34話「忍び寄る悪の気配」
明日も仮免のテスト!!今度こそ受かってやる
ギルドから少し離れたところにある霊園に、花束を持ったアキラは足を運んでいた。ここの霊園にある数多くの墓は、ここのギルド出身で、クエスト中に息絶えた冒険者がほとんどだった。
アキラは1つの墓の目の前に辿り着いた。その墓には『ジャン』と刻まれており、隣には彼の武器である大盾『パールシールド』が備えられていた。
ジャンは、アキラを最も尊敬していたAランク冒険者でよく一緒にクエストをしていた。異性としては特に何もない関係だったが、アキラにとって数少ない男性の知り合いだった。その彼は、以前のSランククエストで、アキラの目の前でモンスターに心臓を貫かれ、死んだ。
それ以降、アキラは時々、彼の墓参りをいくようになった。
アキラはまず、その墓に水をかけてあげ、花束を置いた。
「久しぶり、ジャン。最近は来れてなくてゴメンね。ちょっと忙しかったから」
アキラが言葉をかけるが、当然、何も返事は無かった。それを分かっていて、アキラは言葉を続ける。
「あのね、私、Sランク3位になったよ。前のSランククエストが決め手になったんだって。………私は特に何もしていないのにね」
そう。あの絶望的な状況の中、Sランククエストをクリアできた理由は、突然現れた謎のFランク冒険者、ハヤトがいてくれたおかげだったからだ。
「あ、そうそう。最近、可笑しい人がいるの。そいつはSランク冒険者である私以上の力を持ってるのにFランク冒険者をやってるの。本当にバカみたいよね。それでねーーー」
そして、アキラはそのままハヤトに振り回された話や愚痴などを墓地に話しかける。1時間ほど喋っただろうか、アキラは頃合いを見て立ち上がる。
「じゃあ、私、行くね。また来週来るから。」
笑顔でそう言って、アキラはギルドの方へ歩きだそうとした瞬間、
「ハヤトくん??」
両手に花束を持っているハヤトがいた。見た感じ、たった今、ここに来たように見えた。ハヤトはアキラを見た瞬間、気楽に声をかける。
「お、アキラさんじゃん。アキラさんも、誰かの墓参りか??」
「う、うん。ハヤトくんも??」
「おう。昔の知り合いのな。」
「そっか」
「この大盾…………、そうか、この墓はあの時の………」
ハヤトは、『パールシールド』を見て、この墓はジャンの墓だったと認識する。すると、
「ちょっとぐらい分けてもあいつは怒らねぇだろ」
と言って、ハヤトが持っている花束の中から何本かの花を取り出し、ジャンの墓に供えた。そして、一旦花束をアキラに託し、目を閉じて合掌した。
「っし………、ありがとな、持ってもらって」
「いや、別にいいんだけど。」
どうしてあんなことを??と聞こうとした瞬間にハヤトが言葉を出した。
「悪かったな。」
「え?」
「あの時、もう少しだけ俺が早く駆けつけていれば、助かったかもしれない。」
ハヤトは申し訳なさそうな表情をして、アキラに頭を下げていた。それを見たアキラは慌てて言葉をかけた。
「やめてよ。君らしくもない」
「アキラさんの彼氏さんを死なせてしまったんだ。謝るのは当然だろ??」
「え?」
「ん?」
アキラはハヤトの言葉でキョトンとした。
「もう一度言ってくれる??」
「謝るのは当然だろ??」
「いや、そこじゃない。もう少し前のセリフよ」
「アキラさんの彼氏さんを死なせて………」
「いや、ジャンは彼氏じゃないわよ」
「え…………」
ここで、しばらく2人の沈黙タイムが始まった。どうやら、ハヤトはアキラとジャンは付き合っているもんだと思っていたらしい。
「それ、嘘じゃない??」と恐る恐る質問するハヤト。
「嘘じゃないわよ!!ジャンはただの友人よ!!」と顔を赤くして答えるアキラ
「あんた、ショタコンじゃなかったのかよ」
「いや、ショタっていうのがなんなのか分かんないんですけど」
「あ、そう。なら、いいや。とりあえず、ジャンくんの件について謝りたかっただけだからさ。んじゃ、またな。」
ハヤトは逃げるように、たたたっと走り出した。それを見送ったアキラは苦笑いをしてジャンの墓に声をかけた。
「どう?ジャン。あれが、ハヤトくんよ。」
『なんだか、面白そうな人ですね。』
と、もちろん墓からは返事はないが、そう言っているようにアキラは感じた。そして、「また来週ね」と声をかけ、アキラは墓をあとにした。
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綺麗な満月が暗い闇を鮮やかに照らしている夜のこと
帽子をかぶっている1人の男性が誰も近寄らない廃墟の中へと入って行った。その廃墟の中に、2人の男女がいた。
男の方は明らかに人間ではなく、トカゲのような顔をしていた。俗に言うリザードマンというやつだ。そして、女の方はボサボサの赤髪をしており、肌は褐色色で耳が長い。これも俗に言うダークエルフだった。そのダークエルフの女性は入ってきた男性を見て、不気味に微笑み声をかける。
「あら、結構遅かったじゃない。ガルさん」
「あぁ、途中でギルドの冒険者に遭遇してしまってね。全員ぶっ殺してたら時間を食ってしまった。遅くなって済まなかったね。」
ガルと呼ばれている男性は苦笑いをしながら帽子を外し、よっこらしょと椅子に座った。
「リリアーナ、例のあの子は今どんな感じなんだい??」
「順調よ。もうすぐ、覚醒するんじゃないかしら」
リリアーナと呼ばれたダークエルフは胸を張って答える。
「それにしてもリリ姐さんは酷いよな。一般人に、『アレ』を仕組むなんてよ。正直言って頭狂ってるぜ??」
「しょうがないじゃないの、ジークス。私はただ、レックスに頼まれてやったことなんだから。」
ジークスと呼ばれているリザードマンは「またレックスさんか………」と言って顔に手を当て、やれやれとしている。
「彼女が覚醒したら、我々の計画がさらに進むに違いない。それまでは下手に動かず、見守ってあげよう。そうだ、先程殺した冒険者が持っていた美味しそうなワインを持って帰ってきたんだが、2人は飲むかい??」
この問いかけにリリアーナとジークスは嬉しそうに頷く。
そして、ガルは優しそうに微笑みアイテムボックスからワイングラス3つ取り出し、均等にワインを注ぎ、2人にワイングラスを渡した。
「それでは、我々、闇ギルドの成功を祝って乾杯」
闇ギルドの一員であるガルの言葉の後、カランカランと乾いた音が鳴り響いた。
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