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俺やん村  作者: かゆると


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2/10

村重との夜

俺やん村に村重が来てから

初めての夜


村重とあなたは、黙ったまま

焚き火を見つめていた


パチ……


パチ……


薪が弾ける音だけが

静かな夜に響いている


あなた「ねぇ、村重のこと聞いてもいい?」


村重「……いい」


あなた「村重……」


少し迷ってから、尋ねる


あなた「戦いの最中

    城を出たのはどうして?」


村重「……簡単に言えば」


村重は、焚き火を見つめたまま答える


村重「戦いを諦めて、逃げたわけではない

   有岡城に閉じこもったままでは、

   干上がって全滅を待つだけだった


   だから……立て直すために出た」


村重は、焚き火に薪を足す


パチッパチッ…


村重「だが……」


少しだけ間を置いて


村重「信長様が、女子供まで皆殺しにするとは……

   予測していなかった」


あなた「…………」


村重「これが俺の最大の誤算であり……

   生涯の悔いだ

   

  自分が城にいなければ

   信長様も有岡城の者たちに対して

   そこまで残酷な仕打ちはしないだろう


   最悪、人質交換や助命の交渉が

   できるはずだと……甘く踏んでいた」


村重は、焚き火を見つめている


村重「だが……まさか

   信長様が、あそこまで激昂し……」


一度、言葉を止める


村重「自分への見せしめのために……」


そこから先は

言葉にならなかった


あなた「…………」


パチ……


焚き火が、小さく弾ける


しばらくして


あなた「そっかー……」


あなたは村重を見る


あなた「でも、その後……

    茶人として生きたのよね?」


村重「……ああ」


村重は、静かに焚き火を見つめていた


村重「自分には……茶の湯が残った」


あなた「茶の湯が……?」


村重「ああ」


少しだけ、村重が笑う


村重「そなた

   『わび茶』というものを知っているか?」


あなた「……んーまあ、名前くらいなら」


村重「わび茶の精神はな……」


村重は、ゆっくりと言葉を紡ぐ


村重「狭い茶室の中では

   武士も商人も関係なく

   皆が平等になるというものだ


   茶室に入る時

   大名だろうが何だろうが

   刀を外して頭を下げて入らねばならん


村重「肩書きも……身分も……

それまでの自分の罪も、名も……


茶室の中では、関係ない」


あなた「…………」


村重「『日本一の謀反人』だろうが……

『卑怯者』だろうが……」


焚き火から、火の粉が小さく舞う


村重「茶室の中だけは…」


村重は、静かに目を伏せた


村重「ただの『一人の人間』として

   呼吸することが許された」


「…………」


あなたは何も言わず

ただ、村重の横顔を見つめていた


村重「……自分にとって、茶の湯とはな

   そういう場所だったのだ」


あなた「……ありがとう

    話してくれて」


そう言いながら、あなたは微笑んだ


村重「いや、すまぬ

   長々と語ってしまったな」


あなた「ねぇ……」


少しだけ考えてから、尋ねる


あなた「今、信長を恨んでる?」


村重「…………」


村重は、しばらく焚き火を見つめていた


村重「……分からん」


焚き火を見つめたまま

小さく息を吐く


村重「だが……

もう、自分の人生は幕を引いた


   今なら……

話せることも、たくさんあろう」


あなた「…………」


あなたは静かに頷いた


そして


あなた「ね、今度お茶淹れてよ」


村重「……?」


あなた「村重のお茶、飲みたいな」


村重「…………」


村重は少しだけ目を細めた


村重「……あい分かった」


あなた「あとねぇ……」


村重「?」


あなた「茶菓子も食べたいな~

    なんかオススメある?」


キラキラした目で

食い入るように尋ねる


村重「………………」


村重は、しばらく黙っていたが

顎を手で撫でながら静かに答えた


村重「…………考えとく」


あなた「やった!」


こうして―――


村重との夜は、静かに終わった


しかし、この夜


村重は茶菓子について

一晩悩んだという……。

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