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「陛下。
是非、私もご一緒に。亡き夫・モールティア殿下の代わりに」
その申し出に国王は黄金色の瞳をパチクリとまたたかせ、そして諦めたように息を吐き出した。
「拒否しても無駄かのぅ。
お主はモールティアと一緒で、言い出したら聞かんからのぅ。」
「"夫婦は似る"と申しますから。」
「仕方ない。共に参ろうか、セレスティア妃。
皆のもの、準備を頼む。出来次第出発する。
と·····ウィンドガルム夫妻は少しいいかのぅ??」
その一言で蜘蛛の子を散らしたように各自が散らばる。それを確認して残ったベルナードとマデリアに向き直った。
「イスレード国王は降伏を受けてくれると思うか??」
その言葉にマデリアもベルナードも息を詰まらした。
マデリアはイスレード国王をよく知っている。
彼は頭もよく、そして思慮深い。
おそらく、セルバス王国侵略も何か目的があってのことだろう。だがその"目的"がわからない。
宰相という職に就いているベルナードも、イスレード王とは懇意にしている。そんな彼も同じ様に思ったらしく、"分かりません"と呟く様に言った。
「イスレード国王の目的がわかりません。
思慮深い彼がわざわざ友好を破ってまで侵略をするという事は、何か目的があってのことでしょう。
その"目的"がわからないことには·····」
「うむ·····。
実はの、ライニガー侯爵に兵を連れて王都の門を警護するように知らせを出した。」
「兄を····ですか??」
「お義兄様をですか??」
マデリアとベルナードは驚いたように同時に声を上げた。
ライニガー侯爵家。
ベルナードの実家で現在はベルナードの兄がその爵位を継いでいる。
「うむ。
もし、ワシの目論見が外れて交渉が決裂した場合、イスレードの侵攻は進むじゃろう。そうなった場合、王都の門だけでも死守せねばならん。
この王都には、イスレードの侵攻から避難してきた国民もおるからの。そこで、ライニガー侯爵家には王都の門の死守を頼んだのじゃ。
流石は"ライニガー"。知らせを出して一刻もせぬうちに、門の警備を守りで固めたわい。
お主達も"ライニガー"の者、伝えたほうが良いと思っての。
彼等とともに王都の門を守るか、城に残るか。それはお主達が決めるが良い」
国王の言葉にマデリアは隣のベルナードを見上げた。
ベルナードもまた、マデリアを見下ろした。
パチリと目が合い、そしてどちらがともなく少しだけ微笑んだのだ。
"心"は決まった。
マデリアとベルナードはセルバス国王に深々と頭を下げた。
「我々もライニガー侯爵家に合流します。王都の門までお供いたします」
その言葉にセルバス国王は少しだけ悲しそうに"そうか"とだけ呟いた。




