14話「お見舞い」
ふと、目を覚ますと、視界に映ったのは見慣れている天井だった。首を動かしたいが、身体が痛すぎて言うことを聞かない。せめて、と思い限界まで眼球だけを動かし周りを見回す。
やはり、ギルド内にある医療室だった。
目を覚ましたハヤトは、全身包帯でぐるぐる巻きにされており、まさしくミイラのような姿だった。両手、両足は骨折した時に使われるギプスみたいなものをつけられており、全く動かない。
「あ………っっ!?な…………え………」
驚いたことに、首にもギプスみたいなやつが付けられていて、上手く喋ることが出来なかった。そもそも、普通に苦しい。
スー………スー………
「??」
ハヤトから見て右側から静かに寝息が聞こえてくる。ハヤトは頑張って眼球だけを右側の方にやると、視界に映ったのは椅子で安らかに眠っているアキラの姿があった。
「ア……ギ………ラ……ざん?」
ハヤトは一瞬、目を疑った。当然だ。ハヤトはいくらオーグの行動に腹を立てていたとは言えども、アキラの言い分をオール無視したあとに彼女に酷いことを言ってしまったのだ。本来であれば、ハヤトは拒絶されて当たり前のはずなのに、彼女は目の前にいた。恐らく、ずっとハヤトを看病してくれていたのだろう。目の下のクマがなによりの証拠だ。あとで、お礼と謝罪しなきゃな。
そして、再び天井の方に視界を映し、ハヤトはため息を吐いてから、目を閉じた。
ーーーー俺は今、生きてる。
心の中でハヤトはぼそっとつぶやいた。
今回ばかりは本当に死を覚悟した。
良かった………
気づいたら、ハヤトの頬には涙がポロッと流れていた。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
「アキラさんったら、大袈裟なんだよなぁ。たかが、爆発に巻き込まれたぐらいなのに」
あれから、目を覚ましたアキラは意識が戻ったハヤトに気づき、大急ぎで医者の先生や、ハヤトの知人を呼びに行った。その頃には、だいぶ声が出るようになっていた。
近くを通り過ぎた人に声をかけて話を聞くと、どうやらハヤトは爆発に巻き込まれてから2週間ぐらい眠っていたらしい。なんてこった
そして、ハヤトの見舞い+面会という形で、知り合いが部屋に入ってきた。
「ハヤト、お前は命の恩人だ。感謝したくてもしきれねぇよ」
「本当に主人を助けてくれてありがとうございました。なんてお礼したらいいか……」
最初に来たのは片手を失ったトラさんと奥さんだ。2人は部屋に入ってきて早々ハヤトの前まで寄り、深く頭を下げた。2人とも目に涙を浮かべていた。
その姿を見たハヤトはうーんと考える仕草をしたあと、無表情のまま、
「じゃ、次回の飲みはトラさんの奢りで。」
「そんなんでいいのか??」
「じゃあ、娘さんを僕にください」
「よぉし!!なんでも頼んでいいぞぉ!!朝まで宴じゃあぁぁぁ!!」
ハヤトとトラさんのやり取りを見て、奥さんは「ふふ」と可愛らしく微笑んだ。
そして、そろそろ終わりの時間がきたらしく、トラさんは「またな」と言い、奥さんはペコッと頭を下げて部屋から出ていった。
「ハヤトさぁぁぁぁぁぁん!!大丈夫ですかぁぁぁぁぁぁ!!」
トラさん夫婦が帰ったのと同時にチアキが涙を流しながら勢いよく部屋に入ってきた。そして、見事にうるさいという理由で周りの人にお叱りを受けていた。
「ハヤトさん!意識が戻ったと聞いて、仕事抜け出して見舞いに来ました。はい、これどうぞ」
セリフの途中で「んん!?」と思わせるようなリアクションだが、チアキは顔を真っ赤にしながら、果物が沢山入っている籠をハヤトに差し出した。しかし、ハヤトは現在、全身を動かすことができないので
「ごめん、身体動かないから食べさせて。俺、バナナ食べたい」
ハヤトがそう言うと、チアキは「ヴェ!?」とよく分からない声を発し、更に顔を真っ赤にしながら「分かりました………」と了承した。
そして、籠からバナナを取り出し、皮をむいてからハヤトの口元まで運んであげた。
「うひ………、なんか夫婦みたいだ」
「チアキちゃん、ぶつぶつ言ってないで早く食べさせて」
「はい♡」
チアキは笑顔でバナナをハヤトの口の中へと運んだ。ハヤトは「うまうま」と、言ってバナナをむしゃむしゃと食べた。あっという間にバナナを完食した。
「美味しかったよ。ありがとな」
「はい♡次はスイカいきます??」
「ハハハ、俺を殺す気??」
豪快にスイカを持ち上げて笑顔でチアキはハヤトの口元へと運ぼうとしたが、店の方からお叱り連絡があり、チアキは「ちぇー」と少し残念な表情をして、部屋から出ていった。ハヤトは安堵の息をこぼす
そのあとは、社長や近所の子供たちや、知り合いの低ランク冒険者たちが見舞いに来てくれた。ハヤトは単純に嬉しい気持ちになった。
「珍しいね。ハヤトくんがニヤニヤするなんて」
不意の言葉にハヤトはビクッ!?と身体が震えた。声の聞こえた方を見ると、アキラとランがいた。どうやら、ハヤトはあまりにも嬉しくて無意識に頬を緩めていたらしい。ちょっと恥ずかしかった
「きっと、えっちぃことを考えてたのよ。もう!!ハヤトくんの変態〜」
「あんたの頭の中はピンク色でいっぱいだな!!しばいたろか??」
ランのちょっかいにハヤトは少し苛立ちながら返答をする。ハヤトの姿を見て、ランはケラケラと笑っていたが、アキラにチョップされて「ぐえ」と声を出した
「調子に乗らないの。ハヤトくん困ってるでしょ??」
「そんなことないよね??アキラの裸を想像してニヤけてたんだよね??」
「馬鹿にすんな。俺はあんなガキくせぇ身体なんかに欲情なんてしない!!」
「あんたら、いい加減にしないとぶっ殺…………」
「ふぉふぉふぉ、賑やかじゃのぉ」
「そうですね。楽しそうです」
アキラがキレていると、部屋から3人の男性が部屋に入ってきた。1人は、ハヤトを担当している医療の先生で、他2人は見覚えがない人物だった。
1人は身長が170前後あって、見た目はどっからどう見てもおじいちゃんって感じの年配の男性だった。白髪で短髪、顔はシワだらけで、顔の表情は優しそうな感じの人だった。
もう1人の方は身長180ぐらいで、イケメンな青年だった。灰色のロングで、キリッとした表情をしていた。念の為、もう1回言うぞ??イケメンだ
「ギルド長!!それに、イオリさんまで!!」
アキラとランはビシッ!!と気をつけをして、頭を90°下げた。
「2人とも顔を上げい。……君がハヤト君じゃな??」
「そうだけど、あんた誰??」
「この方は、ギルド長のバルバークさん。ギルドの最高責任者ですね」
隣にいるイケメンくんが分かりやすく説明してくれた。バルバークは「どうもどうも」と優しそうな表情をして頭をペコペコしていた
「んで、あんたは??」
「私の名前はイオリです。一応、Sランク冒険者をやっています。よろしくお願いします。ハヤトくん」
イケメンくん………、いや、イオリは爽やかな笑顔をして自己紹介してくれた。いや、マジでこの人イケメンやん。冒険者やめて俳優目指せよ。お前ならいけるぞ。
「ギルド長とイオリンはどうしてここに??」
ランが恐る恐るバルバークとイオリに問いかける。そりゃそうだ。アキラやランと同じランクであるイオリさんならともかく、ギルドの最高責任者までやってきたら何か理由があるに違いない。
「うむ、あれから何個か分かったことがあってな。報告しに来たのじゃ。しっかりと聞いてくれ」
そう言って、バルバークとイオリは少し真剣な表情へとなった。
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