41話「あのモンスターは……⑦」
最近、暑くなりましたね。熱中症には気を付けましょう。塩分しっかりととってくださいね
ハッとハヤトは我に返ると、視界に写ったのは永遠と続く闇の世界だった。360度見回しても暗い闇。
「ここのどこかにチアキちゃんが………」
ハヤトはそう呟いて、ゆっくりと歩いてみる。
そして、次第に歩いているとどこからか声が響き渡る。その声を聞こえてる方に向かってハヤトは走り出した。
ーーーークるしイ………
ーーーーたスけて
ーーーーシニタクナイ
ーーーーハヤク、だれカ
ーーーーイや
ーーーーいたイヨ
ーーーーもうムり
ーーーーコロさなイデ
ーーーーどウシて、私ガ??
ーーーークラクテ、こわイ
ーーーーハヤトさん…………タスケテ
「よ、チアキちゃん。久々。」
ーーーーエ………??
どす黒いモヤに縛られていて、体操座りをしている少女は、驚き、ゆっくりと振り返る。そこに居たのは、自分が最も助けに来て欲しかった1人の青年だった。その青年は汗を滝のように流しながらも、ニカッと笑いこう呟いた。
「待たせたな。助けに来たぜ」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
『僕が繋を発動し、君をチアキさんの精神の中に侵入させる。』
『そんなことできるのか??』
ハヤトは少し驚いた表情をしてイオリの方を見つめる。
『あぁ、僕はこう見えて優秀な魔導師だからね』
イオリは胸を張ってそう答える。ハヤトはイラッとしたが、状況が状況なので何も言わないことにした。
『チアキさんの精神の中に入ったら、きっと呪いに苦しんでいるチアキさんがいるはずだから、チアキさんが呪いに勝てるよう君が彼女のサポートに入ってくれ』
『分かった。因みに、制限時間とかある??』
『そうだね、よくて5分だ』
イオリは手のひらをパーにしてハヤトに突き出す。すると、ハヤトはニコッと笑い、自分もパーを作りイオリのやつと重ねる。
『十分だ。カップラーメン作って待ってな』
この言葉にイオリの頭の上には「?」をつきながら、首を傾げる。
『カップラーメン??なんだい??それは』
『3分で作れる魔法な料理だよ。今度、作ってやるよ。』
そう言って、ハヤトは走り出した
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「見ない間に凄く変わったね。イメチェンした??」
ハヤトは無表情にこの状況の中で呑気な言葉を出す。
ーーーーどうシて…………
「どうしてって、チアキちゃんが俺に言ってきたんじゃん。助けてって。だから来た」
ーーーーッッ!?
どす黒いモヤのせいで、囚われているチアキの表情は見えていなかったが、驚いていることだけはハヤトは分かった。
ーーーー見なイデ下さい………、こンな姿、はヤトさンに見ラれたくナい
好意を抱いている男性に、今の自分の醜い姿を見られている。その現状をチアキは受け入れることが出来なかった。しかし、ハヤトは手をブンブン振って
「いやいや、無理無理。こんな姿って言ってるけど今の君、どんな状況か教えてあげようか??Sランク冒険者にボコボコにされた挙句、亀甲縛りに氷漬けにされてんだよ??それに比べたら全然可愛いもんだよ」
ーーーーそンナの、嘘!!絶対ニ醜イっテ思ッてル!!
チアキを縛っている黒いモヤが大きくなり、ハヤトに襲いかかる。ハヤトは、直感でやばいと感じ、バク転しながら黒いモヤを躱し、距離を取る。
「チアキちゃん!!」
体勢を整え直し、再びチアキの側へと向かおうとしたが
ーーーー来ナいデ下さイ!!
「ーーーーーー!!」
ーーーーもウ………、イイでス。
「え?」
すすり泣くような嗚咽を交じりながら、チアキはハヤトに言葉を投げかける。確かに、ハヤトに助けて欲しいと願っていたが、本当に来るとは思ってもいなかった。こんな、醜い自分の姿をこれ以上、ハヤトに見られたくない。見られるくらいだったら死んだ方がマシだとチアキは思った。
ーーーーさイゴにハヤトサんに会えタだけデ私ハ幸セです。だから…………
「チアキちゃん…………」
ーーーーワたシをコロし…………
チアキが言葉を話している途中に、温かい感触が急に襲い掛かった。
ーーーー!??
チアキは突然の感触に混乱をするが、改めて見ると、ハヤトがチアキを優しく抱きしめていた。
ーーーーハヤとさん!?
ハヤトに抱きしめられていると、理解したアキラはテンパりながら、黒いモヤを暴走させる。しかし、その黒いモヤによってハヤトの身体中は切り傷を負い血を流すが、それでもハヤトはずっとチアキの事を抱きしめていた。そして、ハヤトはゆっくりとチアキに話しかける。
「なぁ、チアキちゃん。俺たちが初めて会った時のこと覚えてる??」
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「何これ??あんた、料理ナメてんの??」
チアキがスズランで働く前の店で働いている時、料理が不味いと不評でよく料理長に怒られていた。そして、今日もいつも通り料理長に怒られていた。
「こんなん、商品にならんわ。早く捨てて来て。そして、そのままあがりな」
「……………はい。」
内心、チアキは悔しがっていた。幼い頃から料理人になろうと思っていたが、ここまで辛いものだと思っていなかった。そして何より、自分が作った料理を捨てるのが1番辛かった。なので、チアキは目に涙を流しながら、帰る支度をして料理の皿を持って店の裏にあるゴミ捨て場に行こうとした。
「ん??」
ゴミ捨て場の隣に、1人の青年が座っていた。青年は凄くやつれていて、ボロボロだったが、見た事のない分厚そうな黒い上着に黒いズボンを着ていて、不思議な格好をしていた。
「ねぇ」
「ひゃい!?」
チアキは青年に声をかけられ、ビクッとなった。青年は無表情でチアキに
「それ、捨てるの??」
「え?あ、はい。どうやら、不味いみたいで…………。勿体無いんですけどね」
「じゃあ、それちょうだい」
「え?」
チアキは目を丸くし、ポカンとする。
「だって、捨てるんでしょ??だったらちょうだい。俺、ここ最近なんも食べてなくて今凄く腹減ってるし」
「え、でも不味いですよ??」
「口に入るものだったら何でもいい。とりあえず、くれるのかくれないのか早く決めてくれ」
ぐぅぅぅぅぅ!!と青年の腹から大きな空腹音が聞こえてくる。相当お腹がへっているようだった。
「そ、それじゃあどうぞ。不味くても吐かないで下さいよ??」
チアキはそう言って、自分が作った料理の皿を青年の側に置く。青年はすぐにその皿を手に取り、むしゃむしゃと口に運ぶ。そして、あっという間に料理を完食させた。
「ど、どうでしたか??」
チアキはドキドキしてその青年に聞いた。すると、青年は無表情でチアキの方に皿を渡し
「確かに、不味かった。俺が作った方がマシ」
ガーンとチアキは顔を青くして口をポカンと開ける。正直いって、お世辞でも美味しいと言ってくれると期待していたが、普通に不味いと発言されてしまった。もう、自分には料理としての才能がないという事をチアキは実感しなが、皿を受け取ろうとすると
「けど……………」
今まで無表情だった青年は初めてニコッと笑い
「また、食べてみたいと思う味だった。だからまた作ってよ。」
また、食べてみたい
この言葉を聞いたのはチアキにとって生まれて初めてのことだった。
ハッとチアキは我に返ると涙を流していた。咄嗟に口に手を抑えても止まらなかった。今までは不味いとしか言われていなかったチアキにとってこの言葉は救いだった。
青年はゆっくりと立ち上がり、チアキの頭をぽんぽんと撫であと、ギルドのある方へと歩き出した。
「あの!!君の名前を教えて貰ってもいいかな??」
チアキはその青年の名前を知っておきたかった。すると、青年はチアキの方へと振り向き
「俺の名前は大空 隼人。ハヤトでいいよ。今度はちゃんとした客として食べに来るよ」
そう言って、ハヤトと名乗る青年は手を振りながら歩き出した
「ハヤト………さん」
本人は気づいていなかいが、恐らくここからチアキはハヤトという青年に好意を抱き始めた。
そして、チアキはこの日を境にして料理人としての才能が開花した。チアキの料理を目的として来る冒険者も増え、さらには来月オープンする有名な料理人が開く『スズラン』の店に専属スタッフとして推薦され、働くことになった。
『スズラン』に働き始めて3年が経過したある日のこと。
いつも通り、繁盛して忙しくチアキは働いている中、カランカランと新規のお客さんが入ってきた。チアキはその新規をで向かおうと入口付近に行くと
「いらっしゃいま…………」
「あれ??あんたあの時のお姉さんか??」
チアキの目の前にいたのは、無表情で低ランク装備を身につけているあの青年、ハヤトだった。
「ハヤト………さん??」
「今はここで働いてるんだ。ここって料理が美味い人しか集まってない場所って聞いたけど、お姉さん頑張ったんだな。今度はちゃんと客として来たぜ」
ハヤトはあの時と同じ笑顔でそう答える。
ーーー頑張れたのはあなたのお陰ですよ。
そう心の中で呟いて、ハヤトにバレないように涙を浮かべながら席へと案内した。
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忘れるわけない。あの思い出があったからこそ、今の自分がいるのだから。
「実はさ、俺、まだあの時のお礼を言ってなかった。だから言わせてくれ。…………ありがとう。」
ハヤトが真剣な表情で、チアキを見つめる。
「これから先もチアキちゃんの作るご飯、俺は食べたいよ。だから、殺してとかそんな悲しいこと言わないでくれ」
ーーーーッッ!?
「それに、あんたは俺を救ってくれた大切な人なんだよ。そんな人が苦しんでるんだ。助けないわけないだろ」
ハヤトが言葉を出す度にチアキを縛る黒いモヤはだんだんと緩み始めると同時にほぼ諦めていた「生きる」という希望を徐々に持ち始めた
「だからさ………今度はちゃんと、俺に面向かって言ってくれよ。な??」
この言葉でチアキはハヤトの顔を見る。恐らく今のチアキの顔は黒いモヤがかかっている上に涙や鼻水で相当ひどい顔をしているはずだ。それでもチアキは声を絞り上げた。
「ハヤトさん、私を助けて下さい」
この言葉でハヤトはチアキを自分の胸へと引き寄せると
「その依頼、引き受けた!!さっさとこんな薄暗い場所、一緒に抜け出そうぜ!!」
と、あの時と同じ笑顔でそう呟いた。
『繋』の残り時間、あと1分21秒。
次回、このシリーズ終わる予定です
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