17話「努力は報われる②」
「こんな所で練習かぁ??コリンよぉ!!」
大勢のうちの1人の男の子が、コリンと呼ばれる女の子に憎たらしく言葉をかける。
「だからなに?」
コリンは、この状況にも関わらず木刀の素振りを続けながら、不機嫌そうに返答する。すると、今度は太っている男の子がハッと鼻で笑う。
「お前、こんなことやめた方がいいぜ?どうせ、無駄なんだからさ」
「そんなの、分からないじゃない」
「それが、分かるんだよ!だって、お前弱いじゃん??道場でも一番下だし」
「これから上がるからいい」
「これから??それはいつになる話だ??その頃にはきっと俺たちジジババだせ??」
この言葉で、周りにいる男の子達はドッと笑い始める。それでも、コリンは気にすることなく木刀で素振りを続ける。それを、見た太っている男の子は、面白くなくて少しイラッとしたのか、彼女からひょいと木刀を取り上げた
「ちょっと何するの!?」
「お前なんか、こんなの持ってても意味ねぇよ!!」
そして、その太っている男の子はその木刀を両手で持って「ふんっ!!」と言ってボキッと折った。
「ーーーーーー!?」
「はぁ〜、スッキリしたぜ!またな、コリン。せいぜい、頑張りな」
「ププ、頑張りなって木刀折った直後に言うセリフじゃねぇよ……」
「それも、そうだな!アハハハハハ!!」
こうして、また男の子たちは笑いをあげた後、そのままどっかに去って行った。彼女は折れた木刀を手にしながら、棒のように立っていた。
ハヤトは少し心配になって、コリンの方に近づき声をかけることにした
「大丈夫か??」
「………貴方は??」
「俺の名前はハヤト。永遠のFランク冒険者だ」
「ハヤト??ハヤトってあの『アンチドラゴン』のハヤト??」
「アンチドラゴン?」
どうやら、オーグの件でハヤトは国を救ってくれた英雄かつ『アンチドラゴン』という異名が広まっているらしい。ハヤトは「そんな柄じゃねぇのになぁ」と、恥ずかしそうに言葉をつぶやく。
「良かったら、これ使うか??」
ハヤトはアイテムボックスから、1本の木刀を取り出し、コリンに差し出す。昔によくハヤトが使っていたものだ。
「いいの??」
「あぁ、いいよ。もう使わないし。」
「あ、ありがとう」
コリンは少し照れた表情で、ハヤトの木刀を受け取った。
「んじゃ、練習ガンバ。俺はもう行くよ」
「あ、あの!!」
「ん?」
「明日も来てくれませんか??私、コリンといいます」
「いいよ。どうせ暇だし」
ハヤトの返答で、コリンは、ぱぁぁと明るい表情となる。まぁ、見てあげるくらいだったら別にいいだろう。ここ最近、リハビリ以外やることがないから暇つぶしにはちょうどいいだろう。フィーラちゃんにまた怒られそうだけど
「じゃあな、コリン。また明日」
「はい!!師匠!!」
いや、師匠て…………、別に弟子にとった訳じゃないけど、気にしないことにしておこう。
そして、ハヤトはコリンと別れ、医療室へと戻る
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「ハヤト様、なにか言い残すことはありませんか??」
「確かに、時間通りに戻ってこなかった俺が悪いけど、ちょっとフィーラちゃんや。持ってるチェーンソー置こうか。」
ハヤトは焦った様子で1人の女性の機嫌をとっていた。
彼女の名前はフィーラ。このギルド内の医療室で働いている職員だ。顔はとても美人だが、ハヤト以上の無表情である。彼女の笑ったところや怒ったところの表情は誰1人見たことがないらしい。身長はだいたい165ぐらいで髪型は茶髪でぱっつんであり、ナースキャップを被っていた。服装はもちろんナース服である。そして、今では無表情でチェーンソーを持ってハヤトを待ち構えていた。
「私、前も注意しましたよね?あなたの勝手な行動で周りに迷惑をかけるって。それでもあなたはやらかしました。だから、殺します」
「待て待て待て!!段階が早すぎる!!そうだ!!この間、ここの近くにスイーツ屋がオープンしただろ??明日の自由時間で買ってくるから!!な??」
スイーツ屋というワードで、フィーラの眉がピクっと動いた。ふふ、俺は知っているのだよ。君がこのスイーツ屋をマークしていたことはね………。これでどうだ??
「今日、そこに行って買って食べたんで大丈夫です。ちなみに、あんまり美味しくありませんでした」
「WOW…………。」
はやとの作戦があっさり失敗し、フィーラはチェーンソーを持ってそのままハヤトに近づく。
「どうしたら許してくれる??」
ハヤトは最後の手段として、フィーラの希望を聞くことにした。
「来月あたりにスイーツパラダイスとい一流パティシエが集うイベントが来ま」
「よぉし!!その日、デートな!!代は全部俺が持つから思う存分食べてくれ!!」
「理解が早くて助かります。約束ですよ?」
フィーラは無表情で、チェーンソーを下ろしそのまま部屋から出て行った。
ハヤトはこの前の爆発に巻き込まれた時の同様に死を覚悟していたので、安堵の息を大きく吐き出した。
「あの子、絶対にナースより冒険者やった方がいいんじゃねぇの??」
「私は子供の頃からナースになる夢があったんです。勝手なこと言わないで。殺しますよ」
「うひょわぁ!?」
気づいたら、フィーラは戻っていた。ハヤトは驚いて変な声を出してしまった。
「驚きすぎです。チェーンソー置きに行ってただけですよ」
「いや、一言くらい声かけろよ。流石の俺でもビビるわ」
「以後気をつけます。では、ハヤト様。そろそろリハビリのお時間ですので準備を」
「うい。そうそう、一つだけ聞いてもいい??」
「何ですか?」
フィーラは無表情だが、早くしろよというオーラをぷんぷん漂わせる。ハヤトも少し早口で言葉を話す
「ここの近くで剣の道場とかあったりする??」
「一応、ありますけど」
「有名なのか??」
「そうですね。詳しくは分かりませんが、そこの出身の冒険者は全員Bランク以上だとか」
「ふぅん、なへそ。ありがとう。じゃ、リハビリ行きますか」
ハヤトは「よいしょ」と言って、ゆっくりと立ち上がる。そして、フィーラの手を借りながら、リハビリ室へと向かった。
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