かつての主君と家臣
信長「……そこにいるは……村重
そして……十兵衛か……」
あなた「そうだよ!
明智と村重だよ」
あなた「あなたは信長で合ってる?」
信長「いかにも…
尾張の大うつけと呼ばれた信長だ」
村重「…………殿」
明智「信長様……」
二人は
やっと絞り出したかのような声で
その名を呼ぶ
あなた「まあ、とりあえず家ん中で話そうよ
魚、重たいし~
信!手伝って!」
信長「……信とは、余のことか?」
あなた「うん!
だって信長って長いし、呼びづらいじゃん」
村重「そ……そなた!」
明智「の……信長様ですよ!?」
あなた「関係ないよ
だって、ここに来たってことは
行くアテないんでしょ?
なら、一緒に暮らせばいいじゃん?」
信長「…………」
あなた「あ、そうそう!
合言葉は覚えてね!」
信長「合言葉……?」
あなた「そう!
俺やん、だよ」
信長「お、おれ……?」
あなた「おーれーやーん!」
信長「……俺やん」
あなた「よし!
じゃあ、これ今日の夕飯だから!
ほら、信!
運んで運んで!」
信長「……致し方あるまい」
そう言って信は
魚が入っている網を軽々と持ち上げる
明智「あ、私が……」
村重「と、殿……」
信長「……よいよい
そなたらが獲ってきたのであろう
余が中に運ぼう」
そう言って、信はスタスタと
家の中へ入っていく
二人は固まったまま
その場に立ち尽くす
明智「…………信長様……ですよね?」
村重「……うむ
そう見えるが……」
村重「物腰が…柔らかすぎる……」
明智「……私も、そう思います」
村重「いや……
……あれが本来の殿の姿なのかもしれぬ」
そして…夜
串に刺された魚が
パチパチといい音を立てている
あなた「う~ん!刺身ヤバいわー!
美味いわー!」
そう言いながら、次から次へと
口に放り込んでいく
信長「……そなた、よく食べるのう
どれ、余の刺身もやろう」
あなた「え!いーのー!?
やったー!
ありがと、信!」
信長「ふっ……」
その様子を
明智と村重がハラハラした顔で見ている
あなた「ん?二人とも、食べないのー?
特に、村重!
大きいのあげたんだから
食べてよ~」
村重「あ……ああ」
明智「……頂きましょうか」
そう言って、ようやく二人は箸を持つ
しばらく、魚の焼ける音だけが響いた
信長「……のう、村重」
村重「は、はい」
信長「そなた、余が怖いか」
村重「い、いえ……
怖い……わけではございませんが……」
明智「…………」
村重「あまりにも……その……」
信長「生前と様子が違う……と申したいか」
村重「………………はい」
信長は静かに箸を置き
そして、村重の目をまっすぐに見つめた




