13話「オーグの復讐 終」
お久しぶりでーす
死の宣告を聞かされたあと、オーグはハヤトに無様にボコボコにされていた。途中で、他の冒険者たちも「お、おい。もうそこら辺でいいんじゃないか??」と、止めに入るものの、ハヤトはそれを無視してオーグを痛めつけていた。
オーグの顔面を加減無しで思っきり殴ったり、蹴ったりして倒したあと、立たせる間も与えずに横腹に向かって蹴りを入れたり、無理やり立たせたあと、腹に目掛けて拳を数発入れたりなどしていた。
オーグのなかなか男前だった顔も、今となっては歯が何本か折れたり、鼻血が出たりなどして、酷い顔となっていた。
「ほい」
「ぎゃあぁぁぁぉぁぁぉぁぁぁ!!」
オーグの身体を十分、痛めつけたハヤトは今度は軽い感覚で倒れているオーグの右腕を曲げてはいけないところにグイッと曲げた。そして、見事にオーグの右腕は本来、人間が曲げることが出来ない方向へと曲がっていた。オーグは口から嘔吐を吐き出して、もがいていた。
「今度は、こっちかな??」
次に、ハヤトはオーグの左足に手をつけ、こちらも軽い感覚で曲げてはいけない方向へと曲げた。これによって、さらにオーグの苦痛の叫びが響き渡る。
周りにいる冒険者たちは、拷問に近い行動をしているハヤトに対して恐怖心を覚えていた。
もはや、ハヤトは狂人にしか見えなかった。
「そろそろ、終わりにしようか」
泡を吹きながらほとんど意識が無くなっているオーグに対し、ハヤトはオーグをボコボコにしている時に邪魔だったのか、投げ捨てていたライトソードαを回収し、オーグの背中に押し付けた。オーグは「あぁ………、あぁ…………」と涙を流しながら微かな言葉を出していたが、ハヤトは気にもしなかった。
「じゃあな。金髪ゴリラ。地獄で殺した奴らに復讐されてろ」
そう言って、ハヤトはライトソードαを上に上げてそのままオーグに向かって振り下ろした。
ーーーーーーガキン
本来なら、オーグの肉を裂けるはずが、途中で何か硬いものと衝突する。
その正体は、アキラのユニコーンランスだった。そして、ハヤトの目の前には、ハヤトの攻撃を受け止めているアキラの姿があった。ハヤトは一旦、距離をとった
「アキラさん、何してるの?そいつ、犯罪者だよ??」
「わかってる。だからと言って、簡単には殺しちゃダメ。オーグには、ドラゴンの件について話して貰わないといけないから」
なぜ、オーグがドラゴンを所持していたのか…………。ドラゴンは、人間に敵意を持っており、人間には決して懐かないはずなのだ。なのに、オーグはドラゴンを従えていた。その理由を話してもらう必要がある
「だから、ハヤトくん、殺すのやめて」
「やめて??よくそんな簡単な言葉を言えるものだな。そいつのせいで死人が出たんだぞ??」
「知ってるよ!!だからこそ………」
アキラの行動に対し、苛立っていたハヤトは決してアキラに発言してはいけないことを口にしてしまった
「あんたがそんなんだから、周りが無造作に死んでくんじゃねぇのかよ。あの男みたいに」
あの男……………この言葉で、アキラは大盾を持つ1人の青年を思い浮かべたあと、プツンと何かが切れた。アキラは、鬼のような表情になり、ユニコーンランスを強く握に直してハヤトの方へと駆け出そうとしたが、ランがアキラを抑える。アキラはじたばたと動くが、ランは必死にアキラを離そうとしなかった
「ラン!!離して!!あの男、絶対にオーグより先に殺してやる!!」
「アキラ、落ち着いて!!」
「ジャンのことを馬鹿にされて、落ち着いてられるものか!!早く離せ!!」
じたばたと暴れるアキラだったが、何気に力のあるランの前では無理に等しかった。そんなの、長い付き合いだから分かっている。しかし、ジャンを侮辱したハヤトが決して許せなかった。
殺してやりたい 。この気持ちでいっぱいだった。
「あひゃひゃ…………………仲間割れか??時間稼ぎご苦労様だぜ」
しかし、この無駄なやり取りのせいで、オーグに確かな時間を与えてしまった。オーグはまだ動く左手でアイテムボックスから回復アイテムを取り出し、なんとか動けれるようになるまで回復し、立ち上がった。
ハヤトとアキラとランは、瞬時にオーグの方に戦闘態勢になって構えた。ハヤトは「ちっ、だから早く殺せば良かったんだよ」と、歯を食いしばりながら呟いていた
しかし、回復アイテムを使ったとはいえ、オーグの身体は未だにボロボロであり、Sランク冒険者2人に、戦闘能力が高い謎のFランク冒険者には勝ち目がないのも分かっていた。
だからこそ、オーグには秘策があった
「こうなったら、皆殺しだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
オーグはアイテムボックスから、何個かの紅い鉱石を取り出した。アキラはどこかで見たことがある鉱石だったが、ランは驚愕した表情になる。
「ニトロクリスタル……………」
ランがボソッとその鉱石の名称を呟くと、オーグはニタァと笑みをこぼし、アキラはハッとした表情になって思い出す。
ニトロクリスタル。Sランクアイテムで高レアアイテムかつ、危険な鉱石である。少しの振動を与えることによって、10秒後に爆発し、鉱石1つで国1つ分吹き飛ばすぐらいの威力を持つ本当に危険なアイテムである。現在では、ギルドがニトロクリスタルの鉱山を買い取って、悪用に使われないように、警備かつ管理されている。
「どうして、あなたがニトロクリスタルを持っているの??それは危険すぎて、ギルドで鉱山を管理しているはずなのに」
「へへ、どうせみんな死ぬんだから答えたって無駄だぜ。」
ランの質問に、オーグはもう投げやりな言葉しか言わなかった。そして、オーグはハヤトの方に向き、大声で笑いながら
「お前の気に入らねぇ態度のせいでこの国の住人はみんな死ぬ!!お前が殺したんだよ!!ざまぁねぇぜ!!あひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
そう言って、オーグは掌にあるニトロクリスタルを強く握り潰した。10秒後、この国、マーガル王国が吹き飛ぶくらいの爆発が起こる。これを理解した他の冒険者は無駄に等しいが、本能で、悲鳴をあげながら逃げて行った。アキラは、何も考えられず、棒のように立っており、ランはお腹に手を当て、「ごめんね、ごめんね」と、何度も謝っていた
「っざけんじゃねぇよ!!」
しかし、この状況においてもまだ諦めていない冒険者が1人だけいた。
ハヤトは未だに笑っているオーグの側まで、近づき、オーグの首に目掛けて、ライトソードαの刃先を突き刺した。オーグは短く断末魔をあげたが、そんなの気にしている時間などない。
「ハヤトくん…………何を…………」
死んだオーグを右脇で挟み、熱して煙が出始めているニトロクリスタルを左手で急いでひとつ残らず回収し、ハヤトは大声をあげる。あと、残り6秒もなかった。
「属性スキル発動ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ハヤトの周りに強風が起こり、そのままハヤトは上空に向かって急上昇した。
ハヤトは空で爆発してしまえば、被害は大幅にダウンする……という考えだった。しかし、これは自分の死を賭けた行動だった。
そして、ハヤトは過去のとある場面を次々と走馬灯かのように思い出した。
『あなたは誰??………私?私の名前は………………。』
ーーーーー
『私ね、この国が好き!!ギルドの人達は面白いし、住人たちは優しいしね。だから……………』
ーーーーー
『お願い…………。私のこれまでをあなたがやり遂げて…………そして、この国を守って!!』
『あぁ…………あぁ!!………任せてくれ!!』
ーーーーー
「俺はあいつと約束したんだ!!あいつの好きだったこの国を守るって!!だから………この国を滅ぼされたら困るんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ハヤトは叫びながら、勢いを止めずに急上昇し続けた。
残り3秒
残り2秒
残り1秒
そして……………0
ドゴォォォォォン!!と大きい音を立て、上空150メートルくらいで大きな爆発が起こった。爆発の爆風で、その場にいた冒険者が何人か吹っ飛び、建物も崩れ落ちた。しかし、この爆発で死人は出なかった。
この国は救われた。
爆風で、目を閉じていたアキラとランは、すぐに上の方を見たが、跡形も無くなっていた。
「そんな…………ハヤトく………ん」
アキラは言葉が出なかった。確かに、マーガル王国は救われたが、代償で、1人の青年の命が失った。アキラは呼吸が短くなり、涙がポロポロと出始めていた。
「アキラ…………」
ランはそっとアキラの方に近づき、抱きしめる。すると、すぐにアキラはランの胸に顔を埋め、子供のように泣き始めた。ランも、涙を浮かべ、さらに強くアキラを抱きしめた
アキラを慕ってくれた青年は、油断によって死んだ。
アキラを助けてくれた恩人は、この街を守るために死んだ。
短期間で、知り合いが目の前で死んだ。この事実は変わらないと思っていた。
「おやおや、まさかこの子のために泣いてくれる人がいるとはこの子も幸せ者だね」
突然、2人の背後から女性の声がした。アキラとランは背後を見ると、1人の女性がいた。顔は美人だが、眠たそうな表情をしており、茶髪でサイドロングで首にネックレス。服装は地味なエプロンを着ていた。そして、その女性がお姫様抱っこしていたのは
「ハヤトくん!!」
ボロボロになっていたハヤトだった。
「意識を失ってるだけ。安心するといい」
そう言って、その女性はハヤトをアキラとランの方へと渡すと、くるりと半回転し、「さ、買い物、買い物〜」と言って歩き出した。
「あの!!………貴女は??」
「この子の知り合いだよ。名前は言わない。名乗っても意味ないからね。すぐに分かるよ」
アキラの問いに、彼女は歩きながらズバッと意味不明な言葉を口にした。アキラは彼女を追いかけようとしたが
「は?意味がわから…………あれ?」
アキラは、急にぽかんとした表情になる。
そして、ランの方へと向き
「あれ?私、誰と話してたんだろう」
「何、馬鹿なこと言ってるの??誰もいなかったじゃない。それより、早く、ハヤトくんを医療室へと運びましょう」
「…………そうね」
ランが呆れたような表情になる。謎の違和感に包まれながらも、今はそれどころじゃない。ハヤトの方が最優先だ。アキラは、この謎の違和感を一旦放棄することにした
そして、アキラは急いで馬車を呼んでランと共にハヤトをギルドへと戻って行った。
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アキラとランがハヤトを馬車に乗せ、ギルドへと戻って行く様子を、建物の屋根で、高みの見物かのように見ている一人の女性がいた。
先ほど、ハヤトを助けてくれた女性だ。
「ふふふ、これからが楽しみだね。ハヤトくん」
そう、不気味な笑みをこぼしたあと、片手に買い物用の籠を手にして、姿を消した。
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