第551話 魔力0の大賢者、普通に授業を受ける
新章突入です!
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イロリ先生の授業が、いよいよ始まった。
これまでは自習ばかりだった旧校舎の教室に、今日はチョークの音が小気味よく響いている。
黒板を走る白線。淡々としているのに妙に耳に残る声。
不思議だ。
ただ普通に授業を受けているだけなのに、なんだか少し嬉しい。
学園に通っているんだなって、そんな実感が胸の中に広がっていく。
そして――昼休み。
教室には、すっかり魂が抜けたようになっているアズールとメドーサの姿があった。
「こ、こんな筈じゃ……」
「嘘でしょ。先生、こんな厳しいなんて……」
二人とも机に突っ伏したままピクリとも動かない。
「……俺も反省すべき点はあるが、お前らこのままじゃ次のテスト普通にヤバいぞ」
イロリ先生が頭を押さえながら深いため息を吐いた。
その言葉に、アズールとメドーサが恨めしそうな目を向ける。
「仕方ねぇ。お前ら二人はしばらく放課後残れ。面倒見てやる」
「いや、それってつまり放課後も勉強ってことか?」
「当然だ」
「いやぁああああぁぁッ!?」
メドーサが椅子から転げ落ちそうな勢いで悲鳴を上げた。
うん。これは流石に仕方ないと思う。
「だ、大丈夫だよ! 先生、僕も放課後一緒でいいですよね?」
「別にいいが、マゼルに教えることはあまりないぞ」
「で、でも協力できることもあるかもしれないので」
「……ま、好きにしろ」
そう言ってイロリ先生は軽く手を振り、教室を出ていった。
その背中を見送りながら、アズールが机に額を打ち付ける。
「くっ……自習がなくなったと喜んだが、こんなキツい現実が待っていようとはな! おもしれぇ!」
「絶対それ強がりよね……」
「うぅ、小テストは平均以上だったのに……」
メドーサが本気で落ち込んでいる。
「二人とも、小テストで覚えた知識がほぼ抜け落ちていますとお答えします」
「辛辣だねメイリア」
ドクトルが苦笑した。
でも実際、メイリアの言う通りなんだろうね。
「安心しろ。俺も放課後付き合ってやるから」
「わ、私も一緒に残ります!」
「ガウ!」
「ピィ!」
ガロンに続き、アニマもシグルもメーテルも声を上げる。
皆、なんだかんだで放っておけないんだよね。
「よし! そう決まれば食堂に行こうよ!」
「いや、何が“そう決まれば”なんだよ」
両手をパンっと叩いて立ち上がったリミットに、アズールが半眼を向ける。
「だって放課後に向けて体力つけなきゃでしょ? それに休校中ぜんぜん食堂行けなかったし! ハニーちゃんのスペシャルメニュー食べたくて仕方ないもん!」
「結局自分が食べたいだけじゃない――でも確かに気になるわね」
呆れながらも、メドーサもその提案には乗り気のようだった。
確かに、休校中は本校舎側にもほとんど行けなかったからね。
「それじゃあ皆で食べに行こうか」
「私は遠慮いたしますとお伝え――」
「マゼル~! 一緒にお昼行こうよ~!」
元気な声と共に、ビロスが勢いよく教室へ飛び込んできた。
「ハニーが新メニュー用意して待ってるんだよ! ハニーパフェだって!」
「ハニーパフェ?」
ちょっと気になるかも。
「で? 遠慮するんじゃなかったのか?」
「……マスターへ提供する料理の参考になる可能性がありますので」
「お昼は皆で食べた方が美味しいよね♪」
新メニューの存在を知った瞬間、メイリアも同行を決定していた。
うん。でもリミットの言う通りだと思う。
お昼は、皆で食べた方が美味しい。
そんなことを考えながら、僕たちは賑やかに旧校舎を出て、本校舎の食堂へ向かったんだ。




