20話「フィーラとデート」
ギルトから少し離れたとある広場にある噴水で、ハヤトは珍しく防具ではなく普段着を着て誰かを待っているかのように立っていた。そして、しばらくすると、
「遅れてすみません。待たせましたか??」
「いや、俺もちょうど来たところだから大丈夫」
いつも見ているナース衣装ではなく、可愛らしいピンクのワンピースを着ているフィーラが慌ててやって来た。
ハヤトとフィーラという珍しい組み合わせだが、今日は前にフィーラの機嫌をとるために約束したスイーツパラダイスの日だった。一流パティシエが集うイベントで、全国の美味しいスイーツが食べれるらしい。
その美味しいスイーツをフィーラに全部奢ってあげるのが、今日のハヤトの役割である。
「さぁ、早く行きましょ。」
「嬉しそうだな」
「当たり前じゃないですか。今日の日のために溜まっていた仕事を終わらせてきたんですから。昨日の夜は眠れませんでしたよ」
「遠足前日の子供みたいだな」
とりあえず、なんやかんやでフィーラは今日という日を楽しみにしていたらしい。
ならば、その期待に応えなければならない。
「んじゃ、行きますか。」
「はい」
ハヤトとフィーラは、スイーツパラダイスが開催されている場所へと向かった。
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「人多っ!!」
スイーツパラダイスの開催場所へ近づいていくと、どんどん人混みが多くなってきた。このままでは、ハヤトとフィーラが離れてしまうのは時間の問題だろう
「ほい」
フィーラと離れないようにするため、ハヤトはフィーラに手を差し出す。
フィーラはキョトンとしていた
「何のつもりですか??」
「こんだけ人多かったら、もし別れた時に大変だろ??だから………な??」
「確かに、そうですね。」
フィーラはそのままハヤトの手を繋いだ。フィーラの手は小さくてなんだか温かった。
「ここまでしたんですから、ちゃんと私をエスコートして下さいね??」
「はいはい。………おっと、あれじゃないか??」
ハヤトはもう片方の手で前に指を指した方向には色々な出店っぽい建物が並んでいた。甘いいい匂いが漂ってくる。
すると突然、指を指している腕のもう片方の腕………すなわちフィーラと繋いでいる方の腕が勢いよく前の方に出た。
フィーラが一気に出店の方に向かって走りだしたのだ。
「フィーラちゃん!?」
「ハヤト様、もうここは戦場です。急ぎましょう」
「ちょ、痛い痛い痛い!!肩外れるぅぅ!!」
フィーラは無表情ながらもなんだか真剣な表情で勢いよく前の方に進んでいく。周りの人達………主に女性陣もフィーラと同じ真剣な表情で前の方に進んでいた。
ちなみにハヤト同様、同行している他の男性陣の皆様も相方の女性に引きずられていた。
そのうち、1人の男の人と目が合った。
『いいか??今日の俺たちは人間じゃない。この娘の財布だ。それだけ忘れるな』
みたいなメッセージを送ってくるような目線を向けてきた。どうやら、ベテランの方のようだった。面構えがハヤトと全く違う。全てを受け入れているような顔付きだ。
『先輩………あざっす!!』
とりあえず、適当にこんな感じのメッセージを込めた目線を送ると、その男の人は満足したかのように頷き、そのまま引きずられて人混みの中へ消えた。
じゃあな、先輩。またどこかで会えるといいな。
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「ハヤト様、まずはここです」
しばらく引きずられたあと、お洒落な雰囲気を漂わせている出店へと到着した。むき出しになっているガラスケースの中には美味しそうなスイーツが並んでいた。
フィーラによると、ここのパティシエは世界で5本指に入るほどの実力の持ち主らしい。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか??」
「えぇと、『ブリザードストロベリーショートケーキ』を下さい。」
「じゃ、俺はこの『マグマストロベリーショートケーキ』を。あと、ウーラン茶も」
「かしこまりました。」
従業員の方がガラスケースから、ブリザードストロベリーショートケーキとマグマストロベリーショートケーキを取り出し、箱の中に皿とフォークセットで入れてハヤトとフィーラに渡した。
値段はなんと2個で4500エン。ハヤトは値段を見た時に口をあんぐりしてしまっていた。
「じゃ、適当なところ座って食べようぜ」
「何言ってるんですか??まだですよ??」
「はい?」
フィーラは、出店が並んでいる方に指を指し、無表情ながらも目をキランと輝かせて
「ここ全スイーツ店のスイーツを全部買ってからに決まっているでしょう??」
ドドン!!と、効果音をつけたくなるような感じで言葉を出す。ハヤトは顔を青くしながら
「ここ、全部をか??50店舗ぐらいあるんじゃないのか??」
「正確には68店舗です。」
「フィーラちゃん、体重計乗るの怖くなっちゃうぞ??」
「私、何食べても太らない体質なので大丈夫です。さぁ、行きましょう」
「痛い痛い痛い!!だから、肩外れるって!!」
フィーラはガシッとハヤトの腕をつかみ歩き出す。ハヤトは抵抗するが、フィーラの力が強すぎてビクともしなかった。
え?何?女の子ってスイーツに関わるとこんなに戦闘能力上がんの??
ハヤトの苦痛の叫び声が鳴り響いても、フィーラは気にすることなく、次の店へと急いだ。
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長時間に渡るフィーラよるスイーツ狩りを同行させられたハヤトは口から魂的なものを吐き出しながら道中に置かれていたテーブルに座っていた。ようやく、スイーツ狩りが終わったのだ。
「だらしないですね。それでも冒険者ですか??」
「逆にお前の疲れの表情を出してないところに感心するわ。」
「そんなことより、早く買ったスイーツ出して下さい。お腹ペコペコです」
「へいへい。」
当然、68店舗で買ったスイーツは手で持っていけるわけないので、ハヤトのアイテムボックスに入れておいた。
そして、ハヤトは適当にスイーツの入っている箱を取り出して、フィーラに差し出す。
「ハヤト様は食べなくていいんですか??」
「俺は後でいいよ。先食べな」
「では、遠慮なく」
フィーラは、箱かスイーツを取り出して食べ始める。今、食べているのはシフォンケーキだった。
「美味しいです」
無表情ながらも頬をリスみたいに膨らませて、シフォンケーキを頬張るフィーラを見て、ハヤトは爆笑した。医療室にいる時では、絶対に見ることのない姿だった。
「なんでふか??ぶっころひまふお??」
「口いっぱい入れながら物騒な事言うんじゃねぇよ。もう少し落ち着いて食え」
それほど、美味しかったのだろうか、ハヤトの言葉を普通に無視してバクバク美味しそうに食べているフィーラの姿を見ていたら、ハヤトも食べたくなった。
ハヤトはアイテムボックスから、スイーツの箱を取り出して箱からスイーツを取り出す。
ハヤトが取り出したのは、最初に買ったマグマストロベリーショートケーキだった。見た目はショートケーキだが、上に乗っているいちごが豪快に燃え上がっていた。とは言っても、決して熱くはないので心配ご無用だ。
そして、ハヤトはケーキを口の中に入れる。
「おぉ、美味いな。」
マグマストロベリーとホイップの絶妙なバランスがとても良く、美味しい。これだったら、確かに女性陣のハートをグッと掴むのも納得だ。
ふと、気づくと、フィーラは無表情でハヤトのケーキをじっと見つめていた。ハヤトはすべてを察して苦笑いしながら
「ほれ」
ハヤトは、自分のケーキをフィーラの方に寄せた。
「何のつもりですか??」
「欲しいんだろ??一口だけやるよ」
「別に………、欲しいとは思いません」
「ヨダレの滝を流しながら言っても説得力ありませーん」
ハッとフィーラは自分が口からヨダレを垂らしているのを気づく。いや、今まで気づいてなかったんかい
「じゃ、一口だけいただきます」
そう言って、フィーラはマグマストロベリーショートケーキを1口口の中に入れる。するとあら不思議、フィーラは急に激しくヘッドバンキングをし始める。
「フィーラちゃん、何してんの??」
「すみません。美味しすぎて気を乱してしまいました」
「ごめん、俺あんまりツッコミ力ないからボケるのやめてくれる??」
ハヤトはこの場面でアキラがいないことを怨んだ。
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「今日は楽しかったです」
あれから、フィーラとスイーツ食べながら時間を潰し、夕方になった。
あんだけ大量にあったスイーツをペロッと食べたにも関わらず苦しそうな表情を出していないフィーラの姿を見て、ハヤトは少し引いたのは内緒だ。
「俺もそれなりに楽しかったよ。スイーツだけで金がバカみたいに消えたけど」
「ハヤト様は冒険者でしょう??すぐに稼ぎますよ」
「Fランククエストなめんなよ??そんなに報酬金でないからな」
今日のスイーツ代は、恐らくFランククエストを50個ぐらいクリアしないと取り戻せない。それほど、Fランククエストは安い。
「あーあ、俺、今日こんなにご奉仕したんだからフィーラちゃんもなんか言うことを聞いてほしいなぁーーー」
「いいですよ」
「いやぁ、でもフィーラちゃんが言うことを聞いてくれるわけ………今なんと??」
「別にいいですよ。今日は楽しませてくれましたし。できる範囲で言うこと聞いてあげますよ??」
「まじ??」
「童貞捨てたいは駄目ですよ??」
「どっかのSランクの痴女を思い出させるからやめろ。てか、そんなことは言わんわ!!」
そして、ハヤトはコホンと咳払いをしたあと
「笑ってよ」
「嫌です」
「即答!?言うこと聞いてくれるんだよね!?Hするより断然楽だと思うよ!?」
「なら、Hしましょう」
「それほど!?それほどなの!?」
ハヤトが唖然していると、フィーラは席を立った。そろそろ時間のようだ。
「もう、こんな時間か。そろそろ帰るか」
「そうですね。」
「家まで送るよ」
「まさか、私の家で行為を………」
「しねーよ!!ほら、行くぞ」
ハヤトは髪の毛をかきながら、ぼちぼち前に歩き出した。
そして、ハヤトの背後には「ふふ」と頬を赤く染めながら可愛らしく微笑んでいるフィーラの姿があったが、ハヤトは見ることがなかった。
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