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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第550話 七災の子羊

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

side ???


「皆、よく集まってくれたね」


 ゼロサスが穏やかな笑みを浮かべながら、円卓を囲む俺たちを見渡した。


 柔らかな物腰。だが、その場にいる誰もが知っている。こいつが教団の中でも最も危険な存在の一人だということを。


「私たちが揃うなんて珍しいわね。ただ、一人足りないみたいだけど?」


 赤い波打つ髪を指先で弄りながら、ヴォン・ヴァルディースが妖艶に笑う。


 教団の中でも“次世代”と呼ばれるのが俺たちだ。


 その中でも特に危険視されている七人――それが【七災の子羊】。


 だが今この場にいるのは六人だけ。

 本来なら、もう一人――ファイン・シャーズがいるはずだった。


「――残念ながらファインは魔導師団に捕らえられました。同行したバジルたちも含めてね」

「……それで影竜の反応が消えたのか」


 気怠げに呟いたのはレム・シャドウ。


 長い前髪の隙間から覗く瞳には、興味とも退屈ともつかない色が宿っている。


「せっかく同じ“影”の使い手だったから貸してあげたのに――残念」


 教団第二位――大司教(ウィザードスレイヤー)

 その肩書きに違わず、こいつの力は異常だ。


「情けない奴だ」


 低く唸るような声。

 筋骨隆々の巨躯を椅子へ預けていたガルム・ベルゼイドが鼻を鳴らした。


 頭を丸め上げた坊主頭。全身には禍々しい紋様の刺青。まるで戦うためだけに存在している男だ。


「復讐だか何だか知らんが、仕事を選り好みする奴など信用に値しない」

「うふふっ……あの男は七災の子羊の中でも最弱。うふふふ――」


 藁人形を撫でながら笑ったのはツクヨ・カガリ。

 地面に届きそうなほど長い黒髪が床を這っている。


 その笑い声だけで空気が冷えるようだが……恐らく“最弱”と言ってみたかっただけだろう。


「確かにあの子だけ司祭だったものねぇ」


 ヴォンが肩を竦める。


「ファインが司祭止まりだったのは、彼自身のスタンスによるものですよ」


 ゼロサスが静かに言った。


「階級だけで実力が決まるほど、我々は単純ではありませんからね」


 そう言われても、ヴォンは興味なさそうに爪を眺めているだけだった。


「それで、どうするつもりだ?」


 ガルムが腕を組む。


「必要なら俺が行って潰してくるぞ。ファインごとな」


 捕らえられた以上、生かしておく意味はない――そういう考えなのだろう。


「気が早いですね。ファインについては今のところ様子見です」

「甘いな」


 ガルムが吐き捨てた。


「教団の情報を喋るかもしれん。生かしておく理由がない――スナイプ、お前もそう思うだろう?」

「……俺は上の指示に従うだけだ」


 短く返す。

 ガルムが面白くなさそうに鼻を鳴らした。


「……ファインのことなんてどうでもいい」


 レムが机に頬杖をつきながら笑う。


「それより気になるのはマゼル。いいよね彼」


 その目が愉悦に細められる。


「今回集まってもらったのも、その件が関係しています」


 ゼロサスが指を組む。


「学園襲撃が失敗した最大の理由――それがマゼルです。今後のためにも情報共有は必要でしょう」

「くだらん」


 ガルムが立ち上がった。


「だったら俺は抜ける」

「まだ話は終わってませんよ」

「……ガルの飯の時間の方が大事だ」


 ガルムがぶっきらぼうに返す。

 その瞬間、ヴォンが吹き出した。


「あははっ! 飯ってあの大きいペットのこと? そんな見た目してペットの方が大事とか本当笑える」

「黙れ」


 ガルムの目つきが鋭くなる。


「お前らよりガルの方が余程信頼できる」


 どうやら本気らしい。

 ゼロサスが呆れたように肩を落とした。


「仕方ありませんね。ただ一つだけ覚えておいてください」


 その瞬間、ゼロサスの空気が変わった。


「我々も好き勝手やられて黙っているつもりはありません。近いうちに“報復”を行います」


 ガルムの口元が吊り上がる。


「そうか。決まったら呼べ。その時は派手に暴れてやる」


 そう言い残し、ガルムは部屋を出ていった。


 残された俺たちは、そのままゼロサスの話を聞くことになった――。






◆◇◆


 色々とトラブル続きだった親睦会。

 その影響で、数日間学園は休校になっていた。


……もっとも、その休みの間、僕たちは大量の反省文に追われていたんだけどね。


 イロリ先生も校舎を離れていたけど、今日からようやく授業再開だ。


 だからか、教室の空気もどこか落ち着かない。


「なぁマゼル。どう思う?」

「どうって?」


 アズールに聞き返す。


「だからよ。イロリ先生、何か変わると思うかって話だ」


 どこかそわそわした様子でアズールが言った。


「そうだね。とりあえず信じてみようよ」

「うむ。そうだな」

「流石にもう自習はないと思いたいけどね」


 ガロンとドクトルも苦笑している。

 すると――教室の扉が開いた。


「おはようございます先生!」

「マゼル。お前は相変わらず元気だな……」


 欠伸混じりに答えながら、イロリ先生が教壇へ向かう。


「……なんかあまり変わってなくないか?」

「いつも通りよね」


 アズールとメドーサが小声で囁き合う。


「ったく。反省文は書かされるわ、半年減給だわで散々だ。目も当てられねぇ」

「え、何か普通に愚痴り始めたよ?」

「えっと……」

「ガルゥ……」

「ピィ~……」


 皆が微妙な顔になる。


 そんな僕たちを見回して、イロリ先生がニヤッと笑った。


「まぁそんなわけで今日は自習――」

「そ、そんなぁ!」

「結局それか!」


 ドクトルとガロンが悲鳴を上げる。

 すると先生は小さく吹き出した。


「……と、いつもの俺なら言ってたところだが」


 そう言って頭を掻く。


「ファインとの約束もあるしな」


 そして教科書を開いた。

 その姿に、自然と胸が温かくなる。


「これまで遅れた分、しっかり取り戻すからな。覚悟しとけよ」

「ハハッ! そうこなくちゃな!」

「うむ! 張り切ってついていこう!」

「わ、私も頑張る!」

「ガウ!」

「ピィ!」

「やっとまともな授業が受けられるよ」

「先生、お昼も一緒に行こうね♪」

「それもいいわね。先生に奢って貰わないと」

「教師が授業をするのは当然とお伝えします」

「…………」


 皆の反応に、イロリ先生が呆れたように肩を落とした。


 だけど、黒板へ向かった先生は、チョークを持つ手を少し止めて――


「……お前ら、ありがとな」


 小さく、そう呟いた。

 振り返らないままの言葉。


 だけど、その声は確かに僕たちの胸へ届いた。


 この日改めて――Zクラスは一つになれた。

 そんな気がしたんだ。

本作のコミカライズ版のコミック単行本12巻は6月26日発売です!

どうぞ宜しくお願い致します!

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