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<鳥の紋章??どこの紋章かしら??>
イスレード王国の貴族の紋章は"花"をモチーフに作られている。サンドレン公爵家の紋章は"百合"がモチーフだ。
ということは、この鳥の紋章は"イスレード王国の貴族"のものではない。セルバス王国の貴族は"動物"がモチーフだか、"鳥の紋章"は存在しない。
では、何の紋章か。
カツン。カツン。
此方に向かってくる足音が聞こえ、メニアドールは慌てて手紙を先程の本に挟み、本棚に戻す。
こんな場所に子供がいるのは不自然。変に見つかり、不信感を持たれるのも面倒である。
さっと立ち上がり本棚の陰に隠れる。
この辺りの本棚には聖典を始め、"ヘイストス教"に関する文献しかなく、この棚を覗きに来るものは、よほど信仰が深い者か聖職者くらいなものである。
<いや·····この靴音は"ヒール"の音。聖職者ならヒールはありえないわ>
聖職者は木の皮を底に引いた、硬い布で作られた靴を履く。それは王族であるハルモニア司祭長も同じ。
この足音はその"靴"の音ではない。
メニアドールは、そっと本棚の影から先程の場所を覗く。
そこには一人の貴婦人がいた。
後ろ姿の為、顔の確認は出来ないが豊かな淡い栗毛色の髪を綺麗にまとめ上げた女性だ。
その者は先程メニアドールが戻した本を取り出し、その本を地面に置いて頁を開いている。
そして、そこから取り出した先程の"白い封筒"を持っていた鞄に入れて、慌てた様子で本を元の位置に戻す。
そのコソコソとした様子は、何処か"後ろめたい事"をしているような様子だった。
<どこぞの貴婦人が不倫相手との文通でもしてるのかしら??>
"マデリア"時代。
身分違いの恋や、不倫相手との手紙のやりとりの手段に、図書館の本を利用したやり方が流行った。
本の中に手紙を隠して、それでやりとりをするのだ。
誰の目にも触れられないことが大前提のやりとりの為、出来るだけ誰も手に取らないような本が選ばれていて。
"マデリア"達文官は、その図書館のありとあらゆる本を利用して政務の参考にしたりするので、"そういう本"を引いてしまうことも多々あった。
"そういう本"を"ハズレ"と称して、仲間内で笑いのネタにした懐かしい記憶もある。
<私には関係ないかしら??>
だとしたらここにいても仕方ない。
メニアドールは、足音が出ないように靴を脱ぎ、早足でさっさとその場を後にしたのだった。




