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作戦会議のあと、集団から離れて一人でいるラウロに気がついた。声をかけるかどうか迷っていると、アーサーから「……もしよろしければ、殿下と食事をご一緒に」と言われ、ニコラは二人分の食事を持ってラウロの元に歩み寄った。
「ラウロ。食事をもらったから、よければ一緒に食べない?」
「ああ……ありがとうございます」
反乱軍の拠点の近くには小さな湖があり、穏やかな水面に浮かぶ月がゆらゆらと揺れていた。静かな森の中で並んで食事をしていると、これまでのことを思い出す。カルテア小国までは二人きりで旅をしてきて、毎日の食事を共にしていた。
つい最近までそうだったはずなのに、なぜだか遠い昔の記憶のようにも思える。こうして二人で食事をする時間は今までも好きだったなと思い出すと、ラウロが作ってくれた料理のことも思い出して、懐かしい気持ちになった。
「……全てが終わったら」
「うん?」
少し硬いパンと、ふかし芋、それに野菜しか入っていないスープを食べながら、ラウロがぽつりと呟いた。
「あなたが作る、クリームスープが食べたい。多分、死ぬ間際でもあの味は忘れません」
「……ふふっ。本当にラウロって、あのスープがお気に入りだよね」
「まあ、主が初めて作ってくれたものだという思い出もありますから」
「それなら僕は、一番最初に食べた肉串が食べたい。あの時、久しぶりに出来立ての料理を食べて感動したから」
あの時の鹿肉の美味しさは格別だった。ニコラが自ら仕留めた鹿肉だったからという理由もあるが、久しぶりに誰かがニコラのために作ってくれた料理が嬉しかったのだ。
ニコラが作るクリームスープに対してラウロは同じ気持ちを抱いているようで、二人は顔を見合わせて笑い合う。なんだか、もうずっと二人だけで旅をしてきた長年の相棒のような錯覚に陥った。
「あなたと出会った日を昨日のことのように思い出します」
満点の星空を見上げながら、ラウロが懐かしんだ。ニコラも、地下牢での衝撃的な出会いはこれから先も忘れることはないだろう。
「あなたを初めて見た時、本当に美しいと思いました」
「ええ? そんなの、初耳なんだけど……」
「全身がキラキラと光っている宝石のようで……俺の人生の中で、あなたより綺麗な人を他に知りません」
ラウロはふっと微笑み、ニコラの手を取る。手の甲に口付けられると、そんなキザな行動も様になるラウロにまんまと心臓が跳ねた。
「俺は年下で、包容力もあまりないし、あなたの理想とは違うと思いますが……それでもいいですか?」
どうやらラウロはまだ、ニコラの想像上の番であるエルネス・ロセットを気にしているようだ。ニコラのほうが忘れかけていたというのに、ラウロはもしかしたら独占欲が強いタイプなのかもしれない。
そんな彼はやっぱり可愛いなと感じ、ニコラはくすくす小さく笑った。
「人を好きになるってどんな感情かと思っていたけれど……ラウロに対するこの気持ちは、誰に聞いても恋だと言われるはず。年齢や理想は関係ない――ラウロ・ミンフティという人を好きになったよ、僕は」
初めてニコラのほうから口付けると、ラウロは驚いたように息を飲んだ。でもすぐに嬉しそうな顔をして、全てを包み込むようにニコラの細い体を抱きしめた。




