第554話 魔力0の大賢者、謝罪を目にする
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「漢が漢に惚れる――別におかしくないぜ」
「そうッス! 僕もムスケル先輩の生き様に惚れ込んだッス!」
会話に割って入ってきたのはモブマンとガッツだった。
しかも何故か二人はガシッと固い握手まで交わしている。
「ややこしい連中ばかり増えやがって……」
ラクナが額に手を当てながら深々とため息を吐いた。眉間にはくっきりと皺が寄っている。
「ふぅ――そういえばガッツだったな」
「押忍! 魔法戦以来ッス!」
ラクナの視線がガッツに向けられる。
そういえばラクナとガッツは魔法戦で直接ぶつかっていたんだったね。
「――あの時は悪かった」
「え?」
ラクナが短くそう告げ、僅かに頭を下げた。
一瞬――その場の空気が止まる。
「……あ、大丈夫ッス! もう気にしてないッスよ!」
慌てたようにガッツが両手を振った。
だけど、驚いているのはガッツだけじゃない。
「ラクナが頭下げたよ」
「クマちゃんもびっくりだよ~」
「明日は雨、いや吹雪かもしれないね」
「アッハッハ! 自分の非を認める事は素晴らしい事さ。だがボクは明日デートの予定だから雨は降らせないでくれたまえ」
「お前ら――」
マリー、ベア、ローズ、ライトニングが口々に反応すると、ラクナが露骨に不機嫌そうな顔を見せた。
周囲の生徒たちも「ラクナが謝った……?」みたいな顔をしている。
普段のラクナを知っている人ほど衝撃的だったのかもしれないね。
「ほらほら! 皆も料理冷めちゃうよ~! せっかくのご飯が美味しくなくなっちゃう!」
パンっと手を叩いて声を上げたのはリミットだった。
確かに会話に夢中で全然料理に手を付けてなかったね。
「リミットの言う通りだよ。皆、お昼にしよ?」
「うんうん♪ ご飯は温かいうちに食べるのが一番だもんね!」
「――リミット、いつの間に新しいの頼んだのよ」
メドーサが呆れた声を漏らした。
見るとリミットの前には、さっきまで食べていた分とは別の料理が追加されている。
「えへへ~♪ だって美味しそうだったんだもん」
「食欲の権化だなお前は……」
アズールが半眼になっている。
「賛成~♪ ベアちゃんもお腹ぺこぺこだもん♪」
そう言いながらベアが僕の隣へとやってきた。
「マゼルのそれ美味しそう~。クマちゃんにも一口ちょうだい?」
「え? クマちゃんに?」
「うん♪」
ベアが抱えているぬいぐるみのクマを、僕の方へ差し出してくる。
えっと……ごっこ遊びみたいな感じかな?
「それじゃあ――はい」
僕がスプーンをクマちゃんに近づけると――
ぱくんっ!
「えへへ~美味しい♪」
食べたのはベア本人だった。
「んなッ!?」
イスナの驚く声が響く。
一方でベアは頬に手を当てながら幸せそうに笑っていた。
そして――。
「ベア。ちょっとこっちに来て」
「もっと色々とお話する必要がありそうですね」
アイラとイスナが笑顔でベアの両脇を確保した。
……笑顔だけど何か怖い。
「えぇ~!? まだマゼルにあ~んしてもらいたいのに~!」
ベアはそのまま二人に引きずられていった。
「私もお邪魔していいかな?」
次に声を掛けてきたのはロベール生徒会長だった。
隣にはヘンリーの姿もある。
「親睦会での活躍、見事だった。本当はもっと早く声を掛けたかったんだが、事件も重なったからな」
「暫く休校になってたからねぇ」
ヘンリーが肩を竦めながら苦笑した。
確かに親睦会は途中から大事件になっちゃったからね。
「生徒会長にそう言って頂けると誇らしく思えます」
「確かにね」
「うむ。親睦会は大変ではあったが、得られたものも大きかった」
「うん。僕たちを認めてくれる人も増えたからね」
僕の言葉にメドーサが頷き、ガロンとドクトルも同意した。
さっきだって、僕たちを庇ってくれる声が確かにあった。
「それなら良かった。今回は対抗戦と親睦会の両方で、広報部がかなり力を入れて記事を書いてくれたからな。その影響もあるのだろう」
「広報部? 記事? 何だそりゃ知らねぇぞ」
「興味があるなら後で掲示板を見てみるといいさ♪」
ヘンリーがウィンクしながら言った。
後で皆で見に行くのもいいかもしれないね。
「ところでマゼル――妹のラーサの様子はどうだろうか?」
ロベール会長が少しだけ真面目な顔になる。
「親睦会では、ついキツイ言い方になってしまった。今になって少し言い過ぎたかもしれないと思っていてな」
どこか気まずそうに視線を逸らしながら会長が言った。
「大丈夫ですよ。ラーサも強いですし、会長が妹の事を思って言ってくれたのは僕もわかってますから」
「――そうか」
ロベール会長が静かに息を吐き、柔らかく笑った。
確かに言い方は厳しかった。
だけど、ラーサの事を真剣に考えてくれていたのは間違いない。
だからきっとラーサも大丈夫だと思う。
そう考えた時だった。
ふと視線を感じる。
「えっと、アイラ? どうかした?」
「――ううん。何でもない」
アイラが小さく微笑んだ。
だけどその目は、どこか考え込むようでもあった。
……そういえばアイラも、会長と同じでラーサが抱えている問題に気づいていたんだったね。
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