21話「S会議の前日の夜」
S会議を前日に控えたとある日の夜のことである。
「お腹減ったなぁ」
グーとお腹が鳴っている腹を抑えて、アキラはぼちぼち道を歩いていた。朝からずっと、気になっていたBランククエストをしていたので何も食べていなかった。
「よし!!今日はここに食べに行くか」
アキラは適当にすぐ側にある飲食店の中に入った。すると、女性の従業員がアキラに近づき
「いらっしゃいませ。1名様ですか??」
「はい」
「かしこまりました。あちらの席でお待ちください」
女性の従業員に誘導された席に座ったアキラはテーブルの上に置いてあったメニュー表を取り、何を食べるか決めようとしていた。
どうやら、この店では『ロックバッファロー』の唐揚げが1番人気のようだ。朝から何も食べてないアキラにはピッタリな料理だった。
「ん?」
ふと、メニューから目を外し壁の方に目線を移すと
『今日だけの特別メニュー:チャーハン』
と書かれている紙が貼られていた。チャーハン………。これまでに生きていて聞いたことのない料理名だった。気になったアキラはこれも頼もうと決意して、「すいませーん」と従業員を呼ぶ。
「へーい、すぐ行きまーす」
「んん!?」
何やら聞いたことのある声が、聞こえてきた。そして、見覚えのある1人の男性が、ハヤトの席へとやって来る。アキラは目を丸くして
「ハヤトくん!?」
「お?アキラさんじゃん。いらっしゃい」
アキラの席にやって来たのは、間違いなくハヤトだった。いつも装着している防具ではなく、普段着らしきTシャツの上にこの飲食店のエプロンを着ていた。
「ここで何してんの!?」
「実はさ俺、冒険者やめてここで働くことにしたんだ」
「えぇ!?」
明日、大事な会議あるんですけど!?とツッコミを入れた瞬間、先程アキラを出迎えてくれた女性の従業員が慌てて近づき、「嘘つかないの!!」と言ってハヤトにチョップをいれた
「すみません、お客様。今日はですね、たまたま従業員が急病で来れなくなってしまいまして………、Fランククエストとして今日1日従業員として急募したらハヤトくんが受けてくれたんです。」
「なるほど」
Fランククエストならば、納得がいく。ハヤトは最近まで入院生活を送っていたのだ。ならば、Fランク冒険者のクエストノルマが当然溜まっているはずだ。
「明日出席しないと俺、呪いで死ぬしな。めんどいけど、明日の会議はちゃんと出るよ」
そうだった。ハヤトはギルト長の狙いでイオリに呪いをかけられていたのだ。だから、下手にドタキャンすることは出来ない。
「んで、アキラさん。注文決まった??」
「あぁ!!そうね!!ロックバッファローの唐揚げとこのチャーハンっていうやつお願い」
「お!アキラさん、いいねぇ!!チャーハンイッちゃう??」
チャーハンという単語に、やけにテンションがあがったハヤト。
「このチャーハンって何なの?」
「俺が故郷で食べていた料理だよ。なんとなく、暇な時に作ってみたら店長に大絶賛で今日だけのメニュー化になった。」
「ふ〜ん、ハヤトくん、料理できんの??」
「少なくともアキラさんよりはできる」
「はぁ!?」
眉間にシワを寄せたアキラに対して逃げるようにハヤトは「かしこまりましたぁ」とニヤニヤしながら言って厨房の方へと向かった。
確かに、アキラは料理はできない。以前に、自炊をしようとしたら住んでいる家が燃えかけた。それ以降、料理はしていない。
そもそも、ハヤトは料理をするのか??と、疑問に思ったアキラはこっそりと厨房の方へと覗いてみる。
「!?」
ハヤトは、無表情で野菜を器用にスパパパパと微塵切りにしてそのままフライパンに入れ、豪快に炒めていた。
これを見ただけでアキラはハヤトは普通に料理ができる男と察した。
アキラはしょぼんとしながら席に戻り、水をズズズと飲んで料理を待った。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「お待たせしま………どした??」
「別にぃ」
両手にいい匂いをする料理が乗っている皿を持ったハヤトはアキラの元へとやって来るが、アキラはテーブルに顔を埋め、拗ねている感じだった。
ハヤトはわけが分からず首を傾げながら、料理をアキラのテーブルの上に乗せ、「ごゆっくり〜」と言って、再び厨房の方へと戻って行った。
いい匂いが鼻の中に入る度にお腹が鳴る。
そろそろ、食べるか………と思ったアキラは料理の方へと目線を移る。
ロックバッファローの唐揚げのは見たまんま唐揚げだったが、チャーハンは予想してたのと違ってご飯系の料理だった。とてもいい匂いがする。
「まずは唐揚げを」
唐揚げを1個取り、口の中に入れる。
外はパリッと、中はジューシー。これぞ、唐揚げ。美味しすぎて疲れきっていたアキラの身体が喜びの悲鳴をあげているのかが分かった。
「次はチャーハンを…………」
スプーンでチャーハンを取り、口の中にバクッと入れる。入れた瞬間、アキラは目がカッと開く。
米の1粒1粒の存在感があり、お肉がとてもぷりぷりしていてニンニクやネギの匂いもいい感じにマッチしていた。
何コレ!!すっごく美味しい!!
アキラは次々と、チャーハンを口の中に入れる。途中に、唐揚げを口の中に放り投げる。
あぁ、ここに酒があったらどんだけ幸せなのだろうか。てか、もう夜遅いし、頼んじゃおうかな………、うん!頼もう!!
アキラは手を挙げて従業員を呼ぶ
「すいませーん、生1つくださーい」
「かしこまりました。ハヤトくん!生いっちょ!!」
「うーい!」
そして、間もなくハヤトがビールを持ってアキラの方へと向かう。
「どーぞ」
「ありがとう。このチャーハンっていう料理とても美味しいわね」
「当たり前だろ?俺が作ったんだから」
ふふんと、ドヤ顔で胸を張るハヤト。
少し腹立つけど、唐揚げとチャーハンとお酒が美味しいから何も言わないでおこう。
「ハヤトくーん、今日は助かったわぁ。もう大丈夫よ〜。お疲れ様〜」
女性の従業員が、時計や周りの状況を見てハヤトに言う。
「了解。お疲れ様でした。」
ハヤトは、女性の従業員に頭を下げて、エプロンを外しながら厨房の中へと入っていった。
ハヤトが居なくなったので、これからは1人で有意義にこの料理を楽しむか………と、思っていたアキラだったが
「ねぇ」
「なに?」
「どうして、ハヤトくんは相席に座っているのかな??」
いつの間にか、ハヤトが戻って来ておりアキラの相席に座っていた。
「いや、このクエストの報酬で勤務後は何食ってもいいらしいからさ、折角だからアキラさん一緒に食べようぜ。明日のことについて色々聞きたいし」
「それだったら、別にいいけど」
「うし!店長!!俺はグランドバードの唐揚げにビッグピッグのカツカレー大盛りで。あと、しゅわしゅわコーラ」
「あいよー。少しだけ、待っててね」
「あ、じゃあ私も唐揚げと生追加で」
「唐揚げと生追加ね。あいよー!!」
そして、少し時間が経ったあと、2人のテーブルの上には注文した料理が並んでいた。ハヤトが頼んだ料理も美味しそうだった。
「んじゃ、アキラさん、乾杯」
「ん」
しゅわしゅわと泡がはじけているコーラが注いであるグラスと、ビールが注いであるグラスを軽く当て、カランといい音が響いた。
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