表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奴隷騎士の主  作者: 社菘
7.奴隷騎士の主

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/40


 ウルガルの皇帝、エリゼオ・リュガーを玉座から引き摺り下ろして幽閉したあと、帝国の新しいリーダーとしてアーサーが就任することとなった。


「私なんかに務まるでしょうか……」

「前皇帝の親族は軒並み処刑されているようだから、ライアスたちの要望もあってアーサーが適任だと判断した。近隣諸国も俺が選出した人材であればそれで良いと」

「もったいないお言葉……精一杯努めさせていただきます」


 アーサーはウルガル帝国の騎士や傭兵、労働者たちに仕事を割り振ったり指導をしていたので、ライアスたちの支持を得ているのだ。ミンフティ大国では長年騎士団長として大勢の騎士をまとめてきたので、アーサーならうまくやってくれるだろう。


 ラウロはといえば、ウルガル帝国に奪われていたミンフティ大国の再建のため、緑が枯れ果てた広大な土地に足を踏み入れていた。


 ウルガル帝国の領土になったあとのミンフティ大国は、戦に使われる武器の製作のために職人たちに解放されていたようだ。そのせいもあり、ミンフティ大国の地は荒れてしまったのだろう。


 ニコラは前のミンフティの姿を知らないが、変わり果てた祖国を見つめるラウロの表情は切なく、ニコラはそっと彼の腕に触れた。


「昔は、人々の笑顔と声で溢れる良い国でした。緑や花を愛し、動物たちが自由を謳歌していて――そんな我が国が好きだった」

「……きっと取り戻せる。また人々が笑い合う、素敵な国になるはず」


 ありきたりな言葉しか言えないが、ラウロが作る国ならば実現できると本当に思えるのだ。


 ラウロは小さく笑い、ニコラの手を引く。枯れた大地を踏みしめながら向かったのは、街の家屋などと同じく荒れ果てた王宮だ。


 王宮は帝国との戦のあとのまま放置されていたのか、ボロボロになった武器や血痕のあとが残っている悲惨な状態だった。


「俺の両親は、この玉座の間で亡くなった。王を亡くした玉座は、こんなにも寂しいものなんですね……」


 王と王妃のための青い玉座がポツンと取り残されていて、その前には狼と剣の紋章の国旗が落ちている。戦のあとで時間が止まっている王宮の中は何の音も、声も、生命も感じられない。


 あの頃のことを思い返しながら拳を握りしめ、取り残されている玉座を見つめているラウロの手をニコラは優しく包み込んだ。


「――星の導きにより結ばれし契約、今ここに解き放つ」


 アトラ王国でニコラが口にできなかった、奴隷契約を解除するための呪文。ニコラがぽつりと口にした途端、二人の体は青白い光に包まれた。


 光の中で柔らかな風に手首を撫でられ、キラキラとした星のように光が弾けたかと思えば、お互いの体に浮かび上がっていた紋章が消えていた。


「これからあそこに座る王が、奴隷のままでいるわけにはいかないから」

「ニコラ……」

「やっと、僕たちは対等に……なれるかな?」


 主と奴隷という主従関係ではなく、ただの一人の男としてニコラはラウロの前に立つ。ラウロはそんなニコラを見つめ、ラウロの瞳が煌めいたと同時に強く抱きしめられた。


「リンメロの名を捨てた、ただのニコラに……俺と同じ名を名乗ってほしい」


 耳元で囁かれ、ニコラはつんっと鼻の奥が痛くなった。ラウロの広くて大きな背中に腕を回して同じように強く強く抱きしめ、涙交じりに「うん」と返事をする。


 ラウロも瞳を赤く染め、同じく潤んでいるニコラの瞼にひとつ口付ける。ラウロの手がニコラの頬を包み込み、柔らかく唇が重なった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ