イスレードの国王
***
端的に言ってイスレードの兵は強かった。
じわじわと。
じわじわと。
ライニガー侯爵家の兵が押されている。
一人、また一人と仲間が倒れていく。
それでもこの門を死守せねばと、皆は剣を振るう。
マデリアも目の前の敵を斬り倒していく。
「皆の者!!
勝利は目前だ!!一気に畳み掛けるぞ!!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
記憶にあるそれよりは少しばかり低い、その声。
マデリアは目の前のイスレード兵をなぎ倒し、声がしたほうに視線を向けた。
そこには馬に乗った見覚えのある男が一人。
金髪に紫色の瞳。記憶にあるどこか幼さが漂う風貌よりは、成長し大人になった顔立ち。
<ライオル····!!!>
ライオル・フォン・イスレード。
イスレード国の若き国王である。
<アイツの首を取れば終わる!!>
マデリアはそう思い、死に物狂いでイスレード王に近寄ろうと剣を振るう。
他の者も同じ様に思ったのだろう。
ライニガー侯爵家の兵の殺気が、一気にイスレード王に向いた。
「セルバスの蠅どもよ!!
この地の肥やしになるがいい!!」
そう言って、イスレード王は嬉々として馬上から槍を振るう。
そんなイスレード王の背後から、マデリアの夫、ベルナードが死体を踏み台にして馬に飛び乗った。
彼の持つ剣がイスレード王の首に振り下ろされるその瞬間。
ザシュ。
イスレード王は剣を素早く腰の鞘から引き抜き、ベルナードの喉に突き刺した。
「ベルナード!!!」
最愛の夫の危機に、マデリアにも一瞬の隙が生まれた。
そしてその隙を突いて、イスレード兵がマデリアの腹部に剣を突き刺した。
途端に喉からせり上がる生ぬるい鉄の味を感じながら、マデリアは膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れた。
ゴフッ。
喉から迫り上がった鉄の味が赤い液体として口から飛び出し地面を汚す。
<ベルナード>
もう声は出ない。
それでもマデリアは夫の安否を案じ、そちらに目を向ける。




