明智と信長の対話
信長「十兵衛……
そなたがあそこまで…
追い詰められていたと
気付けず、すまなかった
余はそなたの完璧な仕事に甘え
そなたなら、どこまでも
付いてきてくれると過信していた
ワシの傲慢さが
そなたに刀を抜かせた……」
明智「信長様……」
信長「そなたの『弱さ』や『迷い』に
余がもう少し耳を傾けていたなら……
誰も死なずに
もっと面白い世界を
作れたのかもしれん
のう……十兵衛
今、そなたの思いを
聞かせてくれぬか」
明智「信長様……
あなた様の理想は
高すぎて……
美しすぎました
私は、織田家の誰よりも
あなた様の理想を理解している
……その自負がありました
……だからこそ
その完璧な世界のために
あなた様が朝廷や神仏まで
壊していくのを見て……
恐怖で、狂いそうになりました
……この男を止めなければ
日本が壊れる
……あの本能寺の夜
私は本気で……
そう思ったのです」
信長「そうだな……
そなたは、内に籠もる気質だ
忠義も、不満も、恐怖も……
すべてを己の胸の奥深くに溜め込み
誰にも見せぬように
蓋をしてしまう
もし、本能寺へ向かう前のあの数日間……
余がそなたを近くへ呼び寄せ
陣を下げ、二人きりで静かに酒でも
酌み交わしながら
話を聴いてやれたなら……」
明智「……もし、そうなっていたなら
おそらく、信長様は
こうおっしゃったはずです」
明智は、少しだけ目を伏せる
明智「『十兵衛、余の歩みは速すぎるか』
『そなたを追い詰めすぎておるか』
……そして
『余が創る新しい国には
古き良き礼節を知る
そなたの知恵が、どうしても必要なのだ』
『余の暴走を止める
手綱になってくれ』」
信長「そうだな……
その後
そなたは余の言葉を理解し
生涯の相棒として
余の背中を支え続けてくれたであろう
余の先進性と、そなたの安定性
その二つが完全に噛み合っていれば……」
信長は悔しそうに、
グイッと酒を飲み干す
信長「言葉を尽くすことを怠り
力と結果だけで
そなたを縛れると過信した
それが余の限界であり……
傲慢ゆえの過ちだな……」
明智「………………」
しばしの沈黙
だが、信長はふっと息を吐いた
信長「いや、もうよい
ここは戦もなければ
織田家も、明智家もない村なのだろう?
余も、いや、ワシもただの男……
そして、そなた達も
ただの男よ
現世の堅苦しい話はすべて
あの炎の中に置いてきた」
信長は遠い目で天井を見上げ
そして、明智を見つめる
信長「それより……
長旅で喉が渇いた
のう、十兵衛……
ワシのために
いつもの美味い茶を
淹れてくれんか」
明智「……喜んで」
あなた「え!?
明智もお茶淹れられるの!?」
明智「え、ええ……まあ」
あなた「じゃあ村重は
お菓子に専念できるね!」
村重「…………」
あなた「羊羹~♫
羊羹~♫」
村重「……結局、そこなのだな」
あなた「だって楽しみなんだもーん♫」
信長「……ふふ」
明智「……ふふふ」
村重「……まったく……」
そうして―――
新たに加わった
信長こと「信」を含めて
四人での談笑は、夜中まで続いた。
笑い声
酒を酌み交わす音
そして、囲炉裏で魚が焼ける音。
そこにはもう…
織田家もなければ
明智家も、荒木家もない
ただ、四人が
同じ場所で酒を飲み
笑い合っていた。
その光景はまるで―――
生前、彼らが最も輝いていた時を
彷彿とさせるような……
そんな光景だった。




