表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】奴隷騎士の主  作者: 社菘
5.星の導き

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/40



「――見知らぬ警備隊が増え、港が見張られています。どうなさいますか、殿下」


 アトラ王国の国境付近で、ニコラたちは立ち往生していた。アトラ王国内に潜入していた仲間の一人が伝達した内容は、どうやらリンメロ王国の騎士とウルガル帝国の獣人たちが港を警戒している、とのことだった。


 伝達の内容にラウロは眉間に皺を寄せ、ため息をつく。やっとここまで来られたのに、とニコラも肩を落として頭を抱えた。


「……先に、子供たちと女性たちを船に。それから予定通り出発し、この地点でニコラ殿下を乗せてもらう。その間、警備隊たちの目を引くために港のほうで騒ぎを起こす」


 広げた地図の上をラウロが指差す。簡単な作戦としては、通常の港から出発した船を街の反対側に移動させ、ニコラを拾ってもらうという筋書きだ。


「ただ、船をいちいち停泊させる時間はないし、リスクが高い――船の上からロープを投げてもらって、それを頼りに船上へ行けますか?」


 ラウロがそう聞くと、視線が一斉にニコラに注がれた。そんな芸当が自分にできるとは到底思えないが、今のところはそれ以外に方法がないのは分かっている。


 ニコラは意を決して深く頷き「やります」と答えた。


「護衛は俺が。レイヴンもいてくれ」

「承知しました」

「他の者たちは、船が出発したことを確認してから騒ぎを起こすように。危険であると判断したら生死は問わないが、できるだけ捕虜として捕らえよ」

「はっ」


 具体的な作戦が決まると、この作戦を終えたあとに全員が無事でいられるかどうかを考えてしまい、ニコラの胸は不安に支配された。そんなニコラの不安が伝わったのか、ラウロが「必ず成功しますから」と、優しく力強い言葉でニコラを包んだ。


「あなたはとにかく、ロープを掴んで必死に船上に行くことを考えてください」

「う、うん……!」

「船はゆっくり移動しているように見えるかもしれませんが、周りの波は高いはずです。飲まれないように、しっかりとロープを握って登ってくださいね」

「分かった……自信はないけど、頑張る」


 通常通り船に乗り込む者たちと別れたニコラとラウロ、それからレイヴンは国境警備隊の目を盗んでアトラへと入国した。港町のあちらこちらにはニコラの似顔絵が描かれた手配書が貼られていて、緊張で心臓が大きく高鳴った。


「逃げるとしたら港しかないと、この国を強く警戒しているんでしょうね」

「……こんなにおおごとにするなんて……」

「それほど、リンメロ王国も無理を強いられているのでしょう。なにか交渉材料がないと国を滅ぼすと脅されているんです」

「結局、僕は兄上たちから“物”としてしか見られていないのがよく分かった」


 戦力ではどうやっても勝てないので、他の道で解決を図るのはニコラにも理解できるのだ。それが自分の役目であることも、それで国を救えることも分かっている。


 ――でも、ニコラは物ではない。確かに今ここに生きている、一人の人間なのだ。


 オメガだから、王族だから、国ためだから……何か重大な理由があるとしても殺戮を繰り返している国に嫁ぐなんて、ニコラの人生には後悔しか残らない。だからこそ逃げ出したかった。ニコラは自分自身の人生を歩むために、全てを捨てる必要があったのだ。


「……後ろは振り返らない。僕は前だけ向いて生きていくよ」


 力強くそう言うと、隣にいるラウロが小さく笑った声がした。きっとラウロと出会わなければこんな考え方にはならなかった。


 あの地下牢にラウロがいなかったら――ニコラは兄たちに命じられるがままウルガル帝国へ行き、今頃は皇帝のおもちゃにされていただろう。


 そう考えるとゾッとする。そして今よりもっと、ラウロに感謝するのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ