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40話「あのモンスターは……⑥」

 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 Sランク8位の冒険者、リュウが先頭に走り出し、イオリの魔法が解け、咆哮を上げているキングオーガの方に向かって走り出した。


 ーーーーー


 『リュウさんは『音撃』を発動してキングオーガの動きを最小限に抑えてくれ。』


 イオリがリュウに向かってそう伝えると、リュウは髪を掻きながら


 『それは構わないが、やつは聴覚を失っているんだぞ??効果は低いぞ??』


 『君の属性スキルはそんなもので終わるものじゃないだろう??』


 イオリが意地悪そうに微笑むと、リュウは苦笑いしながら


 『んだよ、そーゆーことか』


 『気づいたみたいだね。それじゃあ、お願いしてもいいかい??』


 『あぁ!!任せろ!!』


 ーーーーー


 「らあぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 リュウはソウルギターをキングオーガの腹に目掛けてぶっ刺した。そして、そのまま


 「属性スキル発動!!」


 と言って、ソウルギターを激しく演奏し始める。


 この時、キングオーガは内心、リュウの事を見下していた。なんせ、もう己には聴覚を失い、『音』に関する攻撃はもはや意味がない。リュウの行動はキングオーガにとっては無駄な足掻きだと思っていた。


 だがしかし、それはキングオーガの間違いな考えだった。



 「グォォ!?」



 突然、キングオーガの身体中が激しく震え出し、苦しみ始めた。一体、何が起こっているのか、キングオーガは分からなかった。


 「イェェェェェェェェェェェイ!!」


 リュウはヘドバンをしながら激しく演奏を続けた。


 なぜ、キングオーガは突然に苦しみ出したのか??それは音の性質によって生じたものだった。音というものは空気を振動させて伝わるものである。しかし、リュウはソウルギターをキングオーガに接触させ、演奏することによって空気の代わりにキングオーガの身体自身を振動させて、音を出していた。それゆえ、キングオーガの身体は激しく震えだし、苦しんでいるのだった。


 「よし!!次のパターンに入るよ!!シュンくん、ジーナさんお願い!!」


 「任されたわぁ」


 「…………了解」


 ーーーーー


 『ジーナさんは幻影であるものを作っていただきたい。』


 『あるもの??』


 頭のてっぺんに「?」を浮かべたジーナに対して、イオリはジーナの耳元でごにょごにょと囁いた。すると、ジーナは大きく笑い出す。


 『アハハ、イオリはんったら厳ついなあ。』


 『いけますか??』


 『全然、ええよ。任しとき』


 ジーナは可愛らしくウインクをして、指でOKサインを出した


 ーーーーー


 「属性スキル発動!!」


 ジーナは属性スキル『幻影』を発動した。ジーナが握っている『青龍』から鎖の幻が出現し、リュウの演奏で苦しんでいるキングオーガの周りをキツく縛り上げた。しかも、その縛り方が、亀甲縛りだった。


 「なぜ、その縛り方!?」


 と顔を赤らめるアキラ


 「イオリはんの指示やもん」


 と照れるような表情をするジーナ


 「あいつ、やっぱりサイコパス野郎だったな。」


 と無表情のハヤト。


 「いや、皆さん亀甲縛り馬鹿にしすぎじゃない??今は卑猥なキーワード扱いだけど、身動き止めるためには凄い有能な縛り方なんだよ??」


 と、イケメンスマイルで弁解するイオリ。


 「いやぁ、あの化け物に亀甲縛りとか地獄絵図だよ。だって、今俺見てられないもん。あれに攻撃しようとしてるシュンくんが可哀想すぎるだろ」


 そう、今まさしく亀甲縛りで動きを封じられているキングオーガに向かって接近しているシュンの姿がいた。


 キングオーガは周りに魔法陣を出現させ、各魔法玉を発動してシュンに攻撃を仕掛けるが、シュンは何気ない表情でネコのように華麗に素早く回避する。


 ーーーーー


 「シュンくんにやってもらいたいことはただ一つ。」


 「……………何?」


 イオリはシュッシュッとシャドーボクシングのポージングをし、


 「キングオーガをボコボコにしちゃって」


 と、イケメンスマイルで答えた。


 イオリの言葉でイオリは可愛しく笑い


 「………………楽勝にゃ」


 とボソッと呟いた。この一言で、ハヤトとリュウとアキラとジーナの胸はズキューンとなった。


 ーーーーー


 「属性スキル発動!!」


 属性スキル『獣化』を発動させたイオリは獣人フォームとなり、メリケンサック『ビースト』を構えてキングオーガの腹に目掛けて連打する。


 「らあぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ズカズカとシュンは殴り掛かる。キングオーガは苦しみの咆哮を上げながら、血反吐を吐きまくる。


 「いいぞ!!シュンくん!!その調子だ!!」


 イオリがそう言って、シュンを応援する。


 「やべぇ、亀甲縛りしてるモンスターを殴りまくるとかどんなハードなSMプレイだよ…………」


 と、ハヤトは誰も聞こえない程度の大きさで本音をつぶやく。


 「このまま畳み掛けるよ!!アキラさん!!」


 「分かったわ!!」


 アキラはユニコーンランスを地面に突き刺し始めた。


 ーーーーー


 『アキラさん、まだ属性スキル打てる??』


 『打ててあと1発ね。』


 アキラはユニコーンランスを見て、そう答える。おそらく、あと1発属性スキルを発動したらアキラはもう行動不可能となる。それに対して、イオリは


 『うん、充分だね!僕のタイミングに合わせて属性スキルを発動させて!!』


 イオリの言葉にアキラは真剣な表情をしながら、


 『分かったわ!!』


 と、威勢よく答えた。


 ーーーーー


 「シュンくん!!離れて!!属性スキル発動!!」


 アキラの言葉でシュンは咄嗟にキングオーガから離れると、ユニコーンランスが突き刺さっている場所から急激に凍り始め、キングオーガの方へと向かっていく。


 そして、そのままキングオーガは氷漬けにされて動くことは無かった。


 「やった……………」


 アキラは弱々しくそう呟いて、バタッと倒れた。すぐ様、リュウとジーナとシュンが駆け寄る。


 「みんな、よくやってくれた!!あとはこっちに任せて!!ハヤトくん、行くよ!!」


 「おう!!」


 氷漬けになったキングオーガに向かってハヤトとイオリが走り出す。


 「このあと、僕はある強力な魔法を発動させる。その後は君次第だよ」


 「あぁ!!任せろ!!」


 ハヤトの言葉を聞いて、イオリは『ホーリーロッド』を構える。




 「じゃあ行くよ!!『(コネクト)』!!」




 イオリが魔法名を呟いた瞬間、ハヤトの視界は真っ暗となった。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「まさか………、そんなことって………」


 イオリが魔法を発動させ、ハヤトが壊れたロボットのようにピタッと動かなくなっている時、それを見届けていたリリアーナは驚きの声を掛ける。


 「おい、リリ姐さん!!あの女は助からないんじゃないのか!!話が違うぞ!!」


 ジークスが怒りの声を上げる。そして、武器である両手剣に手をかけ、


 「もう我慢ならねぇ!!俺は行くぞ」


 「待って!!」


 リリアーナは顔を青くし、ジークスに止めるよう声をかけるがジークスは止まらなかった。



 「ーーーーやめなさい」



 突如、何気ないこの一言が背後から聞こえてくる。しかし、この一言を、聞いた瞬間、恐怖で背筋が一気に凍り、さっきまでやる気満々だったジークスは戦意消失し、両手剣を手放してしまった。、


 振り返ると、そこにはガルがいた。


 「ガルさん………」


 「リリアーナの気持ちは分かる。正直いって、僕も驚いてるよ。………まさか」


 



 「まさか、あの中に『神の使徒』がいるなんてね…………」



 

 と、ガルは呟いていつの間にかかいていた汗を腕で拭った。

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