そのころ、王都では
「聖人さま……どうか、ヨウの居場所を教えてくださいませ。私は一体どうしたら良いのですか……!」
聖人さまの前に警官風の男が跪いていた。
若さゆえのエネルギーをもった、信頼できる部下。彼と一緒に仕事をするのは実に楽しかった。……それなのに。彼は旅行者の案内を任された後、職場に帰ってくることはなかった。職場はガラリとして、明かりが消えたように暗かった。仕事をサボるような人間ではない。もしかすると具合が悪いのか。それともなにか事故が……。
聖人さまは何処か遠くを見つめて動かない。警官風の男は、それでも何かを伝えたいのだと勝手に思った。
「あぁ……。わかりました、聖人さま。信じて待てばよいのですね……!」
建物を後にする。本日の面会は彼で終了だった。解決したわけではないのに、不思議と心は希望の光で柔らかく満たされていた。
「まさかここまで神格化されるとはな」
誰もいなくなった教会式の建物の中で、月の光を浴びる小柄な影があった。聖人さまを向き、話しかける。その声は少女のように幼くもあり、この世のすべてを知り尽くしたような威厳を感じさせるものでもあった。
「お前はいい見世物になったぞ。笹川麗。
……ところで。例の男はまだ見つからんのか?」
大柄な男が闇の中から出現した。
「はい。申し訳ありません。探そうとしましたが、なんと竜らしき生き物が奴を連れ去ってしまい見失いました。情報によると南に飛んだとか」
「竜だと?」
「はい。今はございませんが、そこに設置していた竜の石像の腹から少女が生まれたとの噂も。
……にわかに信じられませんが、目撃したという人物も姿をくらましておりますので真理は解りません。」
「おい、少女なのか? 竜なのか? 全くわからん。……いや、まてよ? 予言の竜の娘の事か?」
頭の中でパチパチとパズルが音を立てる。
「まずい。非常にまずいな。事態がこじれるぞ。全く持って順番を間違えた。」
影はぐしゃぐしゃ頭を掻き回した。
「とりあえずその竜だか娘だかを見た奴を片っ端から見つけて捕えろ。例の男も必ずだ! それと奴にはその竜女も引っ付いているに違いない。気をつけろ」
「え? 気をつけなければならないのですか? あと、捕えるというのはちょっと乱暴かと……」
「ええい! 保護でも拉致でも好きにしろ! 兎に角連れてくるのだ。生きたままな!
南に飛んだといったな。私は土地勘が無いのだ。地図をもってこい。潜伏先を予想する。」
「あっはい」
影はある男を探していた。笹川麗の姿を見て取り乱す男。いち早く奴を見つけなければならない。この世界のためにも。
「地図を持ってまいりました。博士!」
「うむ」
博士と呼ばれた影は地図を広げる。
「ところで博士。探している男というのはどのような名前なのですか?」
「そんなことは忘れた!」




