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魔力0で最強の大賢者~それは魔法ではない、物理だ!~  作者: 空地 大乃
第三章 マゼル学園入学編

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第547話 魔力0の大賢者、騒動に決着をつける

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「勿論、お兄様が辞めるなら私も学園を辞めます!」


 ラーサの声が、場の空気を震わせた。


 迷いのない宣言。

 その小さな背中からは、はっきりとした覚悟が感じられる。


 自分の一言が、ここまでの波紋を広げるとは思っていなかった。


「マゼルが辞めるなら、私も辞めることはありえます!」

「ちゅ~!」


 振り返ると、アリエルの姿。

 その肩でファンファンが元気よく鳴いている。

 どうやら同意してくれているらしい。


「……いやはや、これは参ったね」


 軽く肩を竦めながら、ゲシュタル教授が一歩前に出た。


「流石にこれだけの人数が学園を辞めるなんて言い出したら、理事長も頭を抱えるんじゃないかな?」


 柔らかな口調。

 だが、その視線は冷たい。


「――それで脅しているつもりか、ゲシュタル」


 リカルドの低い声。


「違うさ。これは“警告”だよ」


 即答だった。


「もしイロりんを辞めさせるというなら――僕もメイリアもここを去る」


 言葉を区切り、続ける。


「当然、それ相応の理由を添えてね」


 空気が張り詰める。ゲシュタル教授の視線が、真っ直ぐリカルドを射抜いた。


 軽口の奥にある本気。

 それは誰の目にも明らかだった。


「――貴様ら、揃いも揃って……」


 リカルドが吐き捨てるように呟く。


「えぇ、伯父上。本当に愚かなことだと思いますよ」


 その横に、ラクナが並んだ。

 淡々とした声。

 だがその目は、冷静に状況を見据えている。


「マゼル、お前もだ。何を考えているかは知らんが――」


 視線がこちらへ向く。


「イロリという教師が伯父上に手を上げたのは事実だ。処罰なしなどありえん」

「ラクナ……」


 思わず名前を呼ぶと、ラクナはわずかに眉を寄せた。


「イロリ先生。あなたもだ」


 今度はイロリ先生へ。


「まさか本気で、“教師を辞める程度で済む”と思っているのですか?」

「……どういう意味だ?」


 低い声で返すイロリ先生。

 ラクナは一切表情を崩さない。


「理事長である伯父上に手を上げたのだ。にも関わらず、辞めて終わり――そんな甘い話が通ると思うのか?」

「いや、そもそもクビって言い出したのはリカルドだろうが」


 アズールが口を挟む。


「あんた、ちょっと黙ってなさいよ」


 メドーサが小声で制した。場の空気の変化を読んだのだろう。


「伯父上は“クビになっても文句は言えない”と言っただけだ」


 ラクナが淡々と続ける。


「それを勝手に拡大解釈して、揃いも揃って辞めるなど――愚かにも程がある」

「えっと……それってつまり?」


 リミットが首を傾げる。


「……フン」


 ラクナが鼻を鳴らす。


「簡単な話だ。辞めるかどうかは別問題だということだ」

「……ラクナの言うとおりだ」


 続いたのはリカルドだった。不機嫌そうに言い放つ。だが――否定はしない。


「じゃあつまり……イロリ先生は辞めなくていいってこと?」


 リミットの言葉に、


「そういうことだ」


 ラクナがはっきりと答えた。

 場の空気が、わずかに緩む。


「言っておくが、処罰がなくなったわけではないぞ」


 リカルドが釘を刺す。


「それ相応の罰は覚悟しておけ」

「罰ぐらい、いくらでも受けてやるさ」


 イロリ先生が即答する。

 その目は鋭いままだった。


「だがな、リカルド――」


 一歩、踏み出す。


「お前のファインへの態度は許せねぇ」


 低く、押し殺した怒り。


「過去の冤罪も含めて――謝れ」

「冤罪だと? そんな話は知らん」


 リカルドは一蹴した。


「ギャノンも認めた。全部あいつらの仕組んだことだ」

「――そうなのか、ウィンガル」


 リカルドの視線が移る。

 ウィンガル先生は眼鏡を押し上げた。


「事情を聞く限り、その可能性は高いでしょう」


 冷静な声。


「しかし、現時点では確定ではありません」

「……そうか」


 リカルドは小さく頷く。そして、


「ならば私の見解は変わらん」


 冷たく言い放った。


「罪人として収監されていた事実も、魔狩教団に与していた事実も消えはしない」

「――てめぇ……!」


 イロリ先生が一歩踏み出す。


「もういい、イロリ先生」


 それを止めたのは、ファインだった。

 力の抜けた声。だが――確かな意志があった。


「俺は、あんたが信じてくれただけで十分だ」


 ゆっくりと顔を上げる。


「それに、これ以上揉めて……約束を反故にされても困るしな」

「ファイン……」


 その一言で、イロリ先生は動きを止めた。

 拳を握りしめたまま、何も言えなくなる。

 そして――


「話はここまでだな」


 リカルドが背を向ける。


「ウィンガル、後は任せた」

「はい。では、行くぞ」

「あぁ……」


 短い返答。それが別れの合図だった。

 ファインとバジルは、今度こそ連行されていく。


 その背中を、誰も引き止めなかった。

 やがて――魔導師団によって他の教団員も拘束され、魔獣も完全に沈静化された。


 騒動は、ようやく終息へ向かう。


――長い一日だった。


 そう思いながら、僕は静かに息を吐いた。

本日発売の月刊コミックREX6月号に本作のコミカライズ版第69話が掲載されてます。

そしてコミック単行本最新第12巻が6月26日に発売決定!

どうぞ宜しくお願い致します。


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