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30話「ハヤトのファン」

 ーーーーーーまたか…………


 目を覚ましたハヤトは自分の部屋にあるテーブルに置いてある一通の封筒を見つけ、はぁ〜と深い溜息をする。その封筒の内容は、Sランク冒険者の昇格の申請書だった。


 送り主はもちろん、アキラ。彼女は毎日のように、この申請書を送ってくる。嫌だって言っているのに、送ってくるとは、ちょっとした嫌がらせにも等しい。ハヤトは申請書をスムーズに折り、鶴を作成したあと、ゴミ箱に入れた。


 そして、そのことを朝食の時にアミに相談すると、


 「その()、君のことが好きなんじゃないか??」


 相変わらず眠たそうな表情をしているアミが、パンを咥えながらニヤニヤとしている。ハヤトはパンにバターを塗りながら嫌な顔をして


 「冗談はやめてくれよ、アミさん。」


 「あはは!!君はまだ若いんだ。恋愛ぐらいしたっていいだろう??」


 「俺はあんなロリ体型は興味ないの。どっちかと言うと、アミさんみたいなグラマーな体型が好みなの」


 「……………ベット行く??」


 「行かねぇよ!?ナチュラルに何聞いてんだ!?」


 ハヤトのツッコミで、アミはぷっ、と吹いた。この人とはそこそこ長い付き合いだが、何を考えているのか、ハヤトは分からなかった。


 そして、パンを食い終わり、「ごちそうさまでした」とハヤトは言いながら、いつも身につけている防具を身に纏う。


 「今日は何時ごろに帰ってくるんだい??」


 「そうだなぁ。今日は色々とやることあるし…………。また、連絡する」


 「分かった。ちなみになんだけど………」


 「何だよ??」


 「私、今日排卵日」


 「行ってきます」


 アミのセクハラ発言を真顔でスルーして、そのまま宿を飛び出した。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「おう!!ハヤトじゃねぇか!!久しぶりだな!!入院以来か??」


 「トラさん!」


 ハヤトは、ギルドに行く途中、トラに出会った。


 ドラゴンに襲われた以降、片腕を失ったトラさんは、冒険者を続けることが困難になったため引退した。その後は、小さい道場を開き、子供たちに剣を教えている。低ランクながらもトラさんは剣の扱いは一流だったので、ピッタリなはずだ。


 「道場の方はどう??」


 「そこそこだ!!教え子もちょっとずつ増えてきて楽しいぞ!!」


 「お~、それは良かったな」


 「もしかしたら、お前に手伝ってくれるようお願いするかもだからよろしくな」


 「いいよ。その代わり、娘さん、嫁として貰うけどいい??」


 「何で!?」


 「ハハ、冗談だよ。いつでも呼んでくれ」


 「ったく………ありがとな。………っともう時間だ。またな、ハヤト。今度飲みに行こうな。」


 「了解!!」


 ハヤトとトラは微笑みながらハイタッチして、別れた。一時はどうなるかと心配したが、もうその必要は無いようだ。


 そのままハヤトは気持ち良い気分でギルドの方へと向かった。


 ♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎


 「あの………ハヤトさんですよね!?」


 ギルドについた瞬間、1人の女の子がハヤトに話しかけて来た。顔はキリッとした顔たちをしており、身長はなかなか高く170前後。髪は金髪でポニーテール。そして、誰もが二度見ぐらいしてしまうほどのボンキュッボンの体型していた。ちなみにハヤトは四度見した。


 「そ、そうだけど」


 「大ファンなんです!!」


 「は?」


 ハヤトは口をぽかんと開けて唖然した。


 そりゃあそのはずだ。ファンがいるのは大抵、高ランク冒険者の美男美女のみ。それに対してハヤトは、最低ランクのFランク冒険者であり顔もそこまで良くはない。


 「私、フェイっていいます!!是非、私と決闘して下さい!!」


 フェイと名乗った女の子は目をキラキラさせながら、頭を下げた。


 「おい………、あのAランク7位のフェイさんが決闘申し込んでるぞ!!あの男、一体………」


 「馬鹿野郎かお前は!!あれは『アンチドラゴン』のハヤトだぞ!!」


 「これは面白いのが見られそうだ!!おいマスター!!酒おかわりだ!!」


 周りの冒険者たちが次々と騒ぎ始めた。


 ハヤトは、髪を掻きながら申し訳なさそうに


 「ごめん、今日は少し多忙でな。また今度誘ってくれ」


 と、お断りの返事をした。フェイは、表情を変えなかったが、周りの冒険者たちはブーブーと不満をぶつけてきた。


 「そうですか、残念です。」


 「本当にごめん」


 「分かりました。では、また後日に改めて決闘の方、お願いさせていただきますね!!」


 フェイはペコッと頭を下げて、とっとっとっとハヤトの前から去って行った。素直に受け入れたフェイの姿を見て、ハヤトはいい子だなぁという印象を与えた。どこぞのしつこいSランク3位の冒険者とは大違いだ。見習って欲しい。


 さぁて、とハヤトは周りの暴言を無視してクエストボードの方へと向かう。


 クエストボードの前に立ち、張り出されている依頼の内容を1つずつ読んでいると、


 「ん?」


 1つのクエストが目に止まる。


 「これは………」


 ハヤトはそのクエストの張り紙を剥がし、ダッとギルドを走り回る。そして


 「あ、見つけた!!」

 

 「え!?」


 ハヤトが探していたのは、先程決闘を申し込んできたフェイだった。急に現れたハヤトに対して驚きの表情をしていた。


 「ちょっと来て!!」


 「え!?」


 フェイの腕を掴んで、ハヤトは強引にフェイを連れ出す。


 「ちょ………!?一体なにを……」


 混乱しているフェイは、強引にハヤトの手を解こうとするが、力が強すぎてビクともしなかった。


 そして、ハヤトは受付の方に行き、受付のお姉さんに剥がしたクエストボードを見せたあと




 「これ、お願いします。この子と一緒で」




 と、ハヤトは無表情で言った。


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