信長と村重の対話
信長「では聞こう
余の刀に刺した饅頭の味は
まだ覚えておるか?」
村重「覚えております
あの張り詰めた空気の中で
いただいた饅頭こそ
我が人生で最も美味
かつ…
最も凄まじい一口でございました」
信長「そうか……覚えておるのだな」
信長は、少しだけ息を吐く
信長「もう一つ……
そのそなたが……
余の刀を恐れぬほどの度胸を
持っていたお前が……」
少し間を置く
信長「何故……
逃げ延びるような真似をしたのだ?」
村重「……戦いを諦めたわけでも
命を惜しんだわけでもありません
……あのまま城に籠もっていては
干上がってしまうのは
火を見るより明らか…
ならば……と
体制を立て直すために
城を出たのです」
信長は黙って
村重の言葉に深く頷いた
信長「のう……村重
そなたと余は
言葉を信じ合えずに
破滅した
そなたは余の言葉を恐れ
余はそなたの弁明を聞かなかった…」
村重「あの戦乱の世では……
致し方ないことにございます
しかし……」
村重は、ゆっくりと信長を見る
村重「もしも……
殿に恐れを抱かず
腹を割って話をしていたなら……
未来は、違っていたのかもしれませぬ」
しばし、沈黙が流れる
村重は少し悔しそうに…
けれど……
どこか、スッキリした顔をしていた
信長「そう、かもしれぬな……
なあ、村重
そなたは晩年を茶人として
生き抜いたのであったな……
なかなかの腕前だと聞いておる
余は、そなたの茶が飲みたい
ただの……
男と男としての
静かな静寂の中で、な」
村重「殿……」
あなた「村重のお茶を飲みたいなら
ちゃんと働いてから飲むと
もっとおいしいよ!」
信長「…………」
明智「…………」
村重「…………」
あなた「あと、あんころ餅も
たくさん作ってくれたから
後で皆で飲もうよ!
村重、今度は羊羹にするー♫」
村重「……羊羹?」
あなた「うん!
お茶には羊羹でしょー!」
村重「…………」
明智「……ふふ」
信長「…………くくっ」
村重「……殿?」
信長「いや……」
信長は口元を隠すようにして
小さく笑った
信長「……そなたの言う通りやもしれぬな」
信長「あい分かった
この先、ワシは過去の血生臭い話は
一切口にせぬ
……そんな話は
この村には無用だからな
今年は田畑がどうだとか
そういう話をしよう」
村重「……はい、はい!」
あなた「田畑も大事だけどさー
信が、羊羹作ってくれてもいいけど」
信長「いや、余はな……」
あなた「だよねー
作れないよねー」
信長「……すまぬ」
明智「…………」
村重「…………」
あなた「じゃあ、やっぱ村重かー
よろしく♫」
村重「結局ワシか……」
あなた「だって村重のあんころ餅
美味しかったもーん」
村重「分かった分かった
そなたは本当に
食べることが好きなのだな」
あなた「好きだけどー
どうせなら皆で食べたいなー♫」
そう言って、明智を見る
しかし………
明智は、なぜか寂しそうに笑っていた
信長「さて……十兵衛
……次はお主と話をせねばならんな」
明智「……覚悟は出来ております」
明智はスッと姿勢を正し
座り直す
そして―――
信長をまっすぐ見つめた。




