わったのか、一瞬だけ3人の殺気が漂ったあと、いつも通りになった。
その後、3人を宿に案内し、別れた後、アキラはギルドの方に向かって歩きながらギルドカードを取り出し、コールを入れる。
「もしもし。あ、社長さん??お願いがあるんですが…………」
その時のアキラの目はギラギラと輝いていた。
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