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「······ばぁや。」
彼女はサンドレン公爵家に仕える、有能な老侍女だ。
元々はマデリアの父方の祖母、つまりはイスレード国王妃の侍女で、王子王女達の養育係だったという。
王妃はとくに末っ子である父を可愛がっていて。
早くに妻を亡くし、幼い子供を抱えた父を不憫に思った王妃が公爵家に送ったのが彼女だ。
マデリアも彼女に育てられた。物心つく前に母を亡くした当時のマデリアにとって、母の様な存在だった。
だが彼女は、マデリアが家出する前年に亡くなっていて。
生涯独身で献身的に王家を支えた"忠臣"として、王家と公爵家が共同で彼女の葬儀を行った記憶がある。
「おはようございます。
今日は随分と早起きでございますねぇ。"メニアドールお嬢様"。」
その呼び名にマデリアは反応する。家を出たと共に捨てたはずの名前。
もう二度と呼ばれるとこはないと思っていた名前だ。
小さくなった体や、亡くなったはずのばぁやが生きていた事から察するに、時が巻き戻った??そんな馬鹿な。
「ねぇ、ばぁや」
自分の考えに核心を持ちたかったマデリアは、老侍女に話しかけた。あくまでも相手に不審に思われないように、考えて言葉を紡ぐ。
「あのね。
怖い夢を見たの。聞いてくれる??」
「まぁまぁ。どの様な夢でございますか??」
「悪い奴らがやってきて···お父様やお兄様を皆を剣で刺していく夢。ばぁやも剣で刺されちゃったの」
クスン。
そう、わざと鼻を啜ってその老侍女に抱きついた。
老侍女は優しく、トントンとマデリアの背を優しく叩く。




