28話「アキラとコリン前編」
シリーズ系多いな笑
「来年に必ずここに帰ってくるわ。じゃあね」
ランは笑顔で、見送りに来てくれたみんなにそう言って、旦那さんと一緒に馬車に乗ってマーガル王国を出ていった。なんだか呆気ない感じだったが、それこそがランらしくて良いとアキラは思い、ポロッと出た涙をグイッと腕で拭いた。
「行っちゃったな」
ちゃんと見送りに来た無表情のハヤトがアキラの側でボソッと呟いた。
「どうしたの??そんなにランがいなくなって寂しい??」
「何言ってんだよ。寂しいのは、あんたの方だろ??」
「はは、それは間違いないや」
やばい………、とまたちょっと悲しくて涙が出てきそうになったアキラを見たハヤトは、はぁ〜と溜息を吐き、
「このあと、コリンに稽古付けるんだけど暇だったら来る??」
ハヤトは無表情でボサボサと髪を掻いてアキラの方を見ていた。ハヤトの予想外な行動にアキラは目を丸くした。
「どうしたの??今日のハヤトくんちょっと変だよ??」
「まぁ、ずっと一緒にいた奴と離れる気持ちは俺にも分かるからな。んで、どうすんの??来るの?来ないの??」
「………もちろん、行くわ。コリンちゃんと手合わせしてみたい」
アキラの言葉を聞いて、ハヤトはニタァと不気味な笑みをこぼした。
それを見た瞬間、アキラは背筋が凍った。
「な、何よ??」
「いやぁ〜、ちょっとアキラさんにお願いがあってだなぁ〜」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「あの男!!本当にありえないわ!!」
アキラは顔を真っ赤にして、怒っていた。
「アキラさん、落ち着いて下さい」
そんな怒っているアキラを慰めているのは、ハヤトの弟子、コリンだった。
「コリンちゃんも可笑しいと思わない??普通、自分の弟子の稽古を他人に押し付ける!?」
そう、ハヤトは元々、今日1日はコリンの稽古を見る約束をしていたが、入院が影響で溜まりに溜まっていたFランククエストのノルマの最終日が近くなっているということで、ギルドの方から忠告が来たらしく、コリンの稽古を見てあげれないので、それを全部アキラに押し付けたというのが今の現状だ。
「まぁ、師匠にも事情があったのですし………」
「コリンちゃんは本当にいい子だねー。師匠があの男っていう以外は完璧だよ」
「そんなこと無いですよ!!師匠は凄い人です!!」
ハヤトくんになると、熱くなるコリンの姿を見ているとスズランに働いているあの女の子を連想させてしまう。なので、もうハヤトくんを攻める言葉は辞めようと思ったアキラはコリンの方に近づき
「じゃ、稽古の方やろっか。」
「アキラさんに稽古をつけてもらえるなんて夢みたいです!!本当にありがとうございます!!」
「いいって。まず何やる??」
「あ、じゃあウォーミングアップとしていつもやってる奴やってもいいですか??」
「いつもやってるやつ??」
「はい!!師匠に教えて貰ったんです。」
「ふーん。どうぞ。」
アキラのお許しを出たコリンは、ペコッと頭を下げたあと、奇妙な行動をし始めた。
腕をぶんぶんと振り回したり、腰を捻ったり、膝を曲げて屈伸したりなど、見たことの無い動きをし始めたのでアキラは少し心配し、
「コリンちゃん、何やっての??」
「『じゅんびたいそう』というものらしいです。激しい動きをする前にはこれをやれって師匠が………」
「それ、やる意味あるの??」
「って思うじゃないですか!!最初は私もそう思ったんですけど、いざやってみたら凄いんですよ!!身体がいつもよりスムーズに動けるし、終わったあとも身体が痛くないんですよ!!」
ここまで、コリンが絶賛するなら、効果はしっかりとあるように見える。アキラも興味を持って、コリンを見ながら同じ行動をとり始める。コリンも嬉しくなって、色々と教えながら、2人で一緒に準備体操の方を行った。
「確かに、身体が少し軽くなった気分ね。」
準備体操をある程度終わらせたアキラは、準備体操の効果を身にしめて実感した。特に疲れることなく最小限の動きをしただけでこんなに違うものなのか、と思いこれからはアキラもやることを決意した。
「ハヤトくんって一体なんなの……」
アキラはボソッと呟いた。ハヤトはアキラ達が知らなかったことをこれまでに何回か行っている。アキラの中でハヤトという存在がなんなのか、哲学みたいな考えになっていた。
「師匠は師匠です!!」
コリンが、ズバッと言い切ると、アキラはぷっ、と吹き出した。本当にコリンはいい子だ。彼は本当にいい弟子を持ったみたいだ。
「そうね、ハヤトくんはハヤトくんよね。」
「アキラさんは、師匠の事が好きなんですか??」
コリンの唐突の発言に、アキラはびっくりし、
「ヴぇぇ!?どうしたの、急に!?」
「だって、アキラさん。さっきから師匠のことしか言わないじゃないですか??だから好きなのかなぁって思って」
「いや、ないないないない!!ハヤトくんのことなんてこれっぽちも…………」
よくよく考えてみれば、アキラは仲の良い男性はそこまでいなかった。ハヤト以外で仲の良かった男性は強いて言うなら、Sランクの男性陣か自分を慕ってくれていたジャンぐらいだった。
「結婚かぁ………………」
アキラは物思いにふけていたら、無意識にボソッと呟いていた。当然、コリンはこれを見逃さない。
「結婚!?アキラさん、師匠と結婚するんですか!?」
「はぁ??急にどうしたの??」
「いや、今結婚って………」
「そんなこと言ってないわよ。ちょ、落ち着いて!!」
こうして、アキラはきゃー、きゃー言うコリンに誤解を説くのにとても苦労した。この子、真面目そうに見えて案外乙女だったんだなぁ、とアキラは苦笑いしながらそう思った。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「ごめんなさい。アキラさん。私、勘違いしてたみたいです」
「別に気にしてないわよ。ささ、気を取り直して稽古しましょ」
「はい!!」
元気よく返事したコリンは、アイテムボックスから木刀を取り出し、素振りの方を始めた。
「へぇ、様になってるね」
「ありがとうございます!!けど、まだまだです!!」
「いつもどれくらい振ってるの??」
「ざっと1万回ですかね」
「1万回!?」
アキラは驚愕した表情となる。確か、コリンは10歳のはずだ。幼いのに、1万回も振るとか狂気の沙汰じゃない。
「辛くないの??」
「最初は辛かったですけど、今は減っちゃです。これくらいやらないと、Sランク冒険者になれませんから」
一旦、振るのをやめて、タオルで汗を拭いながらニヒッと可愛らしく笑った。そしてすぐに素振りを再開させた。
この子だったら、近いうちにSランク冒険者になれるかもね、とアキラは確信した。
2時間ほど経過した後、1万回を終わらしたコリンは次に走り込みもしているようなので、アキラも一緒に走ることにした。
「やっぱり、これも1万往復とか??」
「はい!!」
「ハヤトくんの言う通り、努力の天才だなぁ」
こちらも2時間ほどかけて、1万往復を終わらせる。アキラは正直言って、もう体力の限界が近づいていたが、流石は毎日行っているだけあってコリンはケロッとしていた。
「いつもはここで1時間休憩とって、後は最後まで決闘しています」
アキラはぜぇぜぇと言いながら「じゃあ、そうしよう。」と言ってバタッと日陰で横になった。Sランク冒険者に憧れている子の前ではみっともない姿だったが、コリンは何も言わずアキラの隣に座って水分補給をしていた。
「そういえば、決闘トーナメントのこと聞いた??」
「はい!!本当に楽しみです!!」
昨日の食事会の帰り道でコリンはハヤトに決闘トーナメントのことを聞いたらしい。
「これで、もし結果を残したらギルドの方から声をかけてもらえるかもしれないわね」
「本当ですか!!」
「うちのギルドは強い冒険者が好きだからね。きっとコリンちゃんの活躍する姿を見たら欲しがるわよ。」
「わぁー!!こうしてられない!!私、今から10万回素振りして来ます!!」
「そこまでしなくていいよ!?今はゆっくり休みな!?」
こんなやり取りをしていたら、あっという間に1時間が経過した。アキラもすっかりと体力も回復し、再び2人で準備体操を行った。
「よし!!じゃあ、私と決闘する??」
「はい!!よろしくお願いします!!」
ペコッと頭を律儀に下げたコリンは素早くアキラと距離を取り、アイテムボックスから木刀ではなくライトソードを手に取る。ライトソードを見たアキラは流石、ハヤトの弟子だな、と思い笑みをこぼす。
「どっからでもかかって来ていいよ!!」
と言って、アキラはユニコーンランスを手に取り、構えた。
「はい!!じゃあ、遠慮なく!!」
真剣な表情となったコリンはダッ、とアキラの方に駆け出した。
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