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42話「あのモンスターは……終」

あちーですね。

 (思ったより時間食っちまったな)


 ハヤトは自分の胸の中で泣いてるチアキの頭を優しく撫でながら少しだけ焦っていた。助けてやると言ったものの、チアキ自身が呪いに打ち勝たなければならないので、実質、ハヤトに出来ることはもう、ほぼ何も無かった。


 (あと、1分ちょいぐらいか??どうする??)


 こうして、悩んでいる間にも『(コネクト)』の効果時間は一向に進んでいる。


 (あっ……………)


 そして、追い込まれている絶望の中、ハヤトは思いつく。残り時間で自分がチアキのために出来ることを。


 「なぁ、チアキちゃん。」



 ーーーーーーハい??

 


 「実は、俺、もうすぐここから消える。」




 ーーーーーーえ…………




 「ごめんな、散々助けるとか一緒に出ようとかかっけぇこと言っておいて何も出来なくて。その呪いを解くにはチアキちゃん自信が頑張るしかないんだ」



 ーーーーーーそンな…………



 チアキは不安そうな声を出す。しかし、ハヤトは


 「大丈夫だ。今から俺が言うことをやればきっと勝つことが出来るよ」


 と、自信ありげな言葉を話す。チアキは首を傾げる。


 ーーーーーーなんデすカ??


 「まぁ、待って。その前にこれをチアキちゃんに渡しておくよ」


 ハヤトはそう言って、アイテムボックスから、ライトソードαを取り出し、チアキに差し出す。


 ーーーーーーそレハ…………


 「俺の愛用武器だ。もし、俺が消えても、これを俺だと思って持っていてくれ。そしたら、不安は少しだけ無くなると思う。だから、頼む。受け取ってくれ」


 ハヤトの気持ちを受け止めてくれたのか、チアキは恐る恐ると、ライトソードαを受け取った。この時点で、残り時間はもう10秒もなかった。


 「っし!!じゃあ、教えるよ。それはねーーーーーーー」



 そう言って、一言だけチアキに言ったあと、ハヤトの姿は光に包まれ無くなった。


 再び、暗い世界に1人だけ残されたチアキだったが、彼女の瞳は微かだが、光り輝いていた。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「お……………」


 意識を取り戻すと、目の前には氷漬けされ亀甲縛りになっているチアキ、もといキングオーガがいた。そして、隣には汗だくになって疲れの顔を露わにして、アキラに肩を借りているイオリがいた。


 「いや、めっちゃ疲れてんじゃん」


 「当たり前だろ。魔導師最強と言われている究極魔法の1つを発動させたんだ。もう魔力はカラッカラだよ」


 もう言葉を話すのも辛そうな感じであるイオリ。すると、アキラが心配そうにハヤトに言葉を出す。


 「ねぇ、どうだった??」


 「正直に言ってまだ分かんねぇ。チアキちゃんの自信を取り戻すのに思ったより時間をかけちまった。あとはチアキちゃんに任せるしかない。」


 ハヤトは髪をかきながら、そう答えると、アキラは「そう………」と一言呟いた。



 「けど、さっきも言ったろ??チアキちゃんはそんなに弱いやつじゃないって。だから大丈夫さ。」


 ハヤトは真剣な表情でそう答えた。そして、氷漬けにされているキングオーガをひたらすら眺めていた。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 チアキは目を閉じて、ハヤトに言われたことを実行する。




 『これから先の未来でやりたいことをひたらすらイメージしてくれ!!そしたら……………』




 これが、ハヤトの最後の言葉だった。あともう少しだけ言いたいことがあったのだろうか、タイムリミットで強制退場となってしまった。しかし、本題は前半の言葉のはずだ。




 なのでチアキはもし、呪いが解けたあとのこれから先、未来でやりたいことを想像し始める。





 ーーーー早く『スズラン』に復帰して料理をしたい。



 ーーーー休日に友人とお出かけして楽しく過ごしたいなぁ。



 ーーーーここ最近、帰ってなかった実家に帰るのもいいかも。お母さん、前から腰痛いって言ったけど大丈夫なのかな。死んだお父さんにも挨拶に行かなきゃ。



 ーーーーあぁ!!そういえば!!もうすぐあのアイスクリーム屋さん、新作出るんじゃなかったっけ!?行かないと!!



 ーーーー店長に借りたアイテム、返すの忘れてたな。まぁ、それはどうでもいいな。店長だし



 チアキがこれから先、やりたいことを想像すると、チアキを縛っている黒いモヤが苦しんでもがき始めた。



 ーーーー…………ハヤトさんにまた会いたいなぁ。誘ったら一緒にデート言ってくれるのかな??今度、勇気を出して誘ってみようかな。



 ーーーーまだ、あのアキラさんとつるんでるのかなぁ。あの人、ずっとハヤトさんといるけどもしかしてハヤトさんのこと好きなのかなぁ。け、けど顔は負けてるけどハヤトさんに対する愛は負けてないから!!あと、おっぱい!!うん!!まだ勝機はあるわ!!



 ここでチアキはワンシーンであるが、実現したい未来をイメージし始める。


 それは、あの日、チアキを救ってくれた青年と、チアキが共に未来を一緒に歩んでいるシーンだった。歩いている青年とチアキの間には、2人によく似た可愛らしい子供が青年とチアキの手を繋いで笑顔で歩いている。そんな輝かしい未来を想像した。




 ーーーーもし、本当に…………本当にいつかこの未来が訪れるとしたら、私は生きたい。生きてこの未来を実現したい!!だから…………





 「グオォォォォォォォォォ!!」




 チアキの強い意志によって、黒いモヤが叫びを上げながら、チアキから離れる。そして、その黒いモヤは段々とキングオーガの姿へと変わっていった。


 「ひっ…………」


 チアキは黒いモヤのキングオーガの姿を見て恐怖で腰を抜かしてしまった。それを確認した黒いモヤは再び、チアキの身体を乗っ取ろうとゆっくりと近づく。


 「どうしたら………あ。」


 チアキの視線に、ハヤトに渡されたライトソードαが目に入る。すると、チアキはライトソードαを構え、ガクガクとひざがふるえているが、戦闘態勢に入った。


 (ハヤトさん………、私に力を貸して下さい)


 そう言って、ダッとチアキは黒いモヤのキングオーガの所へと走り出した。


 黒いモヤのキングオーガは咆哮を上げながら腕を振り回すが、チアキはそれをなんとか回避する。




 そして




 「私の未来をこんな所で終わらせてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





 そう叫びながら、黒いモヤのキングオーガに向かってライトソードαを振り下ろし、黒いモヤのキングオーガは真っ二つになってそのまま消滅した。



 その瞬間、暗い世界が一気に光に包まれた。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「あ………」


 氷漬けにされているキングオーガが突然、光り輝き始めた。光り出すと、キングオーガはみるみると小さくなっていき、そこにいたのは…………



 「ほれ、言っただろ??あの子はそんなに弱くねぇって」



 ハヤトは安心した表情でそう答えた。その視線の先にいたのは、全裸で倒れているチアキだった。しかも亀甲縛りされているままなので、ものすごくえっちぃ格好だった。ちなみに、リュウとイオリとシュンは顔に手を当て見ないようにしていた。


 「おい!!ジーナさん!!属性スキル解除して!!このままじゃ、あかん!!」とハヤト。


 「えぇ〜、このままでええやん。そのままベットインしてき」と微笑むジーナ


 「してきじゃねぇんだよ!!ここに来てボケんな!!」


 ハヤトのツッコミでジーナは「えぇー」と言いながらも属性スキルを解除した。それでも、チアキは全裸なのでハヤトはアイテムボックスから数枚の布を取り出し、気絶しているチアキに被せる。


 そしてこのタイミングで、救急の馬車が到着したのでチアキちゃん含め、怪我人や死人などを乗せてギルドの方へと向かった。




 緊急クエスト『キングオーガ討伐』の結果。

 Sランク冒険者、イオリ、アキラ、ジーナ、リュウ、シュンの5名(イオリとアキラが重症レベル)

 Aランク冒険者、フェイ、ギラ、バーン含め12名 (そのうち、3名殉職)

 Bランク冒険者、15名 (そのうち、6名殉職)

 Cランク冒険者、14名(主に避難誘導)(死者0人、怪我人8名)

D、E、Fランク冒険者、計54名(主に避難誘導かつ雑用。)(死人、怪我人0)


 永遠のFランク冒険者、ハヤト



 この者たちの活躍によって無事クエスト達成となった。



 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎



 「やられたね。」


 ガルは帽子に触れながら、ぼそっと呟く。


 「これは、予想外でした。」


 リリアーナは顔を悪くし、ジークスはとても悔しそうな表情をする。


 「クソっ!!やっぱり行けばよかったぜ!!」


 ジークスは八つ当たりで屋根をガッと蹴飛ばすと、建物が何件か崩れ落ちた。それを見てガルは


 「こら、ジークス。やめなさい。」


 「『神の使徒』やらなんやら知らねぇけどよぉ!!俺は止めたあんたを恨むぜ」


 ジークスはガルを厳つく睨んだ。


 「分かった。次はもう止めないよ。だから落ち着いてくれ」


 ガルがそう言うと、ジークスは舌打ちをして座り込む


 「んで、これからどうすんだ??」


 「レックスに報告しなきゃだね。多分、しばらくは活動禁止だ。」


 「まぁ、そうなるわよね。ひとまずアジトに戻りましょう。それからこれから先のことを話し合いましょ」


 リリアーナはそう言うと、移動魔法の魔法陣を発動させる。リリアーナからジークスが魔法陣に続き、最後にガルが魔法陣を通ろうとした瞬間、ギルドに向かおうとしている馬車を見て


 「『神の使徒』よ。お前がどんなに足掻こうが、勝つのは私たちだ。」


 そう不気味に微笑みながら魔法陣へと通って行った。


 

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